第82話女神再び


 「アガシタ様ぁっ!」



 あたしは悪魔神、悪魔王ヨハネスを倒しみんなのもとへ戻ると力を使い果たし倒れている大人バージョンのアガシタ様がいた。


 ライム様は必死にアガシタ様を呼んでいるけどアガシタ様の意識がもうろうとしている様だ。

 あたしも慌ててアガシタ様のもとへ駆け寄る。


 「アガシタ様! しっかりしてくださいですわ、アガシタ様!」


 「ぅううっ、エ、エルハイミか? 奴は‥‥‥?」


 「安心してくださいですわ、すべて私が片付けましたわ! もう異界からの攻撃手段は無くなりましたわ!」



 「そうか‥‥‥ よか‥‥‥ った‥‥‥」



 がくっ!



 えっ?

 嘘!?



 「アガシタ様ぁっ! アガシタ様ぁぁっ!!」



 ライム様は慌ててアガシタ様を揺さぶる。

 しかしアガシタ様は次第にその体を薄っすらと光り輝かせていく。


 まさか今のこの体があの戦いに耐えられなくて崩壊を始めた!?



 そんなっ!



 しかしアガシタ様の体はどんどんと小さくなっていく。


 「嫌ぁっ! アガシタ様ぁっ!!」


 「ライム様! 退いてくださいですわ!! 私がっ!!」


 あたしは慌ててこの世界のマナを掻き集め女神の肉体に補填をしようとしたその時だった。



 ぽんっ!



 「ずぴぃ~ぃぃいいぃぃぃ‥‥‥」



 いつもの子供バージョンのアガシタ様になって大いびきをあげて寝ている‥‥‥



 「へっ?」


 「あ、あれっ?」



 慌てたあたしもライム様もそれを見て思わず固まる。



 「お母様、この女神寝ているように見えるのですが‥‥‥」


 「力使って疲れて眠ったみたいだね~。あたしも疲れたぁ~、エルハイミ母さん、お肉じゃなくて魔力ちょうだい!」



 コクやセキが覗き込んでくる。



 「すごいのはすごいけど、こうして寝てると普通の女の子にしか見えないわね?」


 「お姉さま、アガシタ様大丈夫なのですか?」



 シェルやイオマものぞき込んでくる。

 そして周りにみんなが集まってすやすやと眠るアガシタ様を見る。



 ‥‥‥え~とぉ、だいぶ力は使ってしまっているけど当人は大丈夫そうだよね?

 あたしは思わずライム様を見る。


 ライム様はそんなアガシタ様を抱きかかえ優しそうな視線でアガシタ様を見つめる。



 「エルハイミ、どうやらアガシタ様は回復の為に深い眠りについたみたい。これじゃぁ何時目覚めるか分からないから私はアガシタ様を安全な場所に運ぶわ。いろいろありがとう。これでアガシタ様が気にしていた異界からの影響は無くなったわ」


 ライム様はそう言って立ち上がる。

 そしてもうじき沈む夕日に向かって歩き出す。



 「ありがとうね、エルハイミ。またそのうち会いましょう」



 そう言ってライム様はアガシタ様を抱きかかえたまま茜色に染まる空の下沈む夕日に向かって歩きながら虚空にその姿を消してゆく。



 「アガシタ様、ライム様、ですわ‥‥‥」



 終わった。

 そう、長かったジュメルのヨハネス神父との戦いいがとうとう終わったのだ。




 「エルハイミ!」


 あたしがライム様たちの後姿を見送っているとシェルが警戒の声をあげる。




 「小娘‥‥‥ いや、エルハイミ。私たちは今まで一体何をしていたのですの?」



 見ればそこには裸のジェリーン達がいた。

 あたしが悪魔融合されたのを元の人やダークエルフに戻したのだった。


 「まずはこれでも着なさいですわ」


 あたしはそう言いつつ虚空から人数分のドレスを出す。

 それをジェリーン達に渡し話し始める。



 「あなた方ホリゾン帝国は秘密結社ジュメルに操られていますわ。今現在皇帝ゾルビオンは自我を失いジュメルに操られている、その第一位王子以下全ての皇族もですわ」



 あたしがそこまで言うとジェリーン達は驚き服で胸元を隠すのも忘れる。


 「どう言う事ですかしら‥‥‥?」


 「ここでは落ち着けませんわ。まずは服を着てからですわね?」


 あたしはそう言ってうらやましいその巨乳をチラ見しながら服を着るように言うのだった。



 * * * * *



 「先ずは礼を言うべきですかしら?」


 ジェリーン他六人をあたしはシナモナの研究施設に連れ帰った。

 そしてゾナーたちにはアガシタ様のあの残像を思い出し試してみた分身が上手く行ったのでそっちのあたしを行かせた。


 この分身面白い事にまるで一つの部屋で複数のモニターを見ているかのように同時に両方の事がわかるし対応できる。

 当然思考や反応が倍になるのでそれに追いつけるように思考も理解力の速度もあげてみたら十分に対応できた。


 これは使えるし面白い。

 今度主体となるあたしから完全に切り離したあたしも作って試してみよう。



 「礼には及びませんですわ。ジェリーン、今更あなたたちにどうこう言うつもりも何もありませんわ。あなたたちとしてはどうしたいか言ってくれれば協力はしますわよ?」

t


 「それでここは何処なのですか?」


 「ヨハネス神父が悪魔だったなんて‥‥‥」


 「はぁ、せっかくいい男だと思ったのに‥‥‥」


 「うーん、これからどうしようかなぁ~」


 「エルハイミさんでしたね? 今までの事を教えてもらえますか?」



 ジェリーン以外の人たち、ユミル司祭、フェル、フィジー=インスタンド令嬢、メル元教祖、テルモ。

 みんな巨乳のお姉さんたち‥‥‥



 「まさか敵である貴様に助けられるとはな‥‥‥しかし、ヨハネスが悪魔に身を落としていたとは‥‥‥」



 そしてダークエルフの伴侶であったザシャ。


 今更こいつらに恨みも何もない。

 むしろこいつらもヨハネス神父に騙され操られていたのだろう。


 ダークエルフのザシャでさえどうも悪魔を毛嫌いしている様だ。



 「先ほども言いましたがあなたたちホリゾン帝国は秘密結社ジュメルの傀儡に成り下がっていますわ。今はガレント、連合軍がそのホリゾンに対して元第三王子ゾナーが指揮を執り解放宣戦を仕掛けていますわ」


 あたしが要約してそう言うと流石に彼女たちは動揺する。



 「ホリゾン帝国が‥‥‥」


 「ゾナー、いや、ゾナー様が解放宣戦を‥‥‥」


 「ホリゾンはどうなっているってのよ!?」



 口々にそう言う中あたしはジェリーンに聞く。



 「ジェリーン、貴女たちは一体どこまでの記憶があるのですの?」



 「私たちは‥‥‥ そう、ジュリ教のスペシャルとしてヨハネス神父と共にさらなる高みを目指し、そしてあなたたちと戦い、ヨハネス様のモノになったはずですわ‥‥‥」


 「それは肉体ごと吸収されたと言う事ですわね?」



 あの時ティアナの一撃で悪魔王ヨハネスは腕を失った。

 しかしすぐに彼女らの一人を吸収して回復をした。

 そして最後のあの戦い、悪魔神ヨハネスからも彼女らをアガシタ様を倒す為のコマとして使っていた。


 彼女たちはとことん利用されていたのだった。



 「真にホリゾン帝国を憂うならゾナーと合流して解放宣戦に加わるべきですわ」


 あたしのその言葉に彼女たちは黙って下を向いてしまう。



 「私は自力で長たちのもとへ戻る。貴様の助けはこれ以上受けん。ヨハネス‥‥‥ 馬鹿な男だった‥‥‥ 私はそんな男に‥‥‥」


 そう言ってザシャはあたしにホリゾン帝国が首都エリモアに自力で戻ると言い出す。

 しかしここからあそこまでは遠い。

 あたしはため息をついてザシャをエリモアに飛ばす。


 後の事は自分で何とかしてもらうしか無いだろう。




 「さて、他の人はどうしますの?」



 「そうです、早い所何処かに行って下さい! これ以上お姉さまの周りにあなたたちがいるとお姉さまが危険です!」


 「そうね、あんな凶器が六人もいたんじゃエルハイミが我慢できなくなっちゃうわね!」


 「お母様! やはり胸ですか!? そんなっ! 小さいのも良いですよっ!!」



 いきなりイオマやシェル、そしてコクが話に割り込んでくる。

 いや、あんたたち今は重要な話をしていると言うのに‥‥‥



 言われたあたしは思わずもう一度ジェリーン達の胸を見る‥‥‥


 確かにおっきい‥‥‥

 ティアナ以上におっきい‥‥‥



 「エ~ル~ハ~イ~ミ~ぃ~!!」


 「お姉さまっ!」


 「お母様、また病気ですか!?」



 はっ!?



 思わず見とれていたらみんなが詰め寄って来ていた。




 「はぁ、エルハイミ様立派になられたと思っていたのですが、やはり女性にばかり興味があるようになってしまっていたのですね‥‥‥」


 「ジーナ、それはイオマの置手紙でも話しただろう?」


 向こうで保護者達がなんか言っている。



 「エ、エルハイミ貴女はそう言う趣味ですのぉ!? ゾ、ゾナー様でも良いですわ、とにかく私たちをそちらに送り届けてくださいですわぁっ!!」


 額にびっしりと脂汗をかくジェリーンたち。

 いや、大きな胸は好きだけど別にあんたらをどうにかするつもりはないわよ?




 あたしはそう思いながらジェリーン達をゾナーのもとに送り届けたのだった。



 

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