第132話駆けつけた者
びしっ!
「くはぁっ!」
イオマの振るう鞭があたしの服をはぎ取り全身に鞭痕を残す。
既に上半身はほとんど裸、そして下半身も下着を残すのみとなっている。
体中の鞭の痛みは我慢できるけどそんな事よりあたしは空中に吊るしあげられ首をギリギリと絞められているティアナの転生体が気になって仕方ない。
「こんな状態だというのにまだティアナさんを見ているのですかお姉さまは?」
ぎりっと歯をかみしめイオマはあたしを睨む。
「何故です!? 良いじゃないですか! お姉さまは三人にも別れられる! 一人くらい、あたしが生きている間くらいあたしを愛してくれたって良いじゃないですか! あたしは、私は、ワタシはぁ‥‥‥」
そう言って頭を抱えて狂ったように叫び出す。
『私は蘇った! もうこの心を誰にも傷つけさせない! 今の私も自分の心を守る為お前を私のモノにする!!』
それはイオマの声では無かった。
もっとハスキーな女性の声。
そしてイオマの周りに赤黒いオーラが立ち昇る。
「お姉さま‥‥‥好きなんです‥‥‥愛してます‥‥‥ だから、だから、あたしだけを見て‥‥‥」
そう言って手を上げる。
するとティアナの転生者に巻き付かれていた触手がぐっと動き出す!?
「はぁぐぅううううっぅぅっ!」
意識が無くても苦痛で声を上げるティアナ。
「やめてですわぁ! ティアナぁッ!!」
あたしの悲痛の叫びもイオマは涙を流しながらこちらを見て言う。
「お姉さま、私のモノになって‥‥‥ じゃなきゃ邪魔なティアナさんは消えてもらいます‥‥‥」
「イオマぁっ!!」
あたしが叫ぶがイオマは最後とばかりにその拳を握る。
ぎちっ!!
ティアナの首を絞める触手に力が入る。
あんな小さな子供の首なんて簡単にへし折れてしまう!
あたしはすぐにでも飛び出そうとするもイオマが更に触手と空間閉鎖を仕掛けてくる。
「ティアナぁっ!」
間に合わないっ!!
ざんっ!
ぼとぼと、がしっ!
しかしあとわずかで首をへし折られる所を仮面の少女が触手を切り裂き捕らえられていたティアナを助け出す。
間に合った‥‥‥
仮面の少女、勇者の名もなき少女は生前のティアナの剣を床に突き刺し優しくティアナを介抱して【治癒魔法】をかける。
そして意識を封じる魔法を解除する。
「ううっ? お、おかあさん?」
まだぼうっと目の焦点が合わないティアナの転生者を勇者のあたしは何も言わず駆け付けたアラージュさんたち預ける。
そしてシェルやコクたち、空間閉鎖をかけられたあたしたちをその剣で切り裂き解放する。
「お姉さま、そこまでしてあたしを拒むの? なんなんですかそれはぁっ!!」
「ううっ、イオマ、もうやめなさいですわ‥‥‥」
「くっ、イオマ、私はちゃんとあなたも愛してますわよ‥‥‥ずっと一緒にいてあげるって約束したじゃないですの‥‥‥」
「‥‥‥」
イオマに蹂躙されたあたしも、鞭で痛めつけられたあたしも、勇者のあたしもイオマを見る。
「だめっ、お姉さま、あたしだけを、あたしだけを見てぇっ!!」
あたしたち三人に押し寄せる触手。
しかしそれらは全てあたしが手を下す前にショーゴさんやシェル、コクやセキ、そしてクロさんクロエさんに阻まれる。
どがががががっ!
ざしゅ、ざしゅっ!
ざんっ!
大量の触手は無残にも切り刻まれそして打ちのめされ、引き千切られる。
「イオマ、いい加減にしろ!」
「イオマぁ! よくもあたしのエルハイミにやってくれたわねぇっ!」
「イオマ、もう普通のお仕置きではすみませんよ! お母様大丈夫ですか?」
「全く、ぬめぬめ気持ち悪い!」
「ふん、イオマの癖によくもやってくれやがりましたです! お仕置きでいやがります!」
「ふむ、流石に黒龍様や主様に対してやり過ぎですな、少々きついお灸をすえますか?」
みんなはあたしたち三人お前に立ちふさがりイオマにそう言う。
「イオマぁ~っ! 今なら一緒に謝ってあげるからもう止めようよぉ~」
マリアも前に出てそうイオマを説得する。
「イオマ様っ!」
「イオマ様、もう充分です!! 主様たちもこう言ってくださっているのですよ!」
デルザやベーダもそうイオマに懇願する。
「‥‥‥違う、そう言ってまたみんなであたしをお姉さまから遠ざける気だ! いやだ! お姉さまはあたしのモノ! お姉さまぁっ!!」
イオマはそう叫びさらに赤くてどす黒いオーラを発する。
「「イオマっ!!」」
「‥‥‥」
ダメージを喰らった二人のあたしは自分で回復をして身なりも元に直す。
そして仮面のあたしは注意深くティアナの剣をイオマに向けるのだった。
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