第64話十二使徒
「一体どう言う事ですの、レイム様!?」
「僕にも分かりません。僕の『天成断絶破』はその気になれば『魔人』クラスなら一撃で倒せるはずなのに」
レイム様ほどの力の持ち主のそんな必殺技が効かない!?
あたしは驚愕してもう一度「魔人」を見る。
そして同調をする。
「なっ! これはですわ!!」
「どうしたと言うのです、エルハイミさん!?」
あたしが見たモノは驚きのモノ以外何物でも無かった。
そう、魔人の核にあの「女神の杖」が使われていたのだった!!
「誰かと思えばエルハイミ=ルド・シーナ・ハミルトンでは無いか?」
と、その声はこの中でもするりと耳に入って来た。
慌てて周りを見渡すといやでも忘れないその服をまとった一人の男がいた。
そう、ジュメルの神官服だ。
「一体何者なのですの!?」
「そうか、お初にお目にかかる。我が名はドボルザーク。ジュメル十二使徒が一人。さて、せっかく会えたが残念ながらここでお別れだ、『無慈悲の魔女』よ!!」
そう言ってドボルザーク神父は手をあたしたちに向けて「魔人」に言い放つ。
「『魔人』よ、盟約により彼の者たちを葬り去れ!!」
すると「魔人」は咆哮をあげてからあたしあっちに向かって襲いかかてt来た!
「くっ! こうなったら!! 最大出力『天成断絶破』っ!!」
レイム様はまたまた飛び上がり今度は先ほどとは比にならない程の大きな光の刃を作り出す。
それはまるで天空まで届くのではないかと言うほどの大きな光の剣。
それを一気に「魔人」に対して振り下ろす。
ブンっ!!
カッ!
ドンっ!!!!
「なにっ!?」
誰もが目を見開く。
技を繰り出したレイム様でさえ。
「魔人」はなんとレイム様の振り下ろした「天成断絶破」を両腕で受け止めていたのだった!
「そんな馬鹿なっ! これを防ぐなんて!! 山さえ一太刀、女神様で無ければ防ぐことなど出来な僕の最大攻撃を!!」
しかしこの「魔人」はそれを成し得ていた。
「はははははっ! そうか、お前がヨハネスに手傷を負わせた女神の分身か! だが残念だな、こいつの核には『女神の杖』が使われている。そう、失われたはずの女神の肉体の一部がな!!」
これってもしかして「狂気の巨人」並みなんじゃないの?
あたしはその核となる「女神の杖」の場所を探す。
有った!
それは心臓の所に在り、そして更に気付いた事がある。
この「魔人」沢山の人間の魂を取り込んでいる?
「なんなのですのこの『魔人』は!? 人の意思が、魂があんなに沢山ですわ!!」
「ほう、流石に気づいたか。そうだ、数万となる人間の贄と『女神の杖』を核に古代魔法王国の狂人の研究から召喚した最強の『魔人』だ! さあ、女神の分身を始末しろ!!」
言うと同時に「魔人」はレイム様の「天成断絶破」を弾き口から瘴気を吐き出す。
「ぐわっ! こ、これはっ!?」
「いかに女神の使いとは言え悪魔の呪いは異界の力! さぞかし堪えるだろう!!」
「魔人」の瘴気をまともに喰らったレイム様はその小柄な体のほとんどを飲み込まれもだえ苦しむ。
異界の悪魔の力がこの世界の女神の分身でさえ抗えない苦痛を与える。
「ぐわぁぁぁぁぁぁあああぁっ!!」
それはレイム様の服を溶かし肌を焼く。
ほどなく抵抗していたレイム様はその場に倒れ動けなくなる。
「レイム様ですわっ!!」
「主よ下がれ! くそぉっ! 【爆炎拳】!!」
倒れたレイム様に駆け寄ろとしたあたしの前にショーゴさんが割り込んで襲ってきたアークデーモンに必殺の【爆炎拳】を叩き込む。
流石にこれを喰らってはアークデーモンもその胸を破裂させ体を業火に燃やされながら倒れるも他のアークデーモンたちが一斉にレイム様に襲いかかる。
「ちっ! 女神の分身、これは貸しでいやがります!! はぁぁああぁぁっ! ドラゴン百裂掌!!」
「ひょぉぉぉぉぉっ! 退けい、悪魔ども!!」
クロエさんとクロさんがレイム様に群がるアークデーモンたちをドラゴン百裂掌で弾き飛ばしドラゴンクロ―で切り刻む。
「クロ、クロエ女神の分身をこちらへ! セキ下がれ!!」
なおもドラゴンブレスで「魔人」やアークデーモンたちを牽制しているセキもコクは呼び戻す。
「エルハイミ、やばいよ! どうしよう!?」
「主よ、レイム様がやられた! ここは一旦引くべきだ!!」
確かにシェルやショーゴさんの言う通りだ。
「きゃぁあぁああぁぁぁッっ!!」
「エルハイミぃ! イオマがやばいよっ!!」
イオマの悲鳴にマリアが警告を飛ばす。
あたしはイオマの方を振り向きながら攻撃魔法を打つ放つ。
「イオマっ! くっ! 【竜切断破】!!」
ブンっ
ざしゅっ!!
イオマは【絶対防壁】を張ってエリッツさんやジーナたちを守っていたけど流石に一度に数体のアークデーモンに四方から襲われれば間に合わない。
でも何とかあたしの【竜切断破】が間に合ってアークデーモンたちを一刀両断にする。
「だめですわ! 引きますわ!! みんなこちらへ!!」
あたしはすぐに【異空間渡り】の魔法陣を展開してみんなを呼ぶ。
真っ先にエリッツさんやジーナ、イオマたちを非難させ戦っている他のみんなも下がらせる。
「お母様!」
前線で指揮をとりながら自らもドラゴン百裂掌を放っているコクが叫ぶ。
「みんなすぐに魔法陣へですわっ! ショーゴさん、シェルも下がってですわっ!!」
残りのみんなもレイム様を回収したのを確認してすぐに魔法陣へ入って行く。
最後までアークデーモンや「魔人」を牽制していたショーゴさんやシェルも下がらせてあたしは特大魔法を打ち放つ。
「喰らえですわ! 【爆裂核魔法】ぉっ!!!!」
きゅうぅぅぅぅ‥‥‥
カッ!
どごぼがばぁぁああがぁぁああああぁぁぁんんんっ!!!!
光が収束していって小さな球体になった瞬間あたしがかざした手のひらの向こうに業火と爆炎、爆風が一気に放たれる。
それはアークデーモンたちを塵に変え「魔人」に襲いかかる。
だが「魔人」にはそれが効いていない!?
「『女神の杖』と幾万の贄を捧げた『魔人』だ! 効かんよ、そんな魔法!!」
ドボルザークがそう言ってかざした手の指輪をきらめかす。
「その指輪はですわっ!」
「知っているか? そうだ古代魔法王国の秘宝、『魔法無効の指輪」だ。これで貴様の魔法は通じんぞ? さあどうする『無慈悲の魔女』よ!?」
全くヨハネス神父と言いこのドボルザーク神父と言いジュメルとは本当に厄介な連中ばかりだ。
「ならこうですわ!!」
あたしはありったけの土の壁を【錬成魔法】で作り上げる。
ずももももっももっ!
「こんなものはっ! と、まて、何だこの量と高さはっ!?」
どうせ効かないのは分かっている。
だから魔力を惜しみなく注ぎ込み高さ二百メートル、厚さ二十メートルにも及ぶ土の壁を作り上げてドボルザーク神父と「巨人」を閉じ込める。
そしてその間にあたしも【異空間渡り】の魔法陣へと入って行くのだった。
* * *
「ぐっ! すみませねエルハイミさん‥‥‥」
エリッツさんの研究施設に戻りあたしはすぐに【解除魔法】をかけてから【治癒魔法】をかける。
異界の悪魔の力と言ってもどうやらその原理は魔素を使っているようでそれを分解する魔法、【解除魔法】を使うとその効力が無くなる。
これは十二詰め所の時も同じだった。
そしてアガシタ様の分身であるレイム様にもこの世界での魔法は効くようで【治癒魔法】をかけると焼き爛れた皮膚が治っていく。
「しかし女神の分身をここまで追い詰めるとは‥‥‥ お母様、あの『魔人』どうしたらよいのでしょうか?」
「あたしのドラゴンブレスも成竜じゃないからまだまだ弱いしなぁ。成竜だったら女神様だって焼き殺せるのに!」
コクとセキがあたしの横でレイム様の治療を見ている。
だけどあんなバケモノどうしたら‥‥‥
いや、方法あるけどそれにはあのお方の力を使うしかない。
「お、お姉さま‥‥‥」
「イオマも危なかったですわね。でもあの『魔人』はどうにかしなければですわ‥‥‥」
イオマはあたしの服のすそを掴んでいる。
よほどアークデーモンが怖かったのだろう。
プルプルと震えている。
「い、いえ、お姉さま平気なんですか? そ、その‥‥‥////」
ん?
なんかイオマの顔が赤い。
そしてイオマは熱心にレイム様を見ている。
そう、レイム様のある一部を‥‥‥
「ああになっているんですね、男の人って‥‥‥ あ、でもまだちっちゃいんですよねアレで‥‥‥」
イオマの視線の先をあたしも見てみると‥‥‥
「いやぁ、流石にそうまじまじと奇麗なお姉さん方に見られると照れますよ」
既に回復したレイム様はそう言って笑う。
しかもアレがぴくんと動くからイオマもシェルも思い切り顔を赤くして驚く。
「エ、エルハイミ! う、動いたっ!」
「お、お姉さまぴくってなりましたぁっ!!」
うぉいぃっ!
隠せレイム様っ!
恥じらうならガン見するなイオマにシェルぅっ!!
あたしは慌ててレイム様に近くの布をかぶせるのだった。
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