第72話探索
昨日は実家で羽を伸ばした。
まあパパン含めいろいろとあったけどササミーもヨバスティンも理解してくれたから大丈夫だと思う。
多分‥‥‥
そしてまた探索の為にここイザンカのエリッツさんの研究施設に戻ったのだが‥‥‥
「どうやら当たりのようだね?」
エリッツさんはそう言ってライム様と真剣に話している。
相変わらずお酒をちびりちびり呑んではいるけどライム様にしては真面目な表情だ。
「一体どうしたのですの?」
「ああ、お帰りエルハイミ。エリッツがね弟子たちの系譜を探っていたらどうやら当たりに行きついたようなのよ」
弟子たちの系譜?
あたしは首を傾げその話を聞く。
それはエリッツさんのご先祖様の時代からなるお話だった。
古代魔法王国時代が終焉を迎えそれでも魔術師たちは研究を続けた。
それはこのシナモナ一族も同じだったがそこへ弟子入りしていた人物たちもいたそうだ。
一族以外の研究者はシナモナ一族を師と仰ぎその基礎理論をもとに各々に研究を続けた。
その中に異世界召喚に特化した者がいた様だ。
「つまりこの人の研究施設が一番厄介になりそうと言う事ですわね?」
「そうね。レイムの置き土産の中には無かったものだわ。しかし明確に異世界召喚を研究していたとなればその子孫たちも」
「場所は何処ですの?」
あたしの質問にライム様は地図の一点を指さす。
「イージム大陸最北端ノヘルの港町ね」
ノヘルの港町。
ここはイージム大陸とノージム大陸を行き来する為の港町。
一般的にこちらでの交易は少ないと聞いている。
それもそのはず「魔人戦争」の時には悪魔の軍団がここから攻め入って来たのだから。
実際当時はホリゾン帝国より先にこの辺が被害を受けたらしい。
まあルド王国にはこっちの方が近いもんね。
「そうするとここへ行くのですわね?」
「そうね、今のところ一番厄介になりそうだものね」
ライム様はそう言って立ち上がる。
そしてあたしを見て言う。
「すぐに行きたいわ。エリッツのお陰で大体の場所は見当がつく。行けそう?」
「ええ、大丈夫ですわ」
あたしがそう言うとライム様は頷きその場で空間に亀裂を発生させる。
そして何も言わず入って行くのだった。
* * *
「ここがノヘルですの?」
来てみて第一印象はさびれた町並み、人通りの少ない大通りとまるで今にも消えてなくなりそうなほど活気がなく過疎化が進んでいるかのようだった。
「噂通りね。まだ『魔人戦争』から立ち直っていない聞いていたからね。最近では聖騎士団が来たお陰で更に酷くなったって聞いたわ」
ライム様は周りを見渡す。
そして酒場を見つけると先ずはそこへ行く。
あたしは一瞬冒険者ギルドか何かを探そうかと思ったけど確かにここまでさびれた町だとギルド自体があるかどうかも怪しい。
あたしたちは仕方なくライム様について酒場に入る。
中に入ると一斉に店の中の人々があたしたちに注目する。
だが興味を持つのもわずかな間、また死んだ魚のような目をして下を向く。
「なんなんですかね? こんなにも活気がない町は初めてですよお姉さま」
「辛気臭いわね」
イオマもシェルも誰に気兼ねする事無くずばりと言う。
「取りあえず席に着こうかしら?」
ライム様はそう言って近くのテーブルに腰を下ろす。
自然とあたしもみんなも腰を降ろすけどよぼよぼのウェイターさんがやって来るまでにだいぶ時間がかかっていた。
「とりあえずお酒、子供たちにはジュースでも飲ませてやって」
そう言ってライム様は金貨をそのウェイター渡す。
ウェイターさんは驚くもその金貨そすぐに懐へしまう。
それを確認してからライム様はそのウェイターに話し始める。
「この近くに古代の遺跡か何かない? もしくはこの町に昔からいる魔術師を知らない?」
それを聞いたウェイターさんはいきなり青ざめる。
そして周りにいて聞き耳を立てていた他の客にも動揺の色が見受けられた。
「あんた、一体何をするつもりだ? もうこの町には何もないんだぞ‥‥‥」
それは悲鳴に近い声だった。
「別に何もしないわよ? むしろそれらが面倒を起こしているなら力になれるかもよ?」
ライム様のその言葉にそのウェイターは思わず唾を飲む。
そしてしばし目線を泳がせてから決心をして話し出した。
「本当なんだな? 国も領主もそして冒険者さえ見捨てたこの町を助けてくれるんだな?」
それは藁をも掴むかのような願いの言葉だったのだ。
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