第27話イオマの気持ち

 17-25イオマの気持ち



 「なんとかひと段落ですね、お姉さま!」


 

 イオマは七体目となる六号機の素体を完成させた。

 アンナさんはボヘーミャに一旦戻りミスリル合金の調達をしている。


 なので「鋼鉄の鎧騎士」作成はイオマに任せっきりになってしまった。



 「ご苦労様ですわイオマ。あとは稼働テストと外装の装着ですわね?」


 「はい、そこまで行けば後は「適合者」の選定ですね。あ、でもその前に機体の癖を見ておかなきゃ」



 「鋼鉄の鎧騎士」はどうも機体ごとに癖があるらしい。

 どんなに設計図通りに作ってもどうしても機体ごとに誤差が生じ癖が発生する。


 ルブクさんに言わせれば武器だろうと何だろうと多少の誤差が出る。

 ましてや全高六メートルくらいの大型の機体だ、わずかな誤差でもパーツの総点数が多ければその歪みが重なって機体毎の差は出てくる。


 結果それが「癖」になる。



 「現在分かっているのは走行速度、反応性、最大出力の三つが大きく差が出ます。ですのでそこのテストをして外装の装備も変えて行かないと」


 イオマは五号機と六号機を見上げる。


 零号機からこっちイオマはずっと「鋼鉄の鎧騎士」制作に携わっている。

 技術的にも知識的にも今ではイオマの横に並ぶ者はいない。



 唯一規格外だったのが初号機。

 あれは「連結型魔晶石核」を二台搭載し、なおかつ風の魔結晶石まで装着している規格外。


 おかげで魔力は勿論、戦闘センス、反応速度に加え空中戦の概念が無い者には到底扱える代物ではなくなった。


 今までで全うに扱えたのはティアナただ一人だった。




 「いつかお姉さまの初号機を超えられる『鋼鉄の鎧騎士』を作り上げてみたいです」


 イオマは誰にと言う訳でもなくそうつぶやく。



 うーん、時間さえあれば出来ちゃうんじゃないだろうか?

 既にエルリウムγの精製も連結型魔晶石核もイオマが主だって制作している。

 

 そこへ加え積み重ねられた経験がある。

 確実に「鋼鉄の鎧騎士」の第一人者だ。




 「おお、ここにいたか。エルハイミさん、イオマちゃんちょっと良いか?」


 声のする方を見ればルブクさんだった。

 ルブクさんは資料を片手にパラパラとめくってから話し始める。


 「やっぱりなぁ。イオマちゃん、『鋼鉄の鎧騎士』の外装だがアンナさんが戻るまで一時休止だ。材料が足らねぇ。今のままじゃぁ五号機一体すらも仕上げられねえぞ?」


 そう言ってあたしたちにその資料を渡して来る。

 あたしたちはそれを受け取りパラパラとめくってみる。


 確かに足りない。

 ほとんどの部分のパーツがこれでは作れない。

 これはアンナさんが戻るのを待つしか無いかぁ。



 「‥‥‥お姉さま、ちょっと考えが有るんですが、本当に重要でない部分を別の鉱石を使って『エルリウムγ』同様に加工出来ないでしょうか?」


 「イオマ?」


 「つまり普通の鉄鉱石や魔晶石で『エルリウムγ』のようにクロスバンド方式で加工が出来ないでしょうか? 勿論本来のエルリウムγに比べれば強度も耐久性も落ちますが例えば盾や防御上あまり重要性の無い部位などをこの素材などで作り上げては?」



 うーん、試したことないから何とも言えないけどそもそも魔鉱石と違って【錬成魔法】でそこまで簡単に出来るだろうか?



 「とりあえずクロスバンドで組み上げて最後に過熱による焼き入れをしよと思うんです」


 「焼き入れですの?」


 「はい、基本鉱石は金属ですから熱による形状の安定や硬質化が可能だと思うんですよ。残り五体の素体フレーム分は何とか魔鉱石在りますけどその後は‥‥‥」



 そう言えば魔鉱石の鉱脈が尽きたって話だったわね?



 「良いですわ。ではひと段落したので明日にでもジルの村に行ってみましょうですわ。使えそうな鉱石を探してみましょうですわ!」

 

 あたしがそう言うとイオマは嬉しそうに頷く。



 うーん、ジルの村かぁ。

 しばらく行ってないけどあそこなら「異空間渡り」ですぐだしね。



 あたしたちは明日ジルの村に行く事となったのだった。



 * * *


 

 「イオマ、いますかしら?」



 あたしはイオマの部屋に来ていた。

 いつもは工房のイオマ専用の部屋にいるのだが今はその部屋が整備中だ。


 一応ティナの町にはイオマ専用の部屋も準備している。

 あたしは明日の事でイオマに話が有ってイオマの部屋に来ていたのだが‥‥‥


 部屋に入り中を見るとベッドの上に服が脱ぎ散らかされている。

 もしかしてお風呂かな?


 あたしはイオマの部屋に備え付けられている浴室へ行ってみる。



 「イオマ、いますの?」


 「あっ!? お、お姉さま??」



 どうやら当たりのようだった。

 しかし入浴中であるのなら出直そうかな?


 「イオマ、お風呂でしたのね? では出直してきますわ」


 「お姉さま! そ、その、ちょっと入って来てもらえませんか?」



 ん?

 なんだろう?



 なんとなく気になってあたしは言われた通り浴室に入る。


 どうやら湯船につかっているようでイオマはカーテン越しにあたしに話しかけてくる。



 「お姉さまが私の部屋に来るなんて珍しいですよね? どうしたんですか?」


 「いえ、明日のジルの村に行くに当たっていくつか聞きたい事が有ったのですわ。でも入浴中なので出直してきますわ」


 あたしがそう言って浴室を出ようとしたその時だった。



 ばっ!



 あたしはイオマに手を握られていた。

 

 振り返れば全裸のイオマ。

 もう二十歳近い彼女は完全に大人の女性でたわわな胸はティアナまでは行かないけどかなり大きい。

 少女の頃から延ばした髪の毛は既に腰にまで到達していて出る所と引っ込むところの差がはっきりとしていてうらやましいスタイルだ。



 「お姉さま、待って!」



 腕を握られたあたしは思わず固まってしまった。



 ええぇとぉ‥‥‥




 「あ、そ、その久しぶりに胸触ってじゃ無かった、マッサージしてもらえませんか?」


 「イオマ、その胸で私のマッサージが必要とは思えませんわよ?」



 あたしよりかなり大きなそのたわわな胸は思わず生唾を飲み込んでしまうほど美しくやわらかそうだ。


 「その、たまにはいいじゃないですか! シェ、シェルさんにはやっているのでしょう?」


 「はぁ? 何を言い出すのですの? シェルとは何もありませんわ!」


 「でも、キスはたくさんしてるって‥‥‥」


 イオマのあたしを握る手が強くなる。


 

 あー、あのバカシェルのおかげでこじれる。

 あたしは説明をしようとしたその瞬間だった。




 むちゅぅぅぅぅ~っ!!



 

 イオマが裸のまま抱き着いて来てあたしの唇を奪う。

 しかも大人のキスで!!


 

 「むぐぅっ!」



 入っている!

 もろにはいっているぅうううぅっ!


 ダメだってイオマぁっ!!



 しかしイオマはあたしを抱きしめて離さない。

 あたしより長身で力の強いイオマはあたしが抵抗してもびくともしない。



 これってティアナより力強い!?


 だめ、このままじゃあたしぃぃぃぃっ!!



 「くちゃっ、ぷはぁっ!」


 「んはぁっ! はぁはぁ、イ、イオマぁ!?」


 やっとキスから解放されたあたしは肩で息をする。

 と言うか、ちょっと興奮してしまった。

 だってイオマったら意外とキスが上手なんだもん。


 「ごめんなさいお姉さま、でも我慢できなかったんです。ティアナさんの事は仕方ないって思ってもシェルさんやコクちゃんにお姉さまが奪われると思うと、義妹でも我慢できないんです!」


 そう言ってイオマはもう一度あたしにキスしてくる。



 「んむうぅぐぅううううぅぅっ!!」



 だめイオマ!

 あたしこれ以上されたら‥‥‥



 「ぷはっ!」


 しかしイオマはキスするのをやめていきなりあたしから離れる。

 そしてぼろぼろと涙を流しながら座り込んでしまった。



 「お姉さまぁ~、私を側に置いてくれるって約束したじゃないですかぁ~。義妹でも良いから、ティアナさんの後でも良いからずっとそばに置いてくれるって言ったじゃやないですかぁ~。私にはもうお姉さましかいないんですよぉ~。やだぁ、またお姉さまが取られちゃう、シェルさんに取られちゃうよぉ~」



 そう言って泣きじゃくるイオマ。


 「イオマ‥‥‥」


 あたしはイオマの肩にそっと手を乗せる。



 「イオマ、シェルとは本当に唇以外何も許していませんわ。私はティアナ以外誰のモノにもなってはいませんわよ?」


 そう言うとイオマは泣きじゃくりながらあたしを見上げる。


 「でも、シェルさんがお姉さまの妻だって‥‥‥」


 「それは便宜上ですわ。シェルとは何もありませんわ」


 「本当ですか?」


 「ええ、本当ですわ。それに私は今までだってイオマをずっと大切にしてきましたわよ?」


 あたしがそう言うとイオマはまたわっと泣きだしてあたしに抱き着いてくる。



 「お姉さまぁ~!! もう離れちゃ嫌ですぅ~!!」


 「はいはい、大きくなってもイオマはイオマですわね? 甘えん坊さんなのだからですわ。ほら、風邪を引きますわ。【浄化魔法】!」



 あたしは【浄化魔法】をイオマにかけてあげて奇麗にしながら濡れた肌や髪の毛も奇麗にして水分も取り去った。


 イオマに服を着せてイオマのお願いで一緒に寝ることにした。



 あ、勿論変な事はしてないわよ!?



 イオマはあたしの手を握ってすやすやと眠っている。

 全く世話のかかる義妹だ。


 あたしはイオマのおでこにお休みのキスをする。

 なんとなくイオマの寝顔が笑ったように感じた。




 あたしは久しくコクとセキ意外と一緒にベッドで眠るのだった。

  

 

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