第23話もしかして


 あたしは魔法陣に入ってみる。


 すると出た所は間違いなくあたしとティアナの部屋!?



 「エ、エルハイミさんですか!?」



 声のする方を見るとミアムだった。

 ミアムはだいぶやつれていたがあたしがティアナの転生者を必ず見つけ出して戻ると言う事を信じて徐々に元に戻っていた。


 「ミ、ミアムですの? するとここは間違いなくティナの町‥‥‥」


 正直こうも上手くいくとは思っていなかった。



 「エルハイミ、急にいなくなっちゃ嫌よぉ~。あたしを置いて行かないでぇ~ マイダーリン♡」



 魔法陣からシェルが出て来ながら変な事を口走っている。



 「せ、正妻! ティアナ様を見つけると言う約束はどうなったのですか!? まさかそのエルフとずっとイチャイチャしていたのですか!? ティアナ様という物がありながら!!」



 さらに別の方から怒気を孕んだ声がかけられる。

 見れば涙目のやはりやつれたセレだった。


 「違いますわ、これはシェルが勝手に‥‥‥」


 「ううぅっ、酷いわエルハイミ。ティアナがいなくなったらあたしがお嫁さんでエルハイミに可愛がってもらうはずなのに‥‥‥」



 おいこらシェル!

 時と場所を選びなさいよ!!



 「エ、エルハイミさん‥‥‥」

 

 「せ、正妻ぃ‥‥‥」



 怒りに目を赤く光らせるセレとミアムを前にあたしは長い長い説明をする羽目になったのだった。



 * * * * *



 「と言う訳で残念ながらエルフの赤毛の子供はティアナではありませんでしたわ」



 やっと落ち着いて今回の件について説明も終わった。

 セレとミアムはそれを聞き勿論落胆している。



 「またティアナ様では無かったのですね‥‥‥」


 「ティアナ様ぁ‥‥‥」



 あたしだって落胆はしているわよ?

 でもずっとウジウジしていられないじゃない!



 「今回は違いましたけど次こそはきっとティアナですわ!」


 あたしが前向きにそう言うとセレとミアムはジト目であたしを見る。


 「そりゃぁ今はエルハイミさんにお願いするしかないですけど‥‥‥」


 「せめてまじめにやってよね‥‥‥」


 「なっ!」



 何それ!?

 あたしこれでも真剣なんですけど!



 「ふう、あれだけ凄い力持っているくせに使えないですね」


 「全くだわ、正妻のくせに!」



 いや、正妻関係ないでしょ!?

 何それ!?



 なんか釈然としないあたしだったけどとにかく一つだけ今回は収穫があった。

 

 あたしの「異空間渡り」がゲート並みに使えると言う事だ。

 しかもイメージさえできればかなり正確にそこへ行ける。

 そして魔力の消費も気にならない程。


 「とにかく、一旦実家に戻ってからすぐにこちらに戻りますわ」


 あたしがそう言った瞬間だった。



 『お母様、どちらに行かれたのですか?』



 「へっ?」


 コクの念話が届いた?

 そんな馬鹿な、今までせいぜい一キロくらいまでしか届かなかったのに!?


 驚きの連続があたしを襲う。



 「正妻、どうしたの?」


 セレが不機嫌なままあたしに聞いてくる。

 あたしはユーベルトにいるコクと念話が繋がっていることを話す。


 「コクちゃんと? それってシコちゃんと同じ念話ですよね?」


 ミアムはあたしに確認をする。

 あたしは頷き今度はこちらからコクに念話を飛ばす。


 

 『コク、聞こえますかですわ? 私は今ティナの町にいますわ』


 『え? まさか、そんな遠くにですか?』



 コクも驚いている様だ。

 あたしは続けて念話を飛ばす。


 『コク、とにかくこれからそちらに戻りますわ。お父様やお母様には先にそう伝えてくださいですわ!』


 あたしはそれだけ念話を飛ばすとセレとミアムに向き直りもう一度話す。


 「とにかく一旦あちらに行きますわ。すぐに戻りますのでお話はまた後でですわ」


 あたしはそれだけ言うとまた「異空間渡り」の魔法陣を出現させる。



 「ああぁっ! エルハイミ待ってよ! おいて行かないでよぉっ!」



 慌ててシェルもついてくる。

 こいつ何処か遠い所、いや、エルフの村にでも置いてこようか?


 一瞬そんな事が頭をよぎったあたしだったが「魔王」の「魂の封印」が出来るのはシェルだけなので仕方なく一緒にユーベルトに戻る。



 *



 「まさか本当にティナの町まで飛んでいたのですか?」


 戻るとコクが驚いている。

 しかしそれは事実なので何とも言えない。


 「あらあらあら~、じゃあコクちゃんやセキちゃんにはいつでも会えるわね? エルハイミ、今後はちゃん顔を見せにこまめに来るのですよ~」


 にっこり顔のママンだった。


 このママンに逆らうととんでもない羽目にあう。

 あたしは頬に一筋の汗を流しながら即答でうなずくのだった。



 「は、はい、わかりましたわ‥‥‥」



 

 なんか向こうでパパンが腕組みしながらうんうん頷いているのだった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る