第39話ティナの町からの緊急連絡
まさかドドスの名物料理がこれだったとは‥‥‥
あたしは目の前に出されたそれを見て思わずフォークを落とした。
「なんでロックキャタピラーなのですの!?」
お皿に盛りつけられているのはロックキャタピラ―のちっこいのが焼かれてソースがかかっているやつだ。
イセエビくらいの大きさで岩肌が一部剥かれている。
「ドドスの近くには山岳地帯が多くての、洞窟なども多いのじゃ。自然とこいつらも増えるのじゃが見た目に反して甘みがあり美味いのじゃよ」
そう言ってウスターさんはそのうちの一つを取り出し更に岩の肌を剥いて白っぽいぷりぷりした皮下肉にかじりつく。
いや、そこそこ美味しいのは知ってます。
その昔迷宮で散々お世話になりましたから。
「懐かしいですねぇ、お姉さま」
「ああ、こいつか。エルハイミだって無理やり食べさせたら食べれたやつだ」
イオマとシェルは意外と平気にそれを自分の取り皿に移して食べ始める。
なんであんたら平気なのよ？
「エルハイミ母さん、人間ってこんなの食べるの？ あたし普通のお肉が食べたい！」
「ロックキャタピラ―ですか？ 食べれるのですか？」
「黒龍様、その様な下賤なモノ黒龍様がお召し上がりにならなくとも」
「しかしクロエよ、物事には何事も経験を積む必要がある。我々の常識以外にも取り組むは黒龍様のご意思なるぞ？」
「俺は塩焼きの方が好きなんだがな」
セキとはあたしも同意見だけどコクは試して食べようとしている。
クロエさんやクロさんもなんだかんだ言いながらそれに付き合うだろうけどショーゴさんはソースのかかっていない所に塩をかけて食べ始めた。
「エルハイミ～なんか気持ち悪いよ？」
「マリア、それが普通の感覚ですわ‥‥‥」
「何言ってやがる。冒険者にとってはこいつは貴重な食いモンだ！ 迷宮で出てきたらきちっと始末して美味しく頂くんだぞ？」
あたしとマリアがげんなりしていたらドゥーハンさんが美味しそうに皮むいてかじりついた。
むう、しかしウスターさんの好意。
一口も食べないわけにはいかない。
あたしは仕方なしになるべく皮の付いた所を見ない様に剥かれている部分を切り取り自分のお皿に乗せる。
「エルハイミ、食べるんだね!?」
「マリア、女には引けない時が有るのですわ！」
あたしは意を決してそれを口に入れる。
ぱくっ！
‥‥‥
‥‥‥‥‥‥
あれ？
「お、美味しい？」
なにこれ？
迷宮で食べた物よりずっとやわらかく甘みも強い。
まるで半生のエビのようだ。
「主よ、ロックキャタピラ―の幼虫は特にうまいんだ。ソースがけも良いが素材の味を味わうには塩焼きが一番なんだがな」
そう言ってショーゴさんは塩を差し出してくれる。
あたしは言われるがままにそれを受け取りかけて食べてみる。
「た、確かに美味しいですわ!!」
意外だった。
あたしの苦手な虫系なのに!?
「どうじゃな？ ドドスの名物料理は？」
ウスターさんはお酒を飲みながらそれをおいしそうに食べている。
確かにこれなら。
あたしは思わず丸々一匹自分の取り皿に取るのだった。
＊ ＊ ＊
「ん？」
お腹もいっぱいになる頃シェルが耳をぴくぴくしている。
あれはエルフのネットワーク、風のメッセージだ。
「そう‥‥‥ 分かった、ありがとう」
シェルはそう言ってあたしに向き直る。
「ファムから緊急連絡。ティナの町でダークエルフが捕らえられたって。セレとミアムが急いでエルハイミに戻ってきてもらいらしいわ」
「ダークエルフですの？ セレとミアムがですの？」
なんだろう？
「風の剣」のファムさんを使うなんてそうとう急用ね？
しかしティナの町でダークエルフって‥‥‥
しかもセレやミアムがあたしを呼んでいるってどう言う事だろう？
「わかりましたわ。すぐに戻りましょうですわ」
あたしたちは急ぎティナの町に戻るのだった。
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