第105話妖艶なる者
「建築物の中にいた母親と子供たちは全て保護しましたわ。でも残念ながらここにはティアナはいませんでしたわ」
屋敷から急遽転移して来たもう一人のあたしがここの奴隷たちの保護が終わり様子をうかがっていたあたしたちと合流をした。
「やはりだめでしたかですわ。まあ、こんな所にティアナが転生していないのは不幸中の幸いでしょうかしら? こんな気分の悪くなる所にはですわ」
あたしは吐き捨てるかのようにそう言う。
「ねえ、エルハイミ母さんもう手をどけてよ。これじゃぁ何も見えないよ」
「お母様の教育熱心は理解しますが出来れば目隠しをしていただき拘束していただいた後じっくりと教育をしていただければコクは歓喜に打ち震えられます!」
こらこらコク、何処でそう言う事覚えるのよ!
コクとセキの目を覆う二人のあたしは思わず顔を見合わせる。
「二人の私はそのままコクとセキの目を覆っていてくださいですわ。ここは私がやりますわ!」
屋敷から転移して来たあたしはシェルとショーゴさんを引き連れて祭壇に乗り込もうとした。
だがその前に異様な力を感じ思わず足を止めてしまった!
「なにこの感じ!?」
「このプレッシャーは何だ? このザラつきは‥‥‥」
シェルもショーゴさんも感じた様だ。
そしてそれはすぐに祭壇の先ほどのうつろな瞳の少女から発せられている事に気付いた。
「まさか、もう降臨の儀式が始まっていたのですの!?」
「エルハイミ、なんか変な感じ‥‥‥」
そう言っていきなり顔を赤くしたシェルがあたしに抱き着いてくる。
驚き見れば、はぁはぁと息が荒い。
「シェル、こんな時にふざけないでくださいですわ!」
「はぁはぁ、わ、分かってるんだけど変な気分で我慢できないの‥‥‥」
そう言っていきなりあたしにキスしてくる!?
むちゅぅぅぅううううぅぅぅぅっ!
「シェル、主よ今はそんな事をしている場合ではないぞ!?」
ショーゴさんが止めに入る。
「んむぅぅぐううぅぅぅぅっ! ぷはっ! シェ、シェルっ!?」
「んちゅばっ! はーはー、駄目、もっと欲しいの、エルハイミぃ」
だめだこれは、完全にシェルは色欲の気に当てられておかしくなっている。
しかしショーゴさんは平然としている?
あたしも特に平気なのに?
しかしシェルには効果てきめん!?
「エルハイミぃ~」
「このっですわぁ!」
あたしは仕方なくシェルに強い気を当てて気絶させる。
シェルはその場で崩れて倒れるのをあたしは支えて地面に寝かす。
そして祭壇を見ると既に儀式が終わっていてあの女の子に天井から光が注ぎ体がうっすらと光っていた。
途端に周りに何となく甘いようなにおいが立ち込める。
「ははははっ! 『色欲の神』が降臨なされたっ! いいぞぉ、もっとだ、もっと淫欲の気を放つのだっ!!」
高笑いするその神官の真横に一本の剣が突き刺さる。
どすっ!
「はっ!? なんだこれはっ!?」
「年端も行かぬ少女たちに非道を繰り返しそして辱める‥‥‥ 人の業を超えたるその行い、人それを鬼畜と言う!」
見ればショーゴさんは祭壇近くの岩の上に腕組みをして立たづんでいる。
「何者だ!?」
「貴様らに名乗る名などは無いっ! 転身っ! とぉっ!」
ショーゴさんは叫びながら空中に飛び上がり服を弾かせながら異形の兜の戦士に変身する。
そして着地と同時にストライクモードのプロテクターを装着して女の子の上に乗っていた神官たちの首をはねる。
「ひぃぃぃっ! なんなんだぁ、お前はぁっ!」
あっという間に女の子たちを襲っていた神官を切り伏せられ、慌てて「色欲の神」を召喚した少女の後ろに隠れる神官。
ショーゴさんはそいつに向かってセブンソードの刃を向ける。
ちゃきっ!
「ひぃぃぃぃいいぃっ! お、おいお前! お前も神なんだろ!? 早くあいつを何とかしろぉっ!」
情けなくも「色欲の神」を降臨させたその女の子の後ろに隠れながら命令する神官。
しかし降臨させられた女の子の様子がおかしい。
彼女はおもむろにその神官の胸ぐらをつかむと引っ張り口づけをした。
途端にその神官はビクンビクンと腰を震わせ泡を吹いてその場に崩れる。
『ふん、久しぶりに呼び出されてみれば何なんだここは? あたしへの供物は何処だ? 女を寄こせ! 男でも良いぞ!』
そう言ってその妖艶な気を一気に放つ!
「ひゃうんっ!」
「くふっん!!」
祭壇近くに今まで乱暴をされていた女の子たちが悶える。
しかしあたしとショーゴさんには何も起こらない。
「くふぅうううぅん、お、お母様ぁっ!」
「くっ! なにこれぇ、体がぁ!!」
後ろの方でコクやセキにも影響が出ている様だ!?
あたしは急いで彼女の前に行く。
「あなたが『色欲の神』ですの?」
『ほう? なかなか良い女では無いか? お前が私への供物か?』
彼女の身体からは甘い匂いが噴き出ている。
そして年の割にやたらと色っぽい動作であたし近づいてくる。
「主よ!」
「大丈夫ですわ、ここは私に任せてくださいですわ」
あたしはそう言って瞳を金色にしてあたしの存在を開放する。
途端にあたしの体がうっすらと光りその存在が目の前の「色欲の神」を降臨させた女の子を圧倒する。
『なっ!? なんだ貴様!? まさか女神様か!?』
「いいえ、私はエルハイミ。今は天秤の女神アガシタ様の代行を務めていますわ」
彼女はへなへなとその場に崩れとろ~んとした表情へと変わる。
『ああぁっ! 女神様ぁぁっ! どんなにあなた様をお持ちした事やぁ! あなた様の欲望が暴走して出来上がった私をどうぞ好きなだけ犯してくださぁいぃぃぃっ!!』
「へっ?」
そん場に土下座してそしてへつらうかのようにあたしの足にしがみついてきてはぁはぁと荒い息を吐き始めるぅ!?
なにこれぇっ!?
女神様の欲望が暴走した存在!?
え?
なんなのそれ?
まさかそんなのがティアナにかかっていた呪いの正体だったの!?
あたしが思わずドン引きしているとこの女の子は瞳をハートにして更に甘ったるい声で腰を振り始める!!
『もう、好きにしてぇぇえええぇんっ!』
「ひぃぃぃぃっ! ですわぁっ!!」
何こいつぅっ!
危険だわっ!
このままじゃまた大いなる意思に「めっ!」されちゃうぅっ!
『我が女神様ぁぁぁぁあああぁっ!』
「のぴゃぁぁああああぁぁっですわぁっ!!」
とんっ!
『うっ!』
だんだんとあたしの足から太ももにしがみつき始めた彼女の後ろ首にショーゴさんの手刀が落とされ彼女はその場で気を失って崩れた。
「主よ、そう言うのはほどほどにした方が良いぞ?」
「なっ! なんですのそれっ! ショーゴさん!?」
あきれてため息をつくショーゴさん。
「エルハイミぃ~っ!」
「はっ!?」
声のした方を見れば涙目でずかずかとこっちに歩いてくるシェル!?
「あたしが気を失ってる間にまた他の女に手を出していたのね!? 酷いっ! あたしって女がいるのにっ!? 生贄の女の子にまで手を出したのねっ!?」
「はぁ!? な、何なのですのそれっ!? 私は何もしていませんわっ!」
「嘘っ! この子の顔ってもの凄く満足しちゃってる顔よっ!」
シェルに指さされるそれを見れば赤い顔でだらしなくよだれを垂らして「さいっこうぅっ!」と言う表情で気を失ている彼女。
何それっ!?
あたしがそれを見てからシェルに視線を戻すとシェルはプルプルとして涙目であたしに襲いかかって来た!
「もう許さなぁぃっ! エルハイミを今ここであたしのモノにしてやるぅっ!!」
「うっぴゃぁあああぁぁっ! シェルっ、やめなさいですわぁっ!!」
あっさりと「色欲の神」を撃退したあたしたちだったけどあたしの悲鳴は今日も上がるのだった。
「ううっ、今はあの私に頑張ってもらいましょうですわ」
「そ、そうですわね、今あっちに行ってしまうと私たちまでシェルに何かされそうで怖いですわ」
「ではこちらはこちらで楽しみましょう、お母様っ!!」
「「へっ、ですわ?」」
その後こっちのあたしたちも悲鳴を上げる羽目になるのだった。
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