第85話魔道具処理のあたし
ここはシナモナ一族の研究施設。
今は色々あってあたしたちの拠点にさせてもらっている。
「ふう、これで一応は系列に分けられましたね、お姉さま!」
「そうですわね、しかしこれだけの資料と研究成果。ボヘーミャに持ち帰ったらアンナさん夫妻はどう思うでしょうですわ」
かなり貴重なモノから通常知られている事以上のモノまで流石にすごい研究成果だ。
あたしは必要な所だけ力を開放してそれについての情報と理だけを受け取りそれらを吟味していく。
そして不要な物、重複したものを見極め要らないものはさっさと処分をしていた。
それでもこの量。
中にはあたし個人でもっと研究したいものが有ったりもする。
この「愛玩ホムンクルス作成法」という本はしっかりと内緒で確保している。
どうやらケモミミのティアナが作れそうなのだけど、そう考えるだけで興奮してしまう。
但し、寿命はどうしても短くなってしまうし知能もせいぜい犬レベルが限界らしい。
そもそもホムンクルスは先刻もう一人のあたしがシェルたちと確認に行った研究施設にもあったけど魂自体が無い。
だからせいぜいゴーレムくらいの事しか出来ないのだけどこの愛玩ホムンクルスは動物を使う事によりその魂を核にするらしい。
やるやらないは別としてこの知識には非常に興味がある。
つまりキメラとはまた違った感じで取り込んだ生物を核に自分の好きな姿形のケモミミ美少女が作れると言う訳だ!
夢だけは広がる。
しかし、人として、そしてティアナに対してあたしはそれを躊躇してしまう。
そんな事を悩んでいたらイオマがある魔導書に気付いた。
「あれ? お姉さまこれって一体何ですか?」
「ああ、今の私に必要な研究ですわ。『意識の分裂に関する研究』ですわ」
どう言った物かと言うと自分の意識を魔結晶石核などに分散した場合、再融合やその間の認識や経験が別々の意識にどう影響するとかが書かれている。
今のあたしに出来るのは自分を一度に三人に増やせるくらい。
もともとこの世界の住人であるあたしは個人意識も普通の人間と同じ。
女神様たちやコクたち古の竜たちのように完全に別人格の自分を作り出せない状態だった。
ゆくゆくはこの辺も理解しておいた方が良いような気もするので今からそう言った事についてもっと知っておきたい。
もしこれをコク辺りに聞いたら今のあたしには理解できないだろうから。
「お姉さまの考えとしては意識が分かれると別々の自分が出来上がると言う事ですか?」
「その辺は何とも言えませんわ。今の私は三人とも根底は同じなので単に三か所の私がいるだけですわ。今イオマと話している内容も見ている風景も他の二人も現在進行形で見てますし聞こえているのですわ」
イオマはそう聞いてう~んとか唸っている。
通常はこういう反応になるだろう。
あたしだって前世の世界で同時に数か所見れる監視カメラとかの知識が無ければなかなか理解しがたいだろうし。
「でも『意識の分裂に関する研究』なんて更に研究するのですか?」
「ゆくゆくはティアナ意識についても転生後に思い出すのが大変でしょうから意識を分断して過去の記憶を保管しておいてあげたいと思っているのですわ」
「ティアナさんの‥‥‥」
ティアナはあたしがいる限り転生を繰り返しあたしとまた会えることになっているけど一度や二度ならその記憶も戻りやすいだろう。
でもあたしには永遠の時間が出来た。
その都度転生するティアナが過去の記憶を取り戻すのも回数が増えればそれだけで人間の意識では耐えられなくなってしまうのではないかと思う。
なのでシナモナ一族の祖先であり、「亡者の王リッチ」にまで上り詰めた大魔導士シナモナもやっていた意識を魔結晶石などに入れ魔道の研究を続けていたと言うのはものすごく気になる。
意識と魂。
この関係はもっと研究しなければならないだろう。
分かっているのは魂は有限でありそこに記録される記憶と意識も有限になるだろうと言う事だ。
なのでそのバックアップとなる今までの記憶とそれを保持する意識を別の場所で保管して転生したティアナの魂に連結させるようにすれば必要な事だけは引っ張り出せ不要な事はとりあえず保管しておけるのではないだろうか。
きっとあたしや女神様のとは違いティアナの魂自体はもうこれ以上大きく出来ないのだから。
「うらやましいですね、お姉さまにそこまで思ってもらえるティアナさんは‥‥‥」
「イオマ?」
イオマは寂しそうにそう言ってあたしの目の前にまで来る。
「私はお姉さまが好きです。でもそのうち歳をとっておばあちゃんになってそして死んでいく。だけどティアナさんと違ってもう転生も出来ないかもしれない。もし生まれ変わっても今の私を思い出せないかもしれない‥‥‥ そしてもっと嫌なのがお姉さまから離れてしまうと言う事です!」
そう言ってイオマはあたしに抱き着き口づけをしてくる。
そしてそのままあたしを床に押し倒す。
「お姉さま、抱いて‥‥‥ 今だけでいいから私を抱いて‥‥‥」
「イ、イオマぁ!?」
あまり事にあたしは動揺する。
きっと他の場所にいる二人のあたしも同じだろう。
「ティアナさんには絶対に内緒にします。勿論他のみんなにも‥‥‥ だから一度だけでいい、お姉さま、私を抱いて下さい‥‥‥」
思わず唾を飲んでしまうあたし。
「ごくり‥‥‥」
イオマから漂う香りはあたしがよく使う香油‥‥‥
あたしより長身になり大人の魅力あふれる大きな胸のイオマ‥‥‥
そんなイオマがまたまたあたしに口づけしてくる!
「んちゅっ」
「んんぅぅううううぅぅぅっ!!」
だめ、大人のキスしてくる!!!?
舌が絡んで濃厚なそれに頭がぼぉ~っとしてくる‥‥‥
や、やばい、あたしこのままじゃぁッ!!
「それくらいにしておき、イオマ。やるんなら別の部屋に行っておやり」
「エ、エルハイミ様、いえ、いくらお若いからと言って流石に人前では慎まれないと節操のない女と見られてしまいますよ!」
「はぇ!?」
「あっ!?」
いきなりかけられた声に固まるあたしとイオマ。
それをニヤニヤして見ているエリッツさんと顔を赤くしてため息をついているジーナ。
「わわわわぁっ、ですわっ!!」
「あっ、え、えーとぉ////」
思わずあたしたち二人はその場で正座して下を向いてしまう。
「若いってのは良いねぇ~」
「エリッツ、その位でエルハイミ様をからかうのはやめなさい。エルハイミ様も続きは別の部屋でお願いします」
からかうエリッツさんにジーナはくぎを刺しながらあたしにもそう言ってくる。
「そ、そんな事しませんわぁっ!」
「えっ!? この流れで続きしてくれないんですかお姉さまっ!?」
どんな流れじゃぁぁぁぁぁぁっ!!
あたしの苦悩は続くようだった‥‥‥
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