第12話精霊都市ユグリアへ
あたしたちのいるゲストハウスにアンナさんが来た。
「へぇ~、ルイズもだいぶ大きくなったわね」
シェルはアンナさんが抱っこしていたルイズちゃんを見ている。
「あぶぅうう、なかいぃ みみぃ~」
ルイズちゃんはシェルのぴくぴく動いている耳を見て喜んでいる。
シエルは何となく耳をルイズちゃんに差し出す。
「あぶぅ!」
ぱくっ!
まさか咥えられるとは思ってもいなかったらしくシェルは思わず変な声を出す。
「ひゃぁぁああっぁぁんっ!!」
「なんて声出していやがるですこのバカエルフは!」
「クロエ、放っておきなさい。このエロフの事です、赤子に耳を舐められたくらいで感じているのでしょう。全く見境の無い」
「ああ、でもお姉さまに舐められるのなら私だって…‥‥ お姉さま、舐めてください!!」
あきれるクロエさんにコクもため息つきながらジト目でシェルを見ている。
イオマはあたしに抱き着いて来ようとするし相変わらずだ。
「それでですねエルハイミちゃん、次にエルハイミちゃんに戻ってきてもらった時にいよいよ師匠を元の世界に送り届ける事になります。四連型のコントロールはエルハイミちゃんでなければ正式には稼働しませんからね」
四連型魔結晶石核に封じられている精霊王たちはあたしと契約をしている。
メインのアイミはティアナを主人とするようになっているが四連型に対してはあくまで仮のリーダー的存在で正式な稼働はあたしでなければ出来ない。
なので人間大の大きさを異界への転送ともなればあたしで無いと出来ない。
「分かっていますわアンナさん。多分数日中には戻れると思いますわ」
あたしの答えにアンナさんは頷きそして聞いてくる。
「エルハイミちゃん、『魔王』とは一体?」
「人類史の前に存在したと言われている女神と人との半神半人の子孫だそうですわ。エルフの村に伝わる伝説だとか」
それを聞いたアンナさんはしばし考えこむ。
そして頷く。
「道理で聞いた事が無いはずですね。人類史以前とは。しかしそれが転生をすると言うのですか?」
「聞く限りですとそうらしいですわ。以前ファイナス市長も私の魂について懐疑的であったわけですわ」
あの時はまだ異界の転生者と言う事はみんなに話していなかった。
そしてアガシタ様に聞くまであたしの魂自体がギフトを受け取っていてこの世界でも破格の魂容量を保有していると言うのは知らなかった。
お陰で今では同調すると魂の質や状態まで見て取れる。
だからティアナかどうかもすぐわかるのだ。
「とにもかくにも先ずはエルフの村に行ってからですわね?」
あたしのその言葉にアンナさん頷くのだった。
* * * * *
「ううっ、本来ならお姉さまについて行きたいのにぃ!」
「イオマちゃんは『鋼鉄の鎧騎士』七体目の作成が有ります。『エルリウムγ』の作成はイオマちゃんで無ければ上手くいきませんからね」
翌日ゲートでアンナさんにそう言われイオマはしょぼくれる。
あたしは仕方なくイオマの手を取って励ます。
「未だ北では戦争が続いていますわ。ジュメルの巨人もまだまだ駆逐しきれていませんわ。『鋼鉄の鎧騎士』はガレントの守りの要、そして連合軍の主戦力。今はイオマたちに頼るしかないのですわ」
「お姉さま‥‥‥ そう言うなら唇に『チュー』してください!!」
「なっ! イオマそれはダメっ! エルハイミの唇は私のなんだから!!」
「いつからシェルのもになったのですの!? 全くもう、イオマ」
あたしはそう言ってあたしより背の高いイオマを引っ張る。
そして頬に口づけをしてあげる。
「お姉さま♡!!」
「頑張ってくださいですわ」
イオマはそれはそれは嬉しそうにデレデレとして「はいぃぃ~♡」とか言っている。
「姉さま素でやるからなぁ」
「ほんと、何時もおっぱい押し付けてきたりもするからなぁ////」
なんか向こうでカルロスとバティックが言っている。
あたしはそれを無視してゲートの起動をする。
「行ってきますわ!」
光のカーテンの向こうに見送りのアンナさんとイオマが見えなくなっていくのだった。
* * *
「来たか。待っていたぞエルハイミ」
ゲートで移動したらすぐに声をかけられた。
「ソルガさん、お久しぶりですわ」
あたしは声の主、エルフの戦士長ソルガさんを見る。
どうやら折檻の後遺症は無い様だ。
「ソルガ兄さん、久しぶり!」
「シェルよ、お前あのメッセージはなぁ‥‥‥」
ソルガさんは苦笑いしている。
一体どんなメッセージを送ったのよ?
あたしはシェルを見るとニンマリと笑っている。
こいつ‥‥‥
「早速ですまないがファイナス長老に会ってもらいたい。いったん『緑樹の塔』に向かってもらうがかまわないか?」
「ええ、かまいませんわ。そうそう、メル長老様たちは?」
「お忙しい様だ。何せお子の世話など久しいからな‥‥‥」
最古の長老たちはご先祖様の子供を身籠った。
そしてそれは人とエルフの混血児、ハーフエルフ。
エルフの村では忌み嫌われその滞在でさえいとまわれる。
ましてや村のリーダ格である最古の長老たちだ。
それが四人ともハーフエルフを産んだとなればそれは大騒ぎになる。
今は外界の動向を注視する為に村の外に出ていると言う事となっているが実際は内緒で子育てに追われているのだ。
「そう言えばご先祖様はあの時ライム様が近づいたとか言っていましたわね?」
「流石にあの人でも赤子相手にどうこうはしないでしょう? まあ魔法王の方は半殺し必須でしょうけどね」
シェルはそう言ってけらけらと笑った。
とにかくまずは精霊都市ユグリアに行ってファイナス市長に会わなければだ。
あたしは物珍しそうに大きな幹を見上げている弟たちを連れて「緑樹の塔」に向かうのだった。
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