第120話 勇者は無銭飲食常習犯
食事が終わった勇者一行はエレベーターに向かい乗り込もうとした。そしたらウサギ獣人の蝶ネクタイをした店員が駆け寄ってきた。
「美味しかったのサ、また勇者が来てやるのサ。」
「お客様、お勘定がまだお済みでございませんが。」
「僕たちへの歓迎であろう?今までどこでもそうだったのサ。」
「お食事の代金を頂戴したいのですが。」
「勇者一行からお金を取ろうと言うのか?」
「何を言ってるんですか貴方は?お・・。」
「そこをどくのサ!ドン!」
ラインハルトは激昂してウサギ獣人の店員を突き飛ばしてしまった。ウサギ獣人のウエイターは壁にぶち当たりぐったりとしている。腐っても勇者だ、普通の人間の力ではない。
ガヤガヤヒソヒソと回りのお客がざわめきだす。
「なんだあの4人お金も持ってないで食事に来たのか?」
「あれって無銭飲食って言うやつじゃないの?」
「今店員を突き飛ばして強引に出て行こうとしてたぞ!」
「治安の良いこの街で犯罪とかやーねー怖いわー。」
「野蛮人だ!野蛮人!」
そこに連絡を受けたアキンドがやってきた。
「みなはん毎度おおきに。お騒がせしてしもたお詫びに一本つけますんでご堪忍くださいや。」
「いよっ、サカイさん太っ腹だねー。」
「流石大森林一の商人さんだ。イキだねぇ」
「御使い様からの信頼も厚いらしいぞ?」
「サカイさん、娘さんを僕に下さい!」
「あの子まだ5歳よ、このヘンタイ!」
パチパチパチ!
お客は喜んで静まった。目を覚まさないウサギ獣人のウエイターはクロサメ病院に運ばれていった。勇者一行は取りあえず事務所に通される。
「それでどないしたんや?ウエイトレスのリスミカちゃん。」
「しゃ、社長。こ、この4人が、む無銭飲食をして、そ、それを止めたたウエィターのう、ウサギリさんをを、つ突き飛ばしてて、出て行こうとしたんですすっ。わ、私怖くててて。」
「そら怖かったなぁ、もう大丈夫やで。これホットミルクココアや、飲んで落ち着きなはれ。あとで一緒に病院行こな。」
「は、は、ははい。」
リス獣人のリスミカ(15歳)というウエイトレスの女の子はガタガタと震えている。食事に来て暴力を振るうお客など初めて見たのだった。トラウマだろう。
「あんたら、いい大人が4人も揃うてなにしてくれましたんや?お金無いなら食べにこんといてくれまっか?ワテのとこの大事な店員まで突き飛ばしてくれたんやてな、今衛士はん呼びましたさかいまっといておくんなはれ。」
「この僕を衛兵に突きだすだと!僕は勇者なんだぞ!」
「それがどないしましたんや。飲み食いしてお金払わんかったら無銭飲食でっしゃろ?泥棒と一緒ですやんか。親御はんに常識習わなかったんでっか?」
「僕が泥棒だと!」
勇者ラインハルトは腰の聖剣エスクカリバーを抜き放った!
勇者しか抜けないと言う伝説の聖剣だ。ゴルドステ教会が設えた岩に刺さった伝説でも何でもない見た目だけは豪華なただの剣をひっこ抜いてきた代物だ。
するとそこへ衛士達が駆けつけてきた。衛士長が告げる。
「無銭飲食及び店員への暴行容疑で4人を逮捕する!」
「なんだと!僕は勇者なんだぞ!」
ラインハルトは怒りで錯乱し、持っていたエスクカリバーを上段から袈裟がけに振るった!
キンッ!
衛士長の剣が一閃しエスクカリバーを跳ね返した!
「手向い致すか、公務執行妨害も追加だ。取り押さえろ!」
「「「はっ。」」」
ガタンドスンバタンどんがらがっしゃーん!
4人はあっという間に捕縛されて衛士詰所に連行された。詰所には仮牢があって取り調べを受けたり、監獄行きを待つ犯罪者はそこに一時的放り込まれるのだ。
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