第29話蘇り?


 「そうそう、そう言えばドワーフの職人が変な事言っていたな?」


 

 シェルの手料理をみんなでつつきながら食事をしているとジルが突然そう言い始めた。


 「一体どんな話なのだジルよ?」


 少食のショーゴさんがエルフ豆の煮ものを食べながらジルに聞く。

 意外とこの煮豆美味しいのよね。

 ちょっとシェルを見直した。


 「うん、そのドワーフの職人の話だとドドス共和国で死人が蘇ったってんだよ。ああ、アンデットとかじゃなくて成人女性が亡くなったんだけど葬儀の日にいきなり起き上がり自分はウェージム大陸の人間だって訳の分からない事言い出したらしいよ」


 「生き返りと言うのですの?」


 「ん~、ちょっと違う様で、死んだはずのその女性の記憶が完全に無くて自分は別人だって話らしいね」


 「死体に魂が宿ったとでも言うの?」


 シェルはおかわりの煮豆をジルに渡しながら聞く。


 「詳しくは俺も分からないよ。そうだ、明日そのドワーフの職人に聞いてみるか?」


 「そうですわね、お願いしますわジル」


 うーん、それがティアナの転生とは思えないけど確認は必要よね?

 あたしは煮豆を食べながらそう思うのだった。



 * * * * * 



 「やぁ、タルタさん、おはよう」


 翌朝ジルは村の鍛冶工房にあたしたちを引き連れて来ていた。

  

 「ん? ジルか。おはようさん、おや? こっちは‥‥‥ エルハイミさんじゃないか!?」


 タルタさんと呼ばれたそのドワーフはあたしの顔を見て驚いている。

 どうやらあたしを知っている様だ。


 「あれ? タルタさんエルハイミねーちゃん知ってるの?」


 「知っているも何も、ユグリアでは『巨人』が攻めて来てケガしてるの治してもらったからなぁ。ティナの町にいるって聞いて来てみればホリゾン帝国に行っちまった後だったんでな。お礼の一つも言えなんだ」


 そう言って大笑いする。

 あたしは何となくオルスターさんを思い出していた。

 ドワーフは気難しい所もあるけどいい人ばかりだった。



 「そうでしたの。でもどうやら怪我も治ってもう大丈夫のようですわね?」


 「ああ、ありがとよ、エルハイミさん。ところでこんな山奥の村まで何しに?」


 ひとしきり笑ってタルタさんはあたしに聞いてくる。

 あたしは簡単にいきさつを説明してタルタさんが言っていた話について聞いてみた。 


 

 「そうか、しかし俺もドドスにいる仲間内から聞いた話でな。最初はリッチが復活したんじゃないかって大騒ぎになった様だがどうやらそうではないらしい。魔法なんて使えなかったのにいきなりかなりの魔法が使える様だからって最初はみんな警戒したって話だ。それと、髪の色が変わったとかも言っていたなぁ」



 「髪の色がですのっ!? な、何色にですの!?」



 「悪い、そこまでは聞いてない。風のメッセンジャーでもありゃぁもう少し詳しくわかるんだがな、ドドスの仲間からの話もエルフの渡りからの情報らしいからな」



 渡りのエルフから?


 あたしはすぐにシェルを見る。

 しかしシェルは首を振る。


 「あたしが聞いたのは生まれ変わりだから生き返りの話は誰も言わないわよ?」


 そう言われればそうだ。

 転生者を探しているとなれば通常は産まれた赤子などを探す。


 しかし何かの間違いでティアナの魂が死んだばかりの人間に宿ったのであれば‥‥‥



 「シェル、すぐにでもファイナス市長経由で情報をですわ! 私は『異空間渡り』をどこまで飛べるか試してみますわ!!」



 あたしはそう言ってすぐに準備に取り掛かる。

  

 

 もしティアナだったら!




 あたしはとにかく確かめずにはいられなかったのだった。

 

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る