第30話あたし出来ちゃった‥‥‥
まさか本当に出来るとは思わなかった。
いやだって、こんなの経験初めてだもん。
あたしはその事実に狼狽する。
「ううぅん、凄い、良かったわぁエルハイミ!」
「そうですねぇ、お姉さまったら凄んだからぁ」
「お母様、これで今後は気兼ね無しにイけますね」
何も身に着けていない裸の三人はあたしの前で嬉しそうにしている。
しっとりと濡れた肌、上気している頬、うるんだ瞳。
三人は少し息が早い。
各々がゆったりと肢体を伸ばし脱力している。
それは眺めているだけで桃源郷‥‥‥
いやいやいや、三人を前にしてあたしは頭痛を感じる。
「うっ! ごめんちょっと気持ち悪い!!」
シェルは慌ててこの場を離れる。
多分嘔吐しているのだろう。
「はぁ~、なんか酸っぱい物欲しいですね」
「しかしあの後なのにまだ足らないですお母様」
イオマもコクもそんな事を言っている。
まあ、分からなくはないんだけど‥‥‥
今あたしたちはジルの村で湧き出た温泉に浸かっている。
あの後に試しでやった「異空間渡り」はすんなりとドドス共和国まで行けてしまった。
ここからドドスっていったらどれだけ遠いのか!
まさかと思ってコクの頼みでジマの国も試してみたらすんなりいけるし、更にコクのいた迷宮の最下層も行けたりした。
勿論イオマのいた村にも行けるしこうなってくるとあたしは行った事のある場所へは何処へでも行けるようになってしまったらしい。
なのでもう面倒な旅をする必要もないし運搬だろうが時間だろうが自由自在となってしまった。
その事を知ってお祝い紛いの飲み会をしてしまって今に至る。
「やはり脂っこいものばかりでしたから酸っぱい物、さっぱりしたものが欲しくなりますよねぇ~」
「しかしシェルは情けない、あの程度の酒で戻すとは! お母様あのバカエルフには今後お酒はもったいないので飲ませないでください!」
コクはそう言いながら湯船に浮かぶ桶の中のお酒をくいっと飲んだ。
いや、それってビジュアル的にダメなんじゃ‥‥‥
イオマもコクと一緒にまだ飲んでいる。
どうもイオマもお酒が強くなったようだ‥‥‥
あたしは未だにお酒に弱い方だ。
おかげでお湯につかっていると少し頭痛が始まった。
そろそろ上がろうかなぁ。
あたしがそんな事を思っていた時だった。
「お・ね・え・さ・まぁ~」
立ち上がったあたしにイオマが抱き着いてくる。
「もう上がっちゃうんですかぁ? もっと一緒に飲みましょうよぉ」
「こら、イオマ! お母様から離れなさい!」
しかし豊満な体のイオマに抱きかかえられるあたしは酔いも相まって少しふらふらしている。
「もうお姉さまったら可愛いんだからぁ! このままベッドまでお持ち帰りしちゃおうかなぁ?」
「イオマ! それは許しません!!」
コクも流石に見過ごせなくなり立ち上がりあたしに抱き着く。
ふにっ!
ん?
確かにちょっと大きくなったかなぁ?
お饅頭。
のぼせてもいるのだろうか?
あたしは変な事に気を取られた。
「う~、今日は飲み過ぎた。って、何やってんのよあんたたち! あたしのエルハイミから離れなさいよ!!」
イオマやコクが抱き着いている所へシェルまで参加するものだからあたしも気持ちが悪くなってきた‥‥‥
その後大騒ぎになり【浄化魔法】が大いに役立ったとだけ言っておこう。
* * * * *
「ほんっとうに一緒に入らなくてよかったわぁ」
セキがにやにやしながらそう言っている。
昨日の夜の出来事は既にみんなも知っている。
セキとクロエさんはあたしたちと一緒にお風呂に入らなかった。
セキ曰く「酒臭い温泉なんか入っていられないわよ!」だそうだ。
クロエさんも昨日は開けた瓶にやたらと興味を示し、「こっちは長さが」とか「これは良い太さ」とか変な事を言っていた。
なのでそっちに気を取られ温泉一緒には入ってこなかった。
「と、とにかく『異空間渡り』ですぐにでもドドスにいけると言う事は分かりましたわ! 先ほどティナの町に行ってエスティマ様にもお話してきましたからこのままドドスへ飛びますわよ!」
あたしがそう言うとタルタさんが手紙を持ってやって来た。
「ドドスにいる鍛冶屋ギルドのウスターを訪ねるといい。奴がこの話をドドスの渡りのエルフに話したらしいからな。これを見せればあいつも協力してくれるだろう」
そう言って手紙を渡してくれた。
あたしはお礼を言ってからジルたちに今後について話す。
ダイヤモンドの原石はティナの町のエスティマ様経由で首都ガルザイルの陛下に届ける様伝えた。
こうしておけば変にルートを作られる事も無く、今後のガレントの財源として大いに役立つだろう。
アテンザ様経由だと別口ルートの方が凄くなりそうで怖い。
まあその代わりこのジルの村への支援は十分にするようエスティマ様にはお願いしたから大丈夫だろう。
「さてそれでは行ってきますわ。向こうでの用事が済みましたらこちらにも一度来ますわね」
「分かった、どのくらいかかるか分からないからもし俺がいなくてもボルバさんに言っておくね」
ジルはそう言って手を振ってくれた。
あたしたちは「異空間渡り」の魔法陣を発生させその中へと入って行くのだった。
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