第17話シェルの実家
わざわざエルフの村まで来たけど今回もまた違った。
「まあそう落ちこまないでよ、そのうちティアナを見つけられるから」
おいシェル、なんでお前は嬉しそうなのよ?
隣を歩くシェルはなんか上機嫌だ。
「しかしわざわざエルハイミさんに来てもらい助かりました。これで村の皆も安心するでしょう」
ファイナス市長はそう言うけどあたし同様少し寂しそうだった。
うーん、こう言うのは当人がそうならないと分からない問題よねぇ。
好きだった人が転生しても自分は今の人間で昔の記憶は関係ないって言われたら‥‥‥
よそう。
あたし自身がそうであるように結局それを決めるのは当人なのだから。
しかしあの時にあたしも師匠に告げられずにまだ須藤正志を続けていたらあたしってどうなっちゃっていたのだろう?
もしかして手当たり次第に女の子に手を出した?
そんな事を思っているとシェルがあたしの前に出てきた。
「さてと、エルハイミ。ここからは仲の良い夫婦よ? お父さんとお母さんの所に挨拶に行ってあたしたちがちゃんとやれている事を見せつけるのよ!」
そう言ってシェルはあたしの腕に抱き着く。
「くっ、このバカエルフは!! 後でお母様おっぱいもらいますからね!!」
何故そうなるのコク?
一人でぷんぷん怒るコク。
「へへへへぇ~」
シェル一人だけ上機嫌で有ったのだった。
* * * * *
「あらお帰りシェル。エルハイミさんもいらっしゃい。どうぞ中にお入りなさい」
「たっだいまぁ~!」
「お義母様、お邪魔しますわ」
シェルの実家に行くとお義母様が出迎えてくれた。
「シェールぅぅっ! よく戻って来た! お父さん寂しかったぞぉ!! む、馬の骨! よくも可愛い娘をっ ぐはぁぅっ!!」
お義父様がリビングに入ってきてシェルに抱き着いて喜んでいたがあたしを見ると罵倒を始めたけど最後まで言わさずお義母様が風の魔法で吹き飛ばす。
本当に大丈夫なのだろうか、お義父様‥‥‥
「あらぁ~あなたぁ、ファイナス長老の前ですわよ? うれしいのは分かりますが自重してください」
‥‥‥お義母様怖い。
「お母さん、昔からお父さんには容赦ないからなぁ」
壁にめり込んでいるお義父様をシェルは引っ張り出して助けている。
これってあたしも【回復魔法】とかかけた方が良いのかな?
「相変わらずのようですね。シェルの両親は本当に仲が良い」
良いのか?
これって仲が良いっていうのか!?
思わずファイナス市長を見るあたしたち。
「エルフの習慣って分からないな‥‥‥」
「うん、僕ユミナが相手で良かった」
人族の感性はきっと同じだと思うわよ、あたしも!
「それで、お母さんもうじき生まれるの?」
「そうねえぇ、もう一年近く経つからそろそろよ」
お腹をなでているお義母様。
「あっ、動いた」
そう言って喜んでいらっしゃる。
そんなお義母様のお腹にシェルも顔を近づけ撫でてみる。
「へぇ~、あたしもこうだったのかな?」
「勿論よ、ただあなたはもっと元気だったからきっと男の子だってお母さんもお父さんも思っていたんだけどね」
そう言ってお義母様は笑う。
その後あたしはお土産を渡したりお義父様に回復魔法をかけたり、シェルの実家のもてなしをみんなで受けるのだった。
* * *
「さて、エルハイミさん、シェル。あなたたちには今後万が一の為に『魂の封印』の方法を教えておきます」
ファイナス市長はそう言ってあたしとシェルを呼ぶ。
「ファイナス市長、あたしもですか?」
「ええ、もともとはエルフの秘術の一つですからね。それにエルハイミさんは魂が見える。封印が上手く行ったかどうかがすぐにわかりますからね」
そう言ってファイナス市長はシェルのその秘術について教える。
それはエルフならではの方法だった。
「命の木」を持つ彼らは精神と肉体のつながりに対して非常に優秀だ。
なのでその感覚を元に精神に働きかける精霊を使って魂自体に枷をかける。
まだ生まれたての子供などは特にその枷のおかげで魂の中から出てくる過去の記憶を引き出せなくなる。
すると魂自体が今の肉体の記憶に包まれその人物として生涯を過ごす事となる。
つまり魂のコーティングがされるのだ。
よほど深層心理まで深く入らない限りそのコーティングが破れる事は無い。
これは「魔王」の魂であっても同じらしい。
「流石にエルフの秘術ですわ。確かにこうすれば魂から何かのきっかけでにじみ出る前世の記憶は呼び起こせないですわ」
「うーん、あたしにそんなに上手く出来るかなぁ?」
「シェルは真面目にやりさえすれば優秀な精霊使いなのですからしっかりと覚えなさい。そしてエルハイミさんのサポートが有れば確実に『魔王』の『魂の封印』も出来るでしょう」
ファイナス市長はそう言って引き続きシェルに精神の精霊魔法を教える。
まあこの辺はシェルに覚えてもらうしかないけどね。
なんかティアナの転生を探す旅のついでに「魔王」復活の予防もさせられている気もしなくはないのだけど、仕方がない。
あたしはエルフ豆の煮つけを食べながらショーゴさんと酒を飲んでへべれけになっていくお義父様を見るのだった。
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