第12話 奇跡の外科医ブラックシャーク①

コカトリスに襲われて怪我をしたもふもふウサギさんを連れて遺跡後の神殿に戻ってきた。


「ドールハウス!診療所!」


俺のイメージのせいで、断崖絶壁の岬にあるもぐりの診療所みたいなのが出て来た。MPは5000程、中は最新の器具も全部そろっていてすぐ使える。勿論ドールオプションでもぐり外科医とかわいい子供助手の衣装に着替えている。ドールマスターに抜かりはない。


「アリス君、緊急オペの準備だ。」

「はい、先生。麻酔の準備をします。」


エルリーナは手術室の前の待合室で待機だ、俺は簡易無菌室のカーテンをくぐると、ドールキープで保存していたウサギさんを出して診察する。ウサギさんは片眼をつむり耳は折れて痛々そうにしている。今治してやるからな。


「ふむ、腹部の裂傷が特に酷いな、額の擦過傷は軽いから後回しだ。」

「先生、麻酔が効きました、バイタル安定しています。」

「腹部から始めるぞアリス君、メス。」

「はい。」

「止血鉗子。」

「はい。」

「ガーゼ。」

「はい。」

「先生、汗を。」

「頼む。」



シーンとした診療所にはカチャカチャと手術器具の音だけが聞こえている。アリスは手際よく並べた器具を渡してくれる。さすがアリスだ。エルリーナは心配そうに手を組みエリス様に祈りながら手術室の外から見守っていた。


「出血は止まったな。アリス君一旦洗浄してくれ。」

「分かりました。」


アリスが丁寧に洗った後、中を観察し異物や出血がないか確認する。


「縫合針、糸は3号で。」

「はい。」


ちくちく・・・ちゃっちゃっ、パチン!


「アリス君、額は消毒してバンソウコウを貼っておいてくれ。」

「はい、先生。」


アリスはX (ばってん)の字にしたバンソウコウをウサギさんの額に貼り付けた。良く分ってるなアリス。絵的にバンソウコウはそうで無くちゃいかん。かわいい。

俺は他に怪我がないか最終確認し、アリスに後の処置を任せ手術室を出た。


「ご家族の方、患者は峠を越えました、もう大丈夫ですよ。」

「へ?ご家族?」


エルリーナはきょとんとしている。ま、アリスのようにはいかんわな。


「いや、何でもない。ウサギさんは無事だ、すぐ良くなる。」

「御使い様はお医者さんもできるのですね、凄いです。」


エルリーナは目を輝かせてみているが、この世界に医師免許など無い、つまりこの世界の医者はみんなもぐりなのだ。折角建てた診療所はこのまま一般解放しようか。

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