第110話 アシヤ区長の話
「ソウシ様、アシヤ区長からテレビデンワ通信が入っております。如何なさいますか?」
「ん?何かあったのか?出よう、繋いでくれ。」
「はい、畏まりました。」
通信室ではなく俺とアリスの居住スペースにあるスクリーンでお茶を飲みながら応対する。通信設備はイエデンワからテレビデンワにアップグレードして各区に配備しているよ。
アシヤ区長は服装がまともになっていた。後ろに補佐のように立っている元王太子と元宰相も同じだ。区長補佐と呼ばせている。旧アシヤ王国は区としては広いので統治に補佐が沢山必要なのだ。3人はパリッとしたスーツみたいのを着ている。まだ黄ばんだ白タイツを履いて居たらテレビデンワをプチッとしたところだ。俺あの不格好な王子タイツが大っ嫌いなんだ、見るのも嫌。エリス神殿街の傘下の区長があまりみすぼらしいのもマズいからね。
王侯貴族時代より平民の区長の方が暮らし向きが良くなるとか中々興味深い。
「アシヤ区長、アリシアも巫女になってもんぺを脱ぎ捨てて溌剌としている。区長の姉の療養も順調だから心配は要らないよ。」
「御使い様、何から何まで誠にありがとうございます。」
「ところで、何かあったのか?」
「はい、突然申し訳ございません。諸国連合の件で少々問題が発生しまして、ご判断を仰ぎたく連絡した次第でございます。」
「問題とは?」
「はい、旧アシヤ王国が負担金の件で諸国連合の盟約に違反してると、連合本部から通告があったのでございます。」
「今までの盟約通りに兵站の負担金を支払うのではいかんのか?」
「はい、連合の負担金は国土面積に由来するのですが、区となった旧アシヤ王国分では不足だと。エリス神殿街全体の面積の総和で算出し直しそれを負担しろと言ってきました。莫大な負担金になります。」
「それは詭弁だ、盟約は約束した時点の状況に由来する。状況が変わったからと勝手に内容を変更していたら契約にならんだろ。だからこそアシヤ区になったとしても旧王国時代の約束をお義理で守ろうと言ってるのだからな。アメシストから聞いたが盟約の規約のそんなことは書いてないはずだが、違うか?」
「違いませぬ、ですが負担金を無視すれば制裁を加えると通・・。」
「無視しろ。そんな理不尽な脅しに屈するな。だいたい連合とは小国の同士の諸国連合で大きな帝国に対抗するために組んでいるんだろ?その帝国が侵攻しようとしているのに仲間をいびって結束を乱してどうするよ。何勘違いしてるんだか。」
「それですが、まだ連合は帝国の侵攻作戦を知りませんので。」
「ああ、たまたまうちが掴んだ情報だからな。帝国の機密だろうし連合本部が知らなくても不思議ではない。だが連合はあくまで帝国の方を向いて無ければいけない組織だろうよ。」
「はい、その通りでございます。」
「約束通りの負担金で気に入らなければ連合から脱退すると伝えろ。規約に書いてある通り脱退金を即刻支払うと言ってやれ。」
「はい、畏まりました。」
俺は通信を切った。連合はまとまりが悪いとか前にアリスが言ってたな。
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