第111話ベイベイの街で
ジルの村でジルたちの結婚を大いに祝ってからあたしとイオマはベイベイの屋敷に戻って来ていた。
「あれ? 隣の敷地とうちの敷地が繋がっている?」
「ああ、隣の建物も購入したのですわ。今の屋敷だけでは部屋が足らなくなってきましたからねですわ」
あたしはイオマに簡単に説明をする。
「と言う事は‥‥‥ またまた奴隷の子たちを引き連れてきたんですか、お姉さま?」
「ええ、そうですわよ?」
それを聞いてイオマは顔に手をあてる。
そして何やらぶつぶつと言っている?
「うーん、実際に台所事情が厳しくなっていたのに屋敷の更なる購入に人員の増加。収入はまだまだ少ないのに一気に食いぶちが増えたって事は‥‥‥」
「??」
イオマは唸りながらデルザを呼ぶ。
「デルザ! ちょっと来なさい!!」
「はい、イオマ様お呼びでしょうか?」
「うわっッきゃぁ! で、デルザいつの間にですわ!?」
屋敷に戻って玄関先でイオマと話しながら入って行き、誰もいないはずのホールでイオマがデルザをちょっと呼んだだけでいきなりすっと後ろに立たれたぁ!?
ベーダじゃなく、デルザだよ!?
メイド長を命じた娘だよ!?
「失礼しました主様、驚かせてしまったようですね。以後気をつけます」
「デルザ、お姉さまが引き連れて来た者は今全部で何人になりますか?」
「はい、イオマ様。全部で三百十四名です。うち働ける者は二百四十名程となります」
簡潔にそして的確にデルザは回答をする。
「うーん、だいぶ増えましたね? アルフェは?」
「はい、アルフェは新しい産業を広めております。ドレイドを使い貴族の男性に施術をするという商売を始めなかなかの好評を得ているそうです。これにより以前の各国の顧客もまた回復しているそうです。勿論、表としてではなく我々の管理下での商売となりますが。これにより裏社会での雇用や資金の流動が潤沢になってきました。ただ、養殖真珠の生産が追い付いていないのが問題ではありますが」
え?
真珠??
施術!?
こらこらこらっ!
一体どんな産業よっ!?
「あー、ものの本で読んだことが有ります。まあ体の中に真珠を入れても害にはならないし、女性を喜ばせるとも書いてありましたね? 私にはよくわかりませんが」
イオマはデルザの説明にその知識を上を向いて思い出している様だ。
そしてそちらの方は運営が順調だとか言っている。
「そうすると運営資金は十二分の確保は出来ていると?」
「はい、表の産業も新鮮な海産物をユーベルトやガルザイルにゲートを使い運搬出来る事となり急速にその市場の確保が進んでいます。イオマ様、それに付いてですがアルフェが鮮度を更に保つために氷魔法を教えてほしいと言っていますが」
え?
確かにゆくゆくはユーベルトやガルザイルの内陸に新鮮な海鮮を売り商業を立ち上げるつもりだったけどもうそこまで行ってるの?
「ベーダはどうしました?」
「はい、ベーダは残り一つのジュリ教を我ら『エルハイミ教』に改教させる為に動いております。現在ベイベイの街は『エルハイミ教』一色に塗りつぶされております」
ちょっとマテ、あたしの名前の宗教にこの街も染まっているって何っ!?
「お姉さま、予想以上の働きです。これならこの国の掌握ももう間近です!」
「イオマ、私は別にこの国を掌握するつもりはありませんわよ!? ただこの国を再教育するつもりでしたのよ?」
「お言葉ながら主様、この様な国は主様の御名の下に支配される方がよろしいかと。国としての体裁でしたらミハイン王国はそのまま残し国教として我らが『エルハイミ教』を浸透させ愚かな者どもを徹底的に教育するのがよろしいかと」
デルザが黒い笑をしている!?
どう言う事?
あたしこの子たちをそんな風に育てた覚え無いんですけどぉっ!?
「それは良いですね、お姉さまの名を浸透させふらちな輩には天罰を与えると。流石お姉さま!」
いや、あたしそんな事指示して無いからっ!
やり過ぎだってばっ!!
「でもこれなら人数が増えても何とかなりますね。デルザ、後でその辺の経営状況をまとめたものを」
「わかりました、イオマ様。ところで本日はこちらに滞在していただけるのでしょうか?」
「ええ、勿論そのつもりです。お姉さまもあなたたちの事を気にしてきてくださったんですからね」
イオマがそう答えるとデルザはその場に土下座し涙を流しながら感謝の言葉を述べる。
「おおおぉぉぉ、主様が私共下等な生物にそのようなお優しくも気にかけていただけるとは! このデルザ感無量にございます!!」
「デ、デルザ、いいから起ちなさいですわ」
あたしはこめかみを押さえながらそう言う。
なんか実家のヨバスティンとササミー見たくなってきたな‥‥‥
と、そんな事を考えていたら用事があってコクたちと別行動をしていたあたしが同じような事をノヘルの港町で受けていた。
あちらではイルスが大々的に「エルハイミ教」を立ち上げ、たまたま行ったあたしをご神体として祭り上げるからあの辺に有ると言われる「テグの飼育場」探索にもの凄く影響が出てしまった。
だって町を挙げての大騒ぎで既に神殿なんかをイルスが町の人たちと協力し合って建てていたからそれはそれは大騒ぎに。
あっちのあたしもこっちのあたしも軽いめまいを感じていたのだった。
* * * * *
「それでイオマ、ここはデルザたちに完全に任せていいのですわね?」
「はい、お姉さまが必要とあれば更なる教育をしてもっと優秀な者たちを育て上げます」
いやいやいや、もう十分だって!
既にあたしが小石を金貨に変えた約七割近くの純利益を出している。
もともと禁じ手だったので順調に行けばあたしは保有している金貨をまた小石に戻して金貨の総数自体が増えない様に内緒でするつもりだった。
まあ長い目での借金返済みたいなもので奴隷の子たちには自立してその分を働いて徐々に返させるつもりだった。
それは決して少ない金額ではないはずなのに。
既に七割近く返済が終わっている。
あたしはその辺の金貨を元の小石に戻すのだけどこれってすぐにでも禁じ手分が返済終わりそう。
「主様、イオマ様。ベーダにございます」
あたしとイオマはこの屋敷での状況を話し合っているとベーダがすっとカーテンの横から出てきた。
この辺はベルトバッツさんの仕込みのせいか隠密に長けている、メイド服姿のままだけど‥‥‥
「ベーダ、どうしましたか?」
「はい、ご報告に上がりました。ベイベイにあるジュリ教は全て『エルハイミ教』に改教が済みました。つきましては次の計画であるミハイン王国の国教を我が『エルハイミ教』にする為に動こうと思うのですがアルフェの力を借りたいと思います」
とんでもない事を言いだした。
ジュリ教がすべてエルハイミ教に改教したですってぇ!?
しかもアルフェと協力してミハイン国の国教をエルハイミ教にするですてぇ!?
デルザの言っていたことは本気だったの!?
「思っていた以上に早く出来ましたね、上出来です。デルザ、アルフェを呼びなさい」
「はい、イオマ様」
またまたデルザはいつの間にかあたしたちの後ろに控えていてた。
そしてイオマの命にすぐにでも姿を消ししばらくするとアルフェを連れて来た。
「アルフェただいま参りました。‥‥‥って、主様ぁっ! あ、失礼いたしました。主様がおこしであればもっとおめかしして来たものを‥‥‥」
「アルフェ、今はひかえなさい。イオマ様お待たせしました」
二人はその場で膝をつき低頭する。
しかしアルフェはあたしをチラ見しながら「ぐふふふふっ」とか言ってる。
大丈夫かこの子も?
「アルフェ、ベーダがベイベイのジュリ教を全て『エルハイミ教』に改教しました。ですので次なる目的、ミハイン王国の国教を『エルハイミ教』とすることにベーダを手伝いなさい」
「わかりました。主様の名がこのベイベイに轟く様全身全霊でやらせていただきます!!」
なんかものすごいやる気を出しているなぁ。
「ベーダ、アルフェ。あまり無理な事はしないようにするのですわよ?」
「はうっ!」
「あ”あ”あ”ぁぁぁぁぁぁっ!」
あたしが二人にそう声を掛けると途端にその場に更にひれ伏して歓喜に打ち震えている。
「ご、ご褒美よ! 主様からこんなお優しいお声を掛けていただけるとはっ!!」
「もう、今のお言葉心にしっかりと焼き付けたわ! 今晩はこれだけで三回は出来ちゃう!!」
本当に大丈夫なのだろうか‥‥‥
「デルザ、屋敷の改築ですが私がやりますわ。アルフェは新しい仕事が増えたようですから」
「なんとっ! 主様自らっ! なんともったいないお言葉! しかしわざわざ主様のお手を煩わせなくても魔道を使える者総動員で致します!」
「デルザ、みんなにそんな無理をさせてはいけませんわ。それに私としてはそんな事は些細な事。合間仕事ですわ」
あたしはもともと屋敷の改築には手を出すつもりだったけどデルザはずいぶんと遠慮するなぁ。
少しはあたしを頼ってもらってもいいのに。
「どうせ片手間で出来ますわ」
あたしはパチンと指を鳴らしここにいる全員を転移させ庭に運ぶ。
そして隣の屋敷とつながった庭を見て手を振る。
途端に奇麗に整地され母屋と離れをつなげる地盤が出来る。
「流石に今から材料を持ってくるのは時間がかかるので創造しますわ」
そして建物どうしをつなげるかのように真ん中にでかい屋敷を作る。
ちょっと奮発して大きめにしたので母屋や離れが付属の様な建物になってしまった。
「流石お姉さまです。あ、でもこれって‥‥‥」
「私の実家に近いデザインにしましたわ。そうそう、大浴場も作ったので後でみんなで一緒にお風呂尾に入りましょうですわ!」
「「「はうぅぅぅっッ!!」」」
あたしは何気なくそう言うとアルフェ、ベーダ、デルザはいきなり鼻血を吹き出し倒れる。
それも盛大に。
「うわぁっ、ど、どうしたのですのアルフェ、ベーダ、デルザっ!?」
あたしは慌てて駆け寄ると三人ともぴくぴくしながらぽつりと言う。
「「「もう何のご褒美なんですかぁ~~~~っ!!!!」」」
「はぁぁ、やっぱりお姉さまって自覚なしにみんなを虜にしちゃいますねぇ。でもこの子たちに手を出してはダメですからね! 手を出すなら私にですよ!?」
困り顔のイオマと三人に回復をさせながらあたしは首をかしげるのだった。
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