第54話知らない間に
冒険者ギルドで衝撃の話を聞きあたしは実家に一旦戻る。
「あらあらあら~、エルハイミやっと戻って来たの? コクちゃんとセキちゃんも一緒に行っちゃうからお婆様寂しかったわよぉ~」
わざとよよよとした態度をとって見せるママン。
しかしコクとセキが来ると直ぐに元気を取り戻し何をしに行っていたのか聞いてみる。
「という訳でお母様が神様あつかいにされています」
「あらあらあら~、でもエルハイミだしファーナ様の生まれ変わりとか言われ始めているしそれでもいいかしら~」
はぁ?
ママン、何言いだすのよっ!?
あたしは思わずママンを見る。
ママンだってファーナ信教の信者だったはず。
それが実の娘がファーナ様の生まれ変わりとか言われたら大変でしょうに!?
だがそんな事はお構いなしのような感じだ。
良いのかそれでも!?
ママンは只々ニコニコしている。
「あらあらあら~、でもエルハイミが本当にファーナ様の生まれ変わりでもエルハイミはエルハイミ、私の娘よ~」
どうやらそう言う事らしい。
ママンはママン、あたしは娘と言う事らしい。
そんないつものママンにあたしは何となく気が緩んでしまった。
しゅばっ!
くるくるくるぅ~
ざしゃっ!
「ぅうぉ帰りなさいませぇ、エルハイミ様ぁっ!」
「おおぉっ! 女神様降臨でございますぅっ!!」
またまたササミーとヨバスティンの二人だ。
あたしはため息をついてこの二人を引き起こす。
「何度言ったら分かるのですの? そう言う事はやめなさいですわ。ただでさえ街中で『エルハイミ教』とか言われて変な目で見られているのにですわ」
「ぃいいぃぇえぇっ! エルハイミ様は女神様にございますぅっ!」
「そうでございます、我が神よっ!」
またまた頭を地面にこすりつけている二人にあきれる。
と、ここで変な事を思いつく。
「ササミー、それにヨバスティン、まさかあなたたち二人が街で変な事を言いふらしているのではありませんの?」
まさかこの二人のせいで「エルハイミ教」とか言うのが広まっているのじゃないだろうな?
「めっそうにもございませんっ! すべてはエルハイミ様のお導きぃっ! 近郊のファーナ神殿は既にエルハイミ様を女神ファーナ様の生まれ変わりと認定しておりますぅ!! 女性の身でありながら女性同士でお子を設けるなど豊作と愛の女神ファーナ様以外に成し得ませぬぅっ!!」
ヨバスティンがとんでもない事を言い始める。
「そして女性としては子宝の象徴、豊胸の女神としても女性たちの間で希望の光としてエルハイミ様は崇拝されておりますぅっ! 現にティアナ様も義妹イオマ様も豊かなお胸になられておりますぅっ! これぞ女神の御業! 流石にございますエルハイミ様ぁっ!!」
次いでササミーも聞き捨てならない事を口走る!?
ちょっとマテ、なんかこれって‥‥‥
「サ、ササミー、ヨバスティン、もしかしてそれってユーベルトとガルザイルの間にあるあのファーナ神殿から噂が流れ出しているのですの?」
「流石わエルハイミ様ぁっ! ご明察の通りにございますぅ!!」
あうっ!
そ、それって絶対ファルさんのせいだ!
って、まさかエネマ司祭までそれを認めている!?
「既にこのユーベルトにあるファーナ神殿はエルハイミ教へと名を改定しておりますぅ! ああ、我らがエルハイミ様の偉大さがとうとう皆に知れ渡っておりますぅ!! なんと言う福音! なんという幸福!! シークエルハイミ!! 我らが女神に栄光あれぇっ!!」
うっとりとあたしを拝み倒しながらヨバスティンはそう言い涙を流す。
ちょっとまてぇぃっ!!
あたしとティアナが挙式あげたあのファーナ神殿があたしの名前の宗教に鞍替えしてんの!?
やめてよしてやめてよしてぇっ!!
あたしとティアナの美しい思い出がぁッ!!
アワアワと頭を抱えてしゃがみ込んでしまうあたしの肩をシェルがポンと叩く。
涙目のあたしは肩越しにシェルを見る。
するとこいつは‥‥‥
「もうエルハイミ教で決まりね、早速あたしも入教するから胸大きくして!」
「シェルぅぅぅっ!!」
思わずあたしはそう叫ぶのだった。
* * * * *
「それであの二人はどうなったのですか、お母様?」
二日後冒険者ギルドから連絡があってバティックとカルロスの二人についての調査報告書が送られてきた。
今現在あの二人はチオートさんが言っていた通りユエナの街にいるそうだ。
そしてそこで依頼を受けていてクエストをこなしているらしい。
勿論ファルさんも一緒でどうやらこの三人がエルハイミ教の宣伝もしているらしい。
あたしはこめかみを押さえていた。
二人の今までの依頼を見ると初心者冒険者ではなくほとんど上級冒険者のこなす仕事ばかりだった。
しかしあの二人は難無くそれらをこなしているらしい。
あたしはその事をユミナちゃんに教えた。
するとユミナちゃんは恋する乙女の顔になって頬を染め、ぽわぁ~んと虚空を見つめ「流石カルロス様、ステキ♡」とか言っている。
なんとなくパパンが親指立てカルロスが同じく親指を立てて歯をきらめかすビジュアルが浮かんでくる。
あの親子ってば‥‥‥
でもまあ元気にやっている様だし今後は冒険者ギルド経由で二人の行動も分かるようになるだろう。
とりあえずこっちの心配はこれで落ち着いた。
ママンにもこの事は話したしパパンが戻っても来ても今後は二人については調べやすくなっただろう。
あたしは読み終わった報告書を机に置いて息を吐く。
「さてと、これで良いですわね。そろそろ私たちもイザンカに行かなければですわ」
そう言ってあたしはいよいよイザンカに行く事とするのだった。
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