第114話エルフとダークエルフ
「さあ、これで良いんだろう? それじゃぁあんたらの要求を言いな」
あたしたちの襲撃にダークエルフたちは抵抗をやめこの広場に集まって来た。
その数およそ二百弱。
「まずは自己紹介しますわ。私はエルハイミ=ルド・シーナ・ガレントですわ」
「ふん、最近巷で噂の女神様か? あたしは族長のキートス。この村で一番長生きしている」
ダークエルフの長老って聞いてたけど、やっぱり見た目は人間にしてみれば二十歳ちょっとくらいにしか見えない。
「キートス? あの伝説の戦士長、キートス!?」
名前を聞いてシェルは驚く。
あたしはどう言う事か分からずシェルを見る。
「どう言う事ですの?」
「あたしも昔話でしか聞いた事無いけど、その昔エルフの女戦士長でとても強かった者がいたの。その者は女神戦争の折に寝返ってダークエルフになったって聞いてたけどまさか本当にいたなんて!」
「裏切り者ねぇ。まあ、だからお前たちエルフは何時まで経ってもそんなに貧相なんだよ!」
キートスはシェルの胸を見ながらそう言う。
そして高笑いをする。
「せっかく女に生まれてもそんなんじゃ誰にも抱かれないだろう? それにお前らの族長メルだって子供の姿のままだろう? 情けない」
「なっ! 何よ、裏切り者の癖に!!」
高笑いするキートスにシェルはフシャーフシャー言って毛を逆立てる。
どうやら相当胸の事が気になっていたらしい。
「ふん、だからディメルモ様に着けばよかったんだよ。そうすればディメルモ様の加護でこんなに豊満な肉体が手に入る! 男どももより取り見取りって訳さ!」
うっわぁー。
何この肉食系ダークエルフ。
確かに美人の部類に入るけどイメージとしてはダークエルフじゃなくアマゾネスよね?
あたしがしばし呆れているとシェルはそれでも食って掛かる。
「なによ、私たちだって愛されればメル長老のようにおっきく成れるもん! まだ望みが無い訳じゃないもん!! フューム相手ならおっきくしてもらえるもん!!」
そう言ってシェルはあたしに抱き着く。
「シェルさん! だめです!! お姉さまが一人の時は我慢するって約束じゃないですか!!」
「そうです、このバカエルフ! お母様から離れなさい!!」
おいこらオマエラ、いつの間にそんな約束かわしていたのよ?
道理であたしが一人に戻ってからはあんまり引っ付いて来ないと思ったら。
「ふふん、だがお前はその娘に愛されていないのだろう? だからそんなに貧相なんだ! はははははっ! だが我々ダークエルフはディメルモ様の加護のお陰で生まれながらにしてほとんどの女は良い体つきになる! 流石はディメルモ様!!」
「ちょっと待ちなさい。ディメルモ様にお前たちは愛されたというのですか? 元エルフの分際で?」
ゆらぁ~。
コクがなぜか殺気を放ちながらあたしたちの会話に割り込んでくる。
「なんだいこのちっこいのは? お前さんのようなガキは後二百年してから出直しておいで!」
何故そう勝ち誇って喧嘩腰なんだろうね、このダークエルフ。
「お姉さま、ちょっと待ってください。今までの話を聞いているとダークエルフってもしかして暗黒の女神ディメルモ様に『女神戦争』で寝返った理由って‥‥‥」
「はぁぁぁん? そんなの決まっているだろう! 女として生まれたからには男どもを喰いまくる為にいい体じゃなきゃ駄目だろう? ディメルモ様について愛されればこの通り良い体つきになれるってものよ!!」
おいっ!
ちょっとマテ、そこっ!
まさかダークエルフが出来上がった理由ってそれなの!?
「女神戦争」だよね?
神話だよね!?
それが己の欲望で寝返っただぁ!?
「くっ! う、うらやましくなんて無いもん! そんなおっきなの物持っていても邪魔なだけだもん!! それにあたしだってそのうちエルハイミにおっきくしてもらえるもん!!」
涙目で「もん」口調になっているシェルだがまさかエルフがダークエルフ嫌っている理由ってスタイルが良くなったからじゃないでしょうね?
「ははん、どうだかね。とにかく愛されないならお前らは永遠に金床さ!」
「きぃーっ!! エルハイミ、すぐにあたしにもイオマみたいにマッサージしてぇっ! おっきくしてぇぇぇぇぇっ!!」
本気で涙目で懇願してくるシェル。
あたしは思いっきり頭痛がしていた。
「ふん、ディメルモ様が貴様らにお情けをお与えになったとしても私のようにディメルモ様のお子を身籠る事は出来なかったでしょうに!!」
ふんぞり返ってこの会話にコクも参入して来た!?
「はぁ? 嬢ちゃん何モンだ? それにあたしだってディメルモ様のお子は宿したぞ?」
ちょっとマテっ!?
それって本当なの!?
女神様とダークエルフの間に子供が出来たって!?
「なっ!? そんな馬鹿な!! ディメルモ様は生涯唯一私にしかお子を産ませていないと明言なされたのですよ!?」
「はぁ? だからお前は何モンだよ? あたしが生んだあの子はもう死んじまったが、『魔王』として何度も転生しているぞ? そのうちまた転生してこの世界に戻って来るんだぞ? お前の産んだ子供ってのは何処にいるってんだよ? そもそもそんなちんけなガキの体じゃディメルモ様を満足させられなかったろうによ!?」
もうほとんどヤンキーのガン飛ばし状態だった。
もう、なにこれ?
ダークエルフってこんなのばっかなの?
「って、『魔王』がキートスの子供ですってぇ!?」
あたしは頭痛が「痛い」状態なので思考能力が低下していたがここでシェルが悲鳴を上げる。
そして初めて「魔王」と言っていたことに気付くのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます