第119話ティアナ強奪
「【四十八式滅魔光波】!!」
あたしは魔人をも一撃で滅する魔光波を放った。
「【絶対防壁】!」
同時にイオマも【絶対防壁】を展開するがあたしの放った魔光波はそれをたやすく貫通する。
ばきんっ!
「なっ!? 私の【絶対防壁】があんなにも容易く!?」
多少威力は落ちてもあたしの【四十八式滅魔光波】はそうそう防げるものでは無い。
だってこれはその気になれば女神でさえ傷つけられるほどのモノだ。
ぼすっ!
「ぐろろろろろぉぉっ!」
魔光波はあっさりと魔人を貫きそこから魔人はぼろぼろと崩れて行く。
イオマは倒れる魔人から飛び降り重力を操りながらふわりと地面に降り立つ。
「うふふふふっ、流石はお姉さま。魔人なんて一撃なんですね?」
「イオマ、いい加減にしなさいですわ! さあ大人しくするのですわ!!」
流石にあたしにはかなわないのがこれでわかっただろう。
まだイオマとしての意識が強いようだしこのまま押さえれば‥‥‥
あたしがそう思った時だった、またしても地面に魔方陣が浮かび上がる。
その数十。
「うふふふふふ、魔人じゃ駄目ならこれでどうです? さあ来なさい、私の可愛い『鋼鉄の鎧騎士』たちよ!!」
ずずずずずずぅ‥‥‥
何と魔法陣から出てきたのはあたしたちが作り上げたあの「鋼鉄の鎧騎士」たちだった!?
「これはどう言う事ですのイオマ!?」
「うふふふふぅ、お姉さまを守るために万が一の時は私の命を使ってでもこの子たち『連結型魔晶石核』に仕込まれた封印を解いて私の配下にする仕掛けが役に立ちましたね? 今の私ならあふれ出る魔力でこの子たちを一度に従えられますよ!!」
イオマはそう言って手を振ると「鋼鉄の鎧騎士」たちは動き出した。
本来なら操作する魔法騎士が乗らなければならないはずなのに!?
「イオマっ! やめなさいですわ!!」
「駄目です、お姉さまこそ早く私のモノになって下さい! そしてあたしを愛してっ!!」
迫りくる「鋼鉄の鎧騎士」たち。
苦労して作ったこの子らを破壊するわけにもいかずあたしは空間事この子たちを拘束しようとする。
しかし!
ばっ!
ばばっ!!
「なんですのっ!?」
あたしの予想以上の動きを始める!?
「鋼鉄の鎧騎士」たちはおおよそ人が耐えられないスピードで動き出しあたしを捕まえようと殺到する。
「あははははっ! 今のこの子たちは魔力をふんだんに使え私の意思で動いています! 人が乗っていないからその性能を百二十パーセント引き出せる! 限界を解除しました! さあ、お姉さまこの子たちを壊さずどこまで逃げられますか!?」
手加減しながら壊さない様に適度に鋼鉄の鎧騎士たちを転ばせたり防壁を張ったりたまに衝撃波を当てるけど流石に一度に十体も相手にするのはきつい。
と、そう言えば残り二体は!?
いや、一体はティアナ専用機であたしの手元にいる。
もう一体は‥‥‥
「二号機がいないですわ?」
「ああ、あの子は使い物になりませんよ。昔のまま。連合に渡してあげた弱いままの子ですからね」
そうすると「鋼鉄の鎧騎士」はここにいる十体がイオマの支配下でいる訳だ。
伏兵がいないなら!
「おいたが過ぎますわ! フルバースト!!」
あたしは力を使って精霊たちに影響を与える四連型魔結晶石核フルバーストと同じ空間を作る。
するとあたしを中心に緑色の光が広がりこの空間を包み込む。
それは連結型魔晶石核を搭載する「鋼鉄の鎧騎士」たちにも影響を及ぼす。
「本来ならば異空間にある魔晶石核にはフルバーストでも影響を与えられませんが今の私のこのフルバーストは一味違いますわよ! この世界も異空間も関係なく影響を与えますわ! さあ、精霊たちよ私の言う事を聞くのですわ!!」
ぶわっ!!
更に緑のキラキラした光を強く発してあたしは「鋼鉄の鎧騎士」たちの動きを封じる。
「なっ! 異空間にまで影響をっ! 流石ですね、お姉さま!!」
動きを止めた鋼鉄の鎧騎士たちの上にあたしは降り立ちイオマを見る。
「さあ、終わりですわイオマ。今度こそ大人しくするのですわ!」
「うふふふふっ、それでこそ私の愛したお姉さま! 強くて美しい。でも私のモノになってくれなきゃ嫌ですよ?」
それでもイオマは妖艶にほほ笑みまだどこかに余裕が有るようだ。
「イオマ様! 主様!!」
「デルザですか? ケガは無いよですね? まあそんなやわには鍛えていませんからね。そうそう、お前たちの報告のあった『デグの飼育場』で見つかりましたね? どうですか? お姉さまに褒められたいですか?」
「イオマ様、それは勿論ですがこれは一体‥‥‥」
デルザは頬を染めながらあたしをチラ見する。
そして「鋼鉄の鎧騎士」たちも見る。
「すべてはお姉さまの為です。私はお姉さまを心より敬愛しています。私の命がどうなってもかまわないくらいに」
「イオマ様!」
「イオマ様、主様っ!!」
遅れてベーダとアルフェもこっちに来た。
よかった、大丈夫とは思ったけどみんな無事で。
「主よ!」
「なんなんでいやがりますか!? 『鋼鉄の鎧騎士』にたくさんのモンスターでいやがります! はっ!? 黒龍様!!」
「むう、ショーゴ殿、主様はお任せした! 黒龍様!!」
どうやらアークデーモンも片付け終わったみたいでショーゴさんたちも来たがクロエさんとクロさんはコクたちのサポートに回る。
「あら、もう皆来ちゃいましたね? 流石ですね。でもお姉さま、私の言う事聞いてくれないとティアナさんにいけない事しちゃいますよ?」
「イオマっ! それはどう言う事ですの!?」
あたしは耳を疑った。
今イオマは「ティアナ」とはっきり言った。
するとイオマは異空間から赤い金属部品を引っ張り出す。
「お姉さま、これなんだかわかります?」
「それは一体何なのですの?」
よくよく見れば鎧か何かのパーツ?
イオマはそれを指先でもてあそびながら嬉しそうに言う。
「ふふふふっ、分かりませんよね? これはアイミのパーツですよ、あ、勿論アイミの本体は無事ですしちゃんとアイミにも了解を取ってあります。でもこのパーツ自体がアイミの一部。そしてこれには上級精霊の欠片が含まれている」
確かにアイミの心臓部には上級精霊イフリートがコアとなった魔石があるけど合金ミスリルとアンナさんの作った素体といろいろが融合して突発変異を起こして機械人形となった。
特にアイミは「巨人戦争」後の回収で元の機械人形のパーツが核となった為他の子たちと違いボディーその物が「アイミ」である。
その一部をどうしていると?
「うふふふふふふっ! お姉さまでも分からない!? やったぁ、初めてお姉さまの予測を上回った!! アイミは魂の帰属をティアナさんの魂にしています、つまりこれを使えばだれにティアナさんが転生したか見つけられるのですよ!」
「なっ!?」
これは完全に盲点だった。
確かに魂レベルでアイミはティアナと関係を持っている。
たとえそれが転生しても。
そしてアイミの体は全てにその要素が含まれる。
だから何らかの方法を使えばあたしのように魂を見なくてもティアナを見つけ出せる!?
「ベーダたちの教え子は優秀ですよ? 既に私の命令でその子供は保護しています。あ、大丈夫。騒がれると面倒なので意識は封じたままですからティアナさんは何が起こっているか分からないはずですよ?」
「イオマ、あなたは何時から‥‥‥」
あまりの事にあたしは絶句していた。
「魔王」が覚醒する前からイオマはティアナを見つけ出していた?
そして保護してあたしに内緒にしていた?
「お姉さまがいけないんですよ? 三人に分かれられるお姉さまが。だから一人くらい私のモノになってくれても良いじゃないですか? このイオマという女性が生きている間くらい私のモノになってくださいよ!!」
そう言うイオマの表情は真剣そのものだった。
「本当はすぐにお姉さまに教えようかと思いました。でも三人に別れたお姉さまと一緒にいるうちに私の思いはどんどんと強くなっていった。お姉さまは女神を超える力を持っている。だったら一人くらい私のモノになってくれたって良いじゃないですか!!」
真っ直ぐと見据えるその瞳には涙があふれていた。
「嫌なんです、私はどんどん歳をとっていって可憐なお姉さまに愛想つかれるのが。嫌なんです、たとえティアナさんであっても若い体でまた愛してもらえるティアナさんとお姉さまを見るのが。だから、だからっ!」
「イオマ‥‥‥ それでもあなたは私の大切な『妹』ですわ!」
あたしはそう言うが同時に三人に分かれて一気にイオマを囲む。
「『妹』として私はあなたを愛していますわ!」
「それに私はずっと一緒にいてあげると約束しましたわ!」
「そうです、たとえティアナが見つかってもイオマはイオマ、ずっと私たちと一緒ですわ!!」
あたしたち三人のエルハイミはそう言いながら一気にイオマを空間事拘束する。
そしてイオマを捕まえる。
「「「イオマっ!」」」
あたしたち三人が叫んでイオマを抱きしめようとして近づいたがイオマはまるで朝霧に消える靄のようにその場から消えた。
「違うんです、『妹』としてではなく一人の『女』として愛して欲しいんです。お姉さま」
全く違う場所からイオマは姿を現す。
それは異空間渡りであり、今のイオマは呪文を唱えずにそれを使える。
「幻覚だったのですの?」
「イオマっ!」
「私を出し抜けるなんてですわ」
正直驚かされた。
何時の間に幻覚と変わっていたのだろう?
もともと召喚士であるイオマは異空間についても精通している。
そして今は「魔王」となりその技にさらに磨きがかかっているのだろう。
「お姉さま、これ以上何を言ってもお姉さまは私を『妹』扱いします。私のモノになってください。でなければティアナさんは返しません」
そう言ってイオマはその場から姿を消す。
「イオマっ!」
「くっ!? 何処ですの!!」
「駄目ですわ! 異空間にまで幻覚を張っていますわ! このイオマたちは全て幻覚ですわ!!」
あたしたちは慌ててイオマを探すけど見事に幻覚を駆使してイオマは姿をくらます。
「「「イオマぁーーーーっ!!!!」」」
三人のあたしたちは同時にイオマの名を叫ぶのだった。
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