第41話奇妙な話
「やっぱりエルハイミさんが戻ってくると普通じゃなくなっちまう!」
「鋼鉄の鎧騎士工房」でルブクさんはそう言って腕を組んだ。
まあ分からなくはない。
いくら「十得君」を余分に十一個作ったって素体を作るだけだって大変なのは変わらない。
それに輪をかけて魔鉱石をあたしたちが持ち帰るから一気に話は進む。
「流石お姉さまです! 魔鉱石であんなに簡単に「エルリウムγ」を作るなんて!」
イオマ一人じゃ大変だろうからとあたしも魔鉱石でフレームパーツを作った。
そしてこれでほぼほぼフレームだけは十二体分出来上がってしまった。
「ねえエルハイミ、後先考えている?」
「流石に今のお母様には造作もない事のようですね」
シェルとコクが出来上がって並べられているパーツを見ている。
とはいえこれを素体として組み上げるのは一苦労だ。
「でもこれで計画がぐっと進みますね! 流石お姉さま!!」
「だからと言って無理をしてはいけませんわよ、イオマ」
「エルハイミさんがそれを言うかぁ?」
資料をめくりながらパーツ数を確認しているイオマにあたしは注意するとすかさずルブクさんが突っ込みを入れてくる。
かなり恨めしそうにあたしを見てくる。
「予算の関係もありますわ。とにかく一番制作の面倒な所はこれで終わりましたわ」
あたしはルブクさんと目を合わせない様に明後日の方向を見ながらそう言う。
「だがこれで『ガーディアン計画』の予定となる機体数の素体フレームは手に入りました。ありがとうございます、エルハイミ殿」
イオマからチェックリストの資料を受け取りながらエスティマ様はそう言う。
ガレント王家の人間としては早い所国の安全を固め確保したい所だ。
「自国の安全の為ですわ。私も出来る事は協力致しますわ」
あたしはそう言ってにっこりとほほ笑む。
するとシェルがあたしの所まで来て言う。
「終わったら一旦ジルの村に行きましょう。今までの事も伝えなきゃだしジルも頑張ってまだ魔鉱石を探そうとしているからね」
「そうですわね。これが終わりましたら一旦ジルの村に行きましょうですわ」
あたしたちは約束通りジルの村に行く事とした。
* * *
「お帰りシェルねーちゃん、エルハイミねーちゃん!」
あたしたちが「異空間渡り」でジルの村に行くとちょうどジルが鉱山から戻って来たところだった。
「ただいま! ジル顔が真っ黒よ?」
「ああ、さっきまで鉱山にもぐってたからね。でもどんどんあの宝石の原石出て来てるよ!」
魔鉱石の鉱脈が尽き、まさかのダイヤモンドの鉱脈が見つかり予想外の収入源が出来たこのジルの村はいま急ピッチでダイヤの採掘をしている。
「エルハイミねーちゃんの言う通り上質みたいなのがごろごろ出て来てるよ! ただ、魔鉱石はほとんど出て来てないんだよ‥‥‥」
「それなら大丈夫よ! 魔鉱石の購入ルートが今回出来たからね!」
シェルはそう言ってジルの顔に着いたすすを拭き取ってやる。
なんか恥ずかしがっているジルだったけどシェルに捕まって大人しく拭かれている。
うん、バティックもそうなのよね。
何を恥ずかしがっているのやら。
「これで良しっと」
「ありがと、シェルねーちゃん」
そう言いながらジルはダイヤの原石を一つ取りだす。
「はい、これくらいのがだいぶまとまって出始めてるよ」
それはアーモンドくらいの大きさで原石とは言え既に輝きを放っていた。
「かなりの上質なモノですわね?」
「うん、なので丁度いいからエルハイミねーちゃんたちが第二弾でこれ運んでもらいたいんだ。流石に普通のルートでは時間もかかるし物騒でもあるからね」
「物騒ですの?」
ここからティナの町までは山岳部のがけっぷちを通っていかなければならないから物騒と言うのはどう言う意味だろう?
「うん、戦争難民が出始めている。その中にはガレント側に流れ込んで盗賊なんかになっているのもいるからね」
戦争が長引けば難民も発生しそして生活が不安定になることによって盗賊に身を落とす者もあらわれる。
仕方ないこととは言え放置しておいていい問題ではない。
「エスティマ様にこの事はですわ?」
「うん、話はしているんだけどそろそろ北の援軍を編成して送り付けなきゃいけないから手が回らないみたいだよ」
ジルはそう言いながらティナの町の方を見る。
「そのままと言う訳にはいきませんわよね?」
「そうなんだけどねぇ」
つられてあたしもティナの町の方を見るけど良くも悪くもあんなところに盗賊が出るとはね。
「だったらあたしたちが退治すれば良いじゃない?」
シェルはそう言って薄い胸を張る。
いやまあ、そんな気はしていたんだけどね‥‥‥
「ふむ、また盗賊退治ですか?」
「弱っちいのをぶっ飛ばしても面白くないでいやがります」
「かと言って放っても置けまい、主よ」
「じゃあ決まりじゃん!」
コクは小首をかしげながらあたしに言いクロエさんはつまらなさそうにしている。
ショーゴさんの言う通り放っても置けないとなればあたしたちが動くしかない。
だからセキの言う通り決まったも同然だった。
「なんかあっちこっち行ったり来たりばかりだよぉ~。エルハイミお菓子ぃ~!!」
マリアがあたしの髪の毛を引っ張っている。
確かにすぐすぐどうこうするわけじゃないからここらで一息入れるとしようかな?
ちょうどジルたちも戻って来たばかりだし、お茶にしよう。
あたしはマリアに返事をしながらお茶の準備をする事を提案するのだった。
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