第101話 国王に会おう①
次の日、キャンプ飯を朝食にして食べてから、アキンドに案内されて王宮に出向いた。王宮の門をくぐるとそこには王様以下臣下がずらりと平伏していた。アキンドめやらかしたな!外ではなんですからと謁見の間に通された。しかも上座だ、謁見の間の上座と言ったら玉座しかない。いいのか?
見た感じ王様は40がらみで白髪交じりのおじさんだ。兎に角着ているものがすごい。王冠には数々の宝石がちりばめられた跡がある。全部ほじくりかえして穴だらけだった!王笏には宝石など一つも嵌まっていないただの棒だ。マントは当て継ぎだらけで毛羽立っている。右の靴からは裸足の親指が見えていた。
王妃様は苦労でやつれており赤ん坊をタスキ掛けに背負ってバラの造花を持っている、薔薇の内職とかしているのだろう。王太子は白いタイツを履いているのだが全体が薄汚れて灰色で膝にはうさぎのパッチワーク、もっこりした股間の所は黄ばんでいた。お姫様はモンペを履いていて手拭いを腰から下げ、裏の畑でひと仕事してきたような出で立ちだ。みかん箱にサバ缶1つを乗せて麦飯を持って囲む食卓が似合いそうな、とってもとーっても貧乏そうな王家の家族だった。
宰相以下略。王弟も大臣もみんな貧乏で似たような恰好だった。
「御使い様、ようこそわがアシヤ王国へ。話はおおよそそこのサカイどのから聞き及んでおります。配下の方からも映像も見せてもらいました。私たちはゲスイナーとジョクフに騙されていたのですね。」
「あんなペテンに引っかかる様じゃ国民の命を預かる国の統治は心もとないぞ?その昔、詐欺師に騙されてあっという間に滅んだ国を俺は知っているんだよ。」
「お恥ずかしい限りです。先王の残した王女つまり私の姉上なのですが、難病を患ってしまい先王が娘可愛さに結んだ契約なのです。」
「気持ちはわかるが契約は契約だ、代が変わっても反故には出来ない。ところで、そのもんぺ姿のお姫様が借金のカタにもらわれるっていう王女か?病弱と聞いたが割と元気そうだけど?」
「いえ違うのです。契約時には病弱な姉上が王女であり、国に莫大な金銭を貸してくれた上に姉上の難病を治す手伝いをしてくれるとジョクフを連れて申し出たゲスイナーに、先王が感動し騎士爵に叙して姉上が快癒した暁には降嫁させると約束したのです。」
「うん、それで?」
「ところがあのゲスイナーめは先王が先年亡くなりますと、契約書には王女としか書いてないから姉上ではなく私の娘の方の王女を嫁に寄越せと言ってきたのです。」
「ああ、そういう事か。最初からそのもんぺのお姫様が狙いだったわけだ。ペテン師の常套手段だな。」
「はい、ところがゲスイナーの本性が見えてきた娘は嫁ぐのを嫌がりまして。ですが国の借金の高は膨れ上がるところを知りません。仕方なく私の代で返済期限の延長を条件に騎士爵から男爵に爵位を上げたのです。」
「そんな爵位上げて延長などと言う自転車操業長くは持たんよ。ところであいつは爵位を得る前は何者だったんだ?」
「先王の代に帝国の方から流れてきた商人だったとしか存じませぬ。」
「だんさん、もしかして帝国の送り込んだ破壊工作のスパイなんではないでっしゃか?」
「まあな、あり得なくもないが行動が馬鹿すぎる、あれじゃ普通はスパイは務まらん。兎に角証拠はそろったしどの道スパイは見つけ次第殺処分だ。俺の配下のメイドールたちがそろそろ一味を捕縛して戻ってくるころだ。アシヤ国王として処分をどうするか決めておくように。」
「はい。御使い様。」
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