第57話イザンカの古代遺跡
召喚魔法はこの世界の魔獣等を対価によって使役する魔術である。
それは術者の技量、そして召喚される側の利害が一致しないと召喚されないと言ういささか厄介なモノである。
その為この魔術を研究する魔術師は少ない。
異界召喚とは主に低級の悪魔と呼ばれる精神体を召喚するのだがその昔は悪魔だけではなくあたしの師匠のように異界の住人なども呼び寄せていた。
特に異界の住人を召喚する技は異界を渡ってくる時にその者に宿る「ギフト」と言う特典が凄くほとんどチートのようなスキルを身に着けることが多い。
但し召喚される者は場合によっては何らかの弊害がある場合があり師匠などは見えるモノ全てがマナとなってしまいまっとうにこの世界を見ることが出来なかった。
と、学園でも読んだような書物がここイザンカ王宮図書館にもあった。
「流石に歴史ある王宮図書館ですが肝心の悪魔召喚についての記載は乏しいですわね」
「でもお姉さま、召喚魔法と異世界召喚魔法の形態の違いとかそれについての大まかな内容など流石ですよ。ボヘーミャの資料より詳しいです」
あたしとイオマはここで書物を読み漁っていた。
イザンカのどこかにいるレイム様に会う為とそれに関連しそうな古代遺跡の場所を探す事、悪魔召喚について詳しく知る事を目的にこれら莫大な数の書物を見ているのだが‥‥‥
何ここ!?
ボヘーミャの学園よりも書籍が多い!?
しかも内容もずっと濃いものが多い。
その内容も事実や実演からくる貴重な資料付き!
思わず時間が過ぎるのを忘れてそれらを読みふけってしまう。
実はあたしはアガシタ様にいたずらされてギフトで容量の大きくなった魂に枷がかけられている。
「狂気の巨人」との戦いであのお方の力をこの世界で具現化する為にだいぶその枷が外されたがそれと同時に頭で理解できないほどの大量な情報も舞い込んでいた。
それは人の脳みそでは処理しきれない程の情報。
下手にそんなものを理解しようとしたら脳みそがパンクして自我が崩壊する。
しかし徐々に枷が外されていき何とか自我を保ちながらそれらの情報を遮断することに成功したおかげで何となく分かっているのだけどよく分からないと言う変な状態が今のあたしだ。
だが多分この世界では賢者に匹敵する事になるだろう。
今までのあたしの予測や憶測はその情報を遮断しているのに分かってしまうと言う変な状態から来ている。
つまりぼんやりとした未来予測が出来始めているのだ、万全なもではないけど。
そして何故アガシタ様が異界人召喚に関する魔術をレイム様に回収させているかも予測がつく。
それはずばり「この世界の秩序を保つ」為だ。
天秤の女神アガシタ様はこの世界を他の十人の女神たちから託され現在の世界の主神となっている。
そして女神たちが作り上げたこの世界を保つために人間をこの世界の主にして平定をさせると言う事にしたのである。
それがご先祖様を使って世に女神の御業である「魔法」を広め平定させると言う事である。
しかしその秩序に対抗できてしまう余計な力がある。
それが異界人召喚によるギフト能力だ。
神の御業に匹敵するようなそのチートさは場合によってはこの世界の秩序を乱す。
それはアガシタ様にとっては面倒この上ないものである。
だからあの「魔人戦争」を機にアガシタ様はこの世界から「異界人召喚」を無くそうとした。
ただ、完全なる異界召喚を無くす事は出来ず、「異界人召喚」だけをこの世から消し去ろうとしている。
そして残った異界召喚とは主に低級悪魔召喚がそれである。
ただ悪魔召喚はそのほとんどが低級の精神体悪魔の召喚で魔法や魔力を帯びた武具で簡単に撃退できてしまう。
それより強力な物を召喚しようとするとアークデーモンや魔人と言った上級悪魔の召喚となってしまう。
これらについては記載は残るがその方法についてはほとんど失われている。
そう、レイム様の働きによって失われつつあるのだ。
「とはいえ、ここイザンカは話によると古代魔法王国時代の研究施設が数千もあるとの話ですわ。もし悪魔召喚について研究したものがあれば‥‥‥」
「可能性はありますね。そう言えば堕天使たちってアークデーモンや魔人以上だったんですね?」
あの十二詰め所の悪魔たち。
あれが「魔人」以上の悪魔だったとは‥‥‥
「しかし召喚が不十分な場合や融合する依り代によってその能力や力は変わるのかもしれませんわ」
あたしはそう予測する。
だってあんな変態どもが師匠が戦った「魔人」より上だなんて。
事実「悪魔王」と融合したヨハネス神父はかなりの力を持っていた。
「ふう、なかなか良い情報が無いですわね‥‥‥ ん? これはですわ??」
「死者の門」と言う研究をしていた人物の話が載っている。
そしてその「死者の門」を研究していた人物はユエバの町近くに研究所を持っていたとか?
あたしは何となくそれが気になりメモを取る。
ユエバの町近く‥‥‥
そしてふと思い出すのがベムの村、そうイオマの故郷だ。
あの時は寄り道程度だったがあの村にはイオマの師匠となる育ての親の魔術師がいる。
それも召喚魔法に詳しい有名な魔術師。
あたしはイオマに聞いてみる。
「イオマ、あなたの育ての親であり師匠である魔術師はなんという名ですの?」
「はい? ああ、私の師匠ですか? 名をエリッツ=シナモナと言い『魔獣使い』と呼ばれていました。結構あの辺では有名でしたよ?」
「シナモナ!!」
あたしはその名に驚く。
そしてイオマから渡された魔術書の召喚魔法の原理と異空間理論の著者であることにある事を感じていた。
「死者の門」研究者シナモナ。
その者が研究していた召喚魔法や異空間についても本に記載されていた。
もしかしてシナモナと言う人は一族の末裔なのでは?
「イオマ、ベムの村に行ってみましょうですわ!」
「はいっ!? あ、あたしの故郷ですか? と、言う事はいよいよあたしの親代わりだった師匠にお姉さまが挨拶に!? 行きましょう! そして私を幸せにしてくださいね!!」
はい?
いや、そのシナモナさんと言う魔術師にいろいろと聞いてみたいのだけど??
何やら興奮するイオマ。
そしてこのブルーゲイルで早速結納品を買いましょうとか言い出す!?
「イ、イオマ、ちょっと待ってくださいですわ!」
「駄目です! お姉さまの気が変わらないうちに師匠に挨拶に行きましょう!」
暴走を始めて先に街に買い出しに行くイオマをあたしは止められなかった。
「え、えーとですわ‥‥‥」
一人残され王宮図書館で呆然とするあたしがいるのだった。
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