第84話研究施設確認のあたし
とりあえずあたしたちはそれぞれの事をこなす為に三人に分かれて別々の事をやっている。
根幹は同じあたしなのでまるで部屋の中で三画面のモニターを見ながら遠隔操作しているような感じなんだけど、こうやってしてみるといろいろと便利で助かる。
あと少しで調べられた研究施設の確認が終わる。
こちら担当のあたしにはシェルとショーゴさんがくっついてくる事となった。
「本当はエルハイミと二人っきりで研究施設の確認したいのにぃ~」
「駄目ですわよ。シェルと二人きりだとすぐに『チューして!』とか言って迫って来るでは無いですの」
そうこいつと二人っきりになると最近はもの凄い勢いでアプローチしてくる。
いや、それどころか最近はあたしの許可なくキスしてくる時もしばしば。
この間だって‥‥‥
―― 回想中 ――
「ねえエルハイミ、ここってこれ以上は特に何も無さそうだわよ?」
「そうですわね、それでは戻りましょうかしらですわ‥‥‥ って、シェルぅ?」
「良いよね、二人っきりなんだから、良いよねっ!? 『チュー』だけだからぁっ!」
「んむぅぐぅうううううぅっ!!」
「んあはぁっ! エルハイミぃぃ~♡」
―― 回想緊急終了 ――
な、何もないわよ!
「チュー」以外何もないわよぅ!
確かに危なかったけど、あれ以上は何もないわよぉっ!!
はぁはぁ‥‥‥
何故かあたしは回想しただけで肩で息をしてしまっている。
だからシェルと二人で密室にいるのは危険なのだ。
「ところで主よ、これは一体何に使うものなのだ?」
ショーゴさんは確認中の研究施設にあるガラスの筒で出来たようなモノの前に立っていてそれを軽くコンコンと叩いている。
「それはホムンクルスを培養する為の機材ですわ。その中で人工生命体ホムンクルスを作成し、培養するのですわ」
「人工生命体か‥‥‥ それは人間でも出来るのか?」
「人の形にはできますわ。でも人工生命体には魂がありませんわ。出来上がってもゴーレムレベルの役にしかたたないのでこれを研究している人は少ないのですわ」
人工生命体なので放っておけば死んでしまうし食事だって排泄だってする。
それだけ手間がかかるのに魂自体が存在しないからゴーレムレベルの事しか出来ない。
そうなれば必然とこんな研究続ける人はいなくなる。
だってゴーレム作った方が経済的だし楽だし。
しかしこのホムンクルス、もともとは死んだ人間を蘇らせる方法として研究がされたと聞く。
媒介となる人物の体の一部、髪の毛でも爪でも良い。
それらを魔術の素材と一緒にこの中で培養すると死んだその人そっくりのホムンクルスが出来上がるそうだ。
死んだ人そっくりの‥‥‥
ショーゴさんはずっとそのガラスの筒を見ている。
「ショーゴさん、ですわ?」
「ああ、すまない。主は既にこの世界では最強だ。そしてこの先もシェルと共に永遠を生きるのだろうなと思ってな‥‥‥」
ショーゴさんはあたしに向き直りそう言う。
「命の定めがある俺だが、この俺の命尽きるまで役には立たないかもしれないが主にお仕えする。だが願わくば俺が死んだ後も主に仕えたいと思っていた。もしそれがホムンクルスになった俺でも‥‥‥」
ショーゴさんはそう言ってその場で膝をつき騎士の誓いを立てるのと同じ仕草をする。
「エルハイミ様、あなたは既に神にも劣らぬ存在となられた。俺は主であるあなたに仕える事が出来とても幸せだ。願わくば来世でも貴女に仕えたい」
「ショーゴさん、何を言っているのですわ?」
「いや、改めてそう誓いを立てたかったんだ。我が主よ」
そう言ってショーゴさんは立ち上がる。
「ま、ショーゴならその体だもん、あたしたちとまだまだずっと一緒に居られるわよ」
シェルがお気楽にそう言ってホムンクルスの研究に関する資料を机の上に載せる。
「どうするエルハイミ、これって『異世界召喚』じゃないけど?」
「面白そうなのでもらっておきますわ。ついでにこの設備もですわ」
あたしはそう言ってそれらを腰のポーチに次々と放り込んでいく。
そのうち何かの役に立つかもしれないしね。
「さて、今日中にあと二つは施設の確認に行きたいですわ。そうすれば残り百ですわ!」
「あと百もあるのぉ~?」
「まあそう言うなシェルよ。面白そうな魔道を見つけた時の主は良い笑顔になっているぞ?」
「それは否定しないけどね」
長い付き合いのこの二人。
これからもまだまだあたしのしたい事には付き合ってもらうだろう。
ティアナの転生者が見つかるまで。
いや、その後も世界中をこの三人で回るのも悪くない。
あたしのうちの一人と見た事の無い場所、行った事の無い場所をもっと見て回る為に。
あたしの中の一人はそう思うのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます