第86話 アキンドの商館

「ソウシ様、アキンド殿から商館の落成式に来て頂きたいと招待状が来ております。」

「何時だ?」

「今日の正午にございます。」

「随分急だな、まあ昼前にアリスと一緒にお出かけするとしよう。」

「はい、ソウシ様。」


アキンドは神殿街の一等地に商館を建てている。ウチの城の近くだから見たことあるんだけどな。アリスがお着替えしてきた。薄桃色のかわいいお姫様ワンピースだ。馬車を使っていこう。商館の前に停まりアリスの手を取り優雅に降り立つ。


「だんさん聖女はんよう来て下さりました。ありがとさんどす。」

「立派な商館じゃないか、エレベーター付きとは奮発したなアキンド。」

「ワテも大森林でエリス神殿の御用をつとめる一番の商売人でっさかい、これくらいのものを建てまへんと恰好つかんのですわ。」


アキンドの商館は商館と言うより一言で言えば総合デパートみたいな感じだった。10階建てで1階には店舗は一切なく交易所になっていて大口の取引が成される、各階層は各種一般客が訪れる専門店になっており最上階は展望レストランになっていた。地下は3階まであり馬車置き場と大倉庫になっていて、ここから方々へ手代が買い付けや行商に行くのだろう。この世界ではだいぶ近代的な建物だった。


「ほう、大森林で一番に成れたのか?手代も多く抱えているようだな。」

「ワテの昔の商売仲間を番頭に呼びましてな、弟子をとって手代として大森林にようさん呼び寄せたんですわ。ここの商売が大きゅうていくら人手があっても足りまへんのや。」

「そうか商売繁盛で何より、これは俺からの祝いの品だ。」


商館の外にはスキルで創った高速輸送馬車が置いてあった。馬はアリスのかぼちゃの馬車と同じでただの飾りだ。実際は自動運転付きの大型貨物自動車である。だが見た目には大きな幌馬車にしか見えないのだ。そう創ったのだから。


「これは!だんさんの乗ってはるかぼちゃの馬車と同じ仕組みの馬車でっしゃろ?これほどのものをワテに下さるんでっか?」

「ああ、商売人ならどうしても高速で輸送しなければならない時もあるだろう。そんな時に使うと良い。」


「ワテ震えが止まりまへんで、これはお金積んで買えるものやあらしまへん。これほどの宝を下賜くださるとは・・ありがたく頂戴して大事に使わせてもらいますわ。ほんまおおきに。」


招待客のほとんどは各区長達だった。大事な取引先だからそうなるのだろう。祝賀パーティーが開かれ沢山の御馳走が並んでいた。俺の所に引っ切り無しに挨拶に来るのをアリスがにこにことあしらってくれている。


会場を見回すと、高そうではあるが品の無い服装のガラの悪い客が居た。何やらアキンドに絡んでいた。


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