第62話レイムの手伝い
「はぁ~、またこんなのですわ‥‥‥」
あの後シナモナの研究施設を拠点にイザンカにある何千と言う研究施設の中から「異世界人召喚」もしくは「上級悪魔召喚」について探し回っている。
今日もあたしは代価の為に天秤の女神アガシタ様の分身で使いであるレイム様の手伝いをさせられている。
一旦ブルーゲイルに戻ったあたしはフィルモさんに「女神の使いと協力して異世界、悪魔召喚の撲滅をしている」と言ったら大いに喜ばれ、フィルモさんたちが引き続き調べたそれっぽい古代研究施設を何十と教えられた。
しかしこれらは氷山の一角でまだまだ文献にはそれらしい物があるらしい。
「ねえ、エルハイミこの『サキュバスちゃん召喚研究レポート』って何?」
「それは男の命を懸けた希望のレポートですわ。先ほど中を見ましたがその情熱だけは認めますわ」
シェルは首をかしげている。
あたしは大きくため息をつく。
そう、個人でやってる召喚魔法の研究は欲望まみれのモノが多い事!!
そのほか「財宝召喚」とか「言う事を聞くイケメン召喚」とか一体何を召喚する気よ!?
そしてこの世界の召喚だけならまだしも普通のモノでは飽き足らず異世界のもっとすごいものを召喚しようとした輩って何っ!?
「えーと、『超ハード女王様召喚方法』、六つの手と三つの頭、ぎちぎちに縛り付ける尻尾を持つ悪魔の女王?」
「イオマ、燃やしなさいですわ、そんな研究」
イザンカは確かに最古の都市。
そしてご先祖様が最初に作った街で魔法が最初に知れ渡った街でもある。
その歴史に比例して素晴らしい魔術研究もある。
しかし逆を言えば同じモノを研究をする必要がなくなると別のモノの研究を始める者が出始める。
それが個人的な趣味であればその情熱たるや如何に!?
あたしは有無を言わさず目の前の召喚魔法の魔法陣を壊す。
そんな阿修羅のような変態女王様悪魔何て見たくも会いたくも無い。
「お母様、私が迷宮にこもっていた間に人間たちは一体何をしていたのでしょうか?」
「無駄な願望を成就する為に心血注いで無駄をしていたのですわ‥‥‥」
言い切るあたし。
だって個人研究施設って来てみればそんなのばっか!
確かに公共とか共同研究じゃ自分の性癖出せないよ?
でもだからと言ってこんな四畳半くらいの部屋でそんな物騒な女王様の悪魔召喚するか普通!?
「いっその事見つけた古代研究施設は全て燃やしてしまいましょうかしらですわ」
レイム様じゃないけどあたしもいい加減嫌になって来ていた。
「待つでいやがります、主様。もしもっと『メイド本』が出てきたらもったいないでいやがります!」
「いや、もうそんなピンポイントの研究何てしないんじゃない? それよりエルハイミ母さんお腹すいた! お肉!!」
クロエさんが味を占めたようで研究書をあさっている。
そしてセキがちょろちょろとドラゴンブレスで要らない研究を燃やしている。
シェルも面白がって先ほどのレポートをマリアと一緒にセキに燃やさせている。
子供の火遊びは危険だけどセキたちなら大丈夫だろう。
いや、やっぱり見つけた施設片っ端から燃やしてもらおうかな?
「ふう、変な研究ばかりですけど中には凄い理論もありますね?」
イオマはそれでも研究資料なんかに目を通している。
こう言う所は真面目なんだよなぁ。
とりあえずここが終わったらお昼ご飯にすることにするのだった。
* * * * *
「レイム様ぁ~、今日の分終わりましたですわぁ~」
「お疲れ様です、こっちも今日の分は終わりました‥‥‥」
シナモナの研究施設に戻りレイム様に今日の事を報告する。
どうやらあちらも同じようだったようだ。
「お疲れさんよ、しかしまだまだあるねぇ」
エリッツさんは回収してきたがらくたの山を見ている。
「エルハイミ様、大丈夫ですか? だいぶお疲れのようですが‥‥‥」
「ありがとうですわ、ジーナ。でも大丈夫ですわ、精神的にこたえているだけですわ」
「変なモノばかりだからねぇ~」
「でもその理論には目を見張るものもありましたよお姉さま!」
「人間と言う生物の価値観が変わりますね、お母様?」
「なかなかメイドの研究が無いでいやがります! 主様早いところ次行きましょうでいやがります!!」
「え~、めんどくさいぃ~! またドラゴンブレスでいろいろ焼かなきゃなの?」
「セキの炎はよく燃えるからね~。あ、今度マシュマロ焼いてみようよ!」
「ふむ、焼きマシュマロもお茶請けには良いですな黒龍様?」
「主よ、これは何処へ置けばいいのだ? やたら変な魔道具のようだが」
みんなもみんなであたしに付きあってあちこちの古代研究施設に行ってくれるけど、そろそろ飽きてきたようだ。
まあ、地道な作業ではあるものの根幹はかなり重要なモノだから気が抜けないのだけどね。
「とりあえずお茶を入れますね、エルハイミ様」
「あ、じゃあ、あたしも手伝います!」
ジーナとイオマは【水生成魔法】でやかんに水を張り【炎の壁】のアレンジでお湯を沸かす。
この辺はイオマがだいぶ制御が上手く成っているので任せても安心だ。
「ほう、イオマもだいぶ成長したね? 【炎の壁】のアレンジかい? コンロ程度の大きさに良く制御出来ている」
「ほんと、イオマさんの扱う魔法は制御が上手いですね。流石エリッツの弟子です」
「いやぁ、それほどでも~。あ、でもお姉さまにも沢山鍛えられたんですよ!」
コクの迷宮の時には師匠譲りの特訓したっけなぁ。
懐かしい。
「そう言えばゆっくりと話が出来ませんでしたが、ジーナのその後はどうだったのですの?」
「エルハイミ様の噂に比べればなんと言う事はありません。普通の冒険者をしていたのですよ。しかしエルハイミ様のような魔法の向上は望めず大人しく引退して今に至ります」
「それでも聞きたいですわ。良いでしょジーナ?」
「エルハイミ様のお話し好きは相変わらずですね?」
そう言いながらあたしたちはしばしお茶をいただきながらジーナの冒険談を聞いていた。
「エルハイミさん!!」
「なんだいこれはっ!?」
和やかにお茶をしながら昔話などしていたらいきなりレイム様とエリッツさんが立ち上がり警戒の声をあげる。
ドクンっ!?
あっ!?
これは!?
あたしにでさえわかるこの波長!?
あたしは思わず立ち上がるのだった。
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