第83話ホリゾン帝国崩壊


 アガシタ様と悪魔神ヨハネスの戦いからふた月が経っていた。


 

 「お姉さま! 今知らせがありました! ガレント、連合軍がいよいよ帝都エリモアに付近まで進行したそうです!」


 あたしたちは今シナモナ一族の研究施設に拠点を構えている。

 なんだかんだ言ってまだまだイザンカにある研究施設をしらみつぶしに確認してようやく文献などにあったそれらしい所は確認が終わりそうになっていた。



 「とうとうゾナーたちがエリモアにまで行ったのですわね?」


 「こちらは終わりましたわ。不要な物は処分いたしますわね?」


 「そうそう、テグの地下飼育場の情報もだいぶ集まりましたわ!」



 あたしたちはイオマの知らせを聞きながら一斉にそう言い始める。



 「あ~、エルハイミがいっぱいいて今まで以上に独占できるのはうれしいんだけど‥‥‥」


 「すべて本物のお母様なんですよね‥‥‥」


 「え? 良いじゃないですか、お姉さまの一人を独占できるんですから!」



 あたしはとりあえずあたしが処理しきれる三人にまであたしを分けていろいろとやる事を始めてみた。


 だってライム様はいなくなっちゃうし、レイム様の情報も残してもらえないからブルーゲイル城にいるフィルモさんから提供された資料で異世界召喚などの厄介なものは片付けなければいけないし、あちらこちらを回ることも必要だし、ティアナの探索だってしなきゃならない。


 分身と言うよりあたし自身を分けた方が効率が良い。

 なのでこうしてあたしは三人に別れいろいろと始めたのだが‥‥‥



 イオマはここぞとばかりに一人のあたしを独占してべっとりと。



 シェルもなんだかんだ言いながら一人のあたしと研究施設の確認に付いて行き時たまキスを要求してくる。



 ここで持ち帰った魔道具の確認と整理、そしてティアナのいるはずのテグの飼育場の探索をコクとしているのだが最近やたらと魔力の供給を要求される。




 「もう完全に主様は人間ではなくなりましたでいやがりますね」


 「流石は我が主様。黒龍様がお仕えするにふさわしい」


 「しかし困った、どの主に付いて行けばよいのやら?」


 「どうでも良いよぉ~エルハイミがいっぱいいると便利だし! ねえエルハイミ、またチョコ食べたい~!!」



 だいぶ慣れたようでみんなも既にこの状況に馴染んで知る。



 「全く、エルハイミさんはどんどん人間離れしていくどころかこれじゃぁ女神様以上じゃないかい? イオマ、追加だよ。ご先祖様の弟子たちの軌跡だ」


 「エルハイミ様、ご立派になられて‥‥‥ このジーナ、感動いたします」


 エリッツさんたち保護者組もとりあえず色々協力してくれている。

 


 あたしは思う。

 ホリゾン帝国に根付くジュメルもあと少しで殲滅できるだろうと。


 そしてここでの異界召喚の研究施設問題も終われば集中してティアナの探索が出来ると。




 「ところでお姉さま、『魔王』についてはどうしますか?」  



 イオマに言われあたしたちは考える。

 エリリアさんに言われた当面の問題はレイム様に会い、「悪魔王ヨハネス」と「魔王」をどうにかしないとティアナが見つからないような神託だったらしい。

 でも「悪魔王ヨハネス」は倒したし後は「魔王」と言われても何処に転生しているかさえ分からないのではどうする事も出来ない。


 あたしたちの能力は「破壊と創造」に特化しているのでそれ以外については万能とは言い切れない。

 未来予想は出来ても未来視は出来ないし、知らない情報はやはり知らない。

 「あのお方」の力を開放して知識の情報流入をしても理は分かっても今日の晩御飯をイオマが何作るかは分からない。


 まあ人間離れしても全能でも万能でも無いのは仕方ない事なのだ。

 だって、女神様たちだってそうなのだから。



 「『魔王』が一体ティアナにどんな影響を与えていると言うのでしょうですわ?」


 「そうですわね、さしあたり『魔王』が何処にいるかが分からなければ対処のしようがありませんわ」


 「それに覚醒しているかどうかも分からなければシェルが『魂封じ』を使う訳にも行きませんわね?」



 あたしたちはそう言いながら相談を始める。

 とは言え、根底では一つに繋がっているので単に一斉に思った事を口にしているだけなので生産性が高いとは言えない。



 「慣れたとはいえ流石にエルハイミが三人もいるとこういう時変な感じよね?」


 「お姉さまの話では今三人のお姉さまが口にした事は全て根源は一つなんですよね?」


 「つまり私やクロ、クロエとは違い思考が繋がっているわけですね、お母様?」


 シェルやイオマ、コクがあたしたちに聞いてくる。



 「「「そうですわよ」」」



 思わず三人のあたしの口調がハモる。

 


 「うっ、変な感じ」


 「でもおかげでお姉さまを独り占めに出来るのはうれしいです!」


 「そうですね、お母様が常に私の側にいるのは喜ばしい事です」



 この三人は分かれたあたしたちと一緒に行動をしている。


 さて、そうなるとイザンカの研究施設確認とその処理は大体終わるから、コクと一緒にいるあたしはホリゾンの方に行ってみようかな?




 あたしたち三人は顔を見合わせ頷くのだった。


 


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