第38話ドドスへ帰還


 あたしたちはドドスの街に戻っていた。

 


 「ほんと、便利だな。しかし本当にここからガレントにも行けるのか?」


 「ええ、いけますわよ。多分私が行った事のある場所であればどこへでもですわ」


 あたしはにっこりと笑ってドゥーハンさんにそう言う。

 するとドゥーハンさんはふっと笑って頭の後ろを掻く。


 「ユリシアも大概だったが娘のお前はもっと大概だ」


 「どう言う評価ですのそれって?」


 あたしは少し膨れて文句を言うとドゥーハンさんは笑って歩き出す。

 そして鍛冶屋ギルドへと向かうのだった。



 * * *



 「ウスターさん、そう言う訳でリーリャさんはもう大丈夫ですわ」


 「そうか、それはよかった。しかしお前さんには借りが出来てしまったのぉ」


 ウスターさんはそう言って髭を指で撫でている。

 むう、やっぱりドワーフの髭って立派なのが多いなぁ。

 

 「借りだなんて、そんな事はいいのですわ。私も彼女とは少なからずとも縁が有りましたからですわ」



 もう彼女は四百年の呪縛から解き放たれただろう。

 リーリャとして持ちうる知識を駆使してあの村を豊かにしていくのだろうから。



 「ウスター、それよりこれ買い取ってくれ。今回のも上物だぞ?」


 大体話が終わった頃を見計らってドゥーハンさんが魔鉱石を売りに出る。

 ウスターさんはそれをひょいっとつまんで光にかざしながら見る。


 「ふむ、確かに上物だな。良いだろう、あるだけ買い入れるぞ」


 「うっし、じゃぁこんくらいでどうだ?」

 

 「これっ! ふっかけ過ぎじゃ!」


 そんな事を言い始めて二人は交渉を始めた。

 あたしはそちらはお任せとばかりにお店の中を見る。



 いろいろな鉄製品が陳列されている。

 そしてふと思う。



 「そう言えばここにはミスリル製品って無いのですの?」



 「あれは普通の技術では加工が難しいからの。魔道でも使わん限り相当苦労するのじゃ」


 ウスターさんはそう言いながらドゥーハンさんに代金を支払っている。



 うーん、今まで気にもしていなかったけどそんなに難しいんだ。

 だとするとやっぱりボヘーミャ以外でミスリル合金って作るの難しいんだ。



 あたしがいれば内緒でドドスの街にまで飛べる。

 そしてガリーの村にも行ける。


 ガレントとホリゾンの戦争に加担するつもりはないけど、やっぱり自国の為には協力はしたい。


 直接戦争に加担はするつもりはないけど「ガーディアン計画」の「鋼鉄の鎧騎士」作成には手を貸すつもりだ。


 あたしがティアナの転生者を見つけ出しまた二人で静かに暮らせる場所を守る為。



 「うっし、これで当分は懐が温かいぞ。エルハイミ、飲み行くぞ付き合え! おごってやる!!」


 ドンっと背中を叩かれる。

 まったくこのオヤジはぁ~。


 「何? ご飯? お肉ある!?」

 

 しかしセキが真っ先に反応する。

 

 「そうじゃな。せめてもの礼じゃ。わしからもおごらせてもらうとするかの」


 そう言ってウスターさんも前がけのエプロンを外す。


 確かにそろそろお昼時。

 あたしたちの今回の目的も終わった事だし想定外に魔鉱石も手に入ったし打ち上げ紛いにドドスの美味しいもの食べてから帰る事にしましょうか?



 「ではドドスの名物料理でもいただけますかしら?」


 「任せておけ、では儂の行きつけの店にでも行こうとするかの」


 「なんだよ、ウスターも一緒かよ? でも飲み比べはしねえぞ? お前らに付き合っていたらきりがねえからな!」




 わいわい言いながらあたしたちはウスターさんのおすすめの店へと打ち上げに行くのだった。


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