第127話魔王城へ
正直あたしは苛立っていた。
「まさかイオマは本気でみんなを手にかけようとしているのですの? この世界を敵に回すつもりなのですの?」
「どうしたってのよエルハイミ?」
「お母様?」
勇者を演じるあたしから魔人による攻撃で手加減が無かった事を感じたあたしは困惑もしていた。
シェルやコクたちを連れていち早く転移をしてここ世界最大の迷宮付近まで来てそのすぐ近くに出来上がっている禍々しい城を見上げながらあたしは厳しい表情をする。
「イオマが本気で連合軍を亡き者にしようとしましたわ。またも魔人を呼び出し手加減なしの攻撃を仕掛けましたわ」
「なっ!?」
「お母様それは本当ですか?」
あたしの言葉にシェルもコクも、そして他のみんなも驚きが隠せなくなっていた。
「ちょっと、どう言う事!? イオマでしょ? なんで!?」
「イオマ、おふざけにしては度が過ぎます。お母様これは一体?」
信じられないのも無理はない。
でもこれは事実だ。
あたしはみんなに向かってもう一度言う。
「イオマは本気ですわ」
そう自分で言ってやはり違和感を感じた。
イオマが本気?
しかしあたしとの力の差は歴然としている。
それなのに本気であたしたちとやり合うつもり?
どうにもこうにも思慮深いイオマらしくない。
まるで自暴自棄になっているかのような‥‥‥
「あったま来たぁっ! エルハイミ、早い所イオマの所へ行きましょう! 一発叩いてやんなきゃ気が済まない!!」
「今回はイオマのお仕置きも容赦なく『至高の拷問』にしましょう。その体にお母様の愛情を隅々まで覚えさせてあげないといけませんね」
「エルハイミ、イオマって何でそんなことするの? あたしたちの事嫌いになっちゃったの?」
憤慨するシェル、口ではそう言いながらも悲しそうな目をするコク、そしてあたしの肩にとまりながらもみあげの髪の毛を引っ張って心配そうにするマリア。
「ふん、とにかく会ってみればわかる事でいやがります!」
「そうですな、しかしその前に‥‥‥」
「ああ、来たようだ、主よ露払いは俺たちがする!」
「あ、あたしもやる!」
平手に拳をぱーんっと叩きつけてクロエさんは正面の魔王城の門が開かれるのを見る。
そしてその中から沢山の魔獣や幻獣があふれ出して来る。
クロさんもショーゴさんもそしてセキも身構えそれを迎え撃とうとする。
が、それに輪をかけて上空からアークデーモンたちも飛来する!
「上のはあたしに任せて!」
「ふむ、アークデーモン如きではシェルで十分でしょう、私はこちらをやりましょうか?」
そう言ってコクはあたしたちの後ろから迫りくる妖魔たちにドラゴン百裂掌を放つ。
カッ!
どががががががががっ!
コクの攻撃を皮切りにみんなが一斉に動き出す。
「はぁっ! 魔光弾全弾発射!」
「ドラゴン百裂掌!!」
「ドラゴンクロ―!!」
「まずはこいつから! よっとっ!」
正面から迫りくる魔獣たちを吹き飛ばしながらみんなが突っ込む。
中には上級の魔獣や幻獣もいるけどみんなの敵じゃない。
「風の精霊王よ、あたしに力を貸して! 【暴風刃】!!」
シェルも風精霊王を使って暴風の竜巻を発生させ上空から襲い来るアークデーモンたちを切り刻みながら引き飛ばす。
「全く、何をしているのですわ、イオマはっ!!」
あたしもそう言って両手を天にかざしてから一気に振り下ろす。
するとまるで豪雨のように上空から沢山の落雷が城壁に落ち一気にそれを破壊する!
カッ!
がらがらがらがらっ
ドガぁぁあああぁぁぁぁぁぁんんッっ!!!!
「うひゃっ! 相変わらず凄い!」
「今ので城壁が崩れましたね? 後ろからのも片付きました、お母様!」
シェルとコクがあたしのそばまで戻って来る。
「よぉおぉぉしっ! あたしが一番のりぃっ!!」
そう言ってセキは双方の手に炎を宿し崩れ去った城壁を乗り越えて突っ込む。
「ほら、いっくぞぉ! 煉獄相竜牙!!」
突っ込みながら現れる幻獣たちをその両手に宿した炎と竜の爪で引き裂く。
そしてそこへショーゴさんやクロさんクロエさんが続く。
あたしたちはまだまだ迫りくる魔獣や幻獣たちを薙ぎ払いながら魔王城へと踏み込んでいくのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます