第140話 エリス神殿祭②


隣の屋台ではマーメイドたちがキャッキャウフフで“名物サハギンの姿焼き”を焼いていた。焼けてくると手や足がビクッってなるのがホラーである。お客はマーメイドとお近づきになりたいけど怖いので遠巻きにして見ているようだ。勇者が買いに行った!


「いらっしゃいませー!」

「サハギンの姿焼き1つ下さい。」

「はーい、ありがとうございまーす!」


それを皮切りに客が我も我もとなだれ込んでいく。


俺は買ってきた勇者を体育館裏と言う名の屋台裏に呼び出す。


「兄さんよォ、それどんな味がするんだい?」

「え?あ、はい。魚の味がします。」

「魚の味ィ?足とか手の部分の味がか?」

「そうです。スズキの様な淡白な味です。」

「顔とか胴体の魚部分の味は?」

「人間の味です。」

「うそつけぇ!」

「はい、嘘です。」


あの嘘つきキツネ獣人やろう騙しやがって。これは人間の部分の味も嘘の可能性があるな。俺は狐に誑かされてしまった!


「お客もひと段落してきたから交代で休むように。」

「「「はい、ソウシ様。」」」

「ちょっと他の様子見てくる。アリス行こう。」

「はい、ソウシ様。」

「「「行ってらっしゃいませ、ソウシ様。」」」



大スタジアム劇場に行ってみると、ダクネを先頭に35(みこ)人の巫女がステージで歌って踊っていた。35人で揃って回転くるくるすると袖が広がってとてもきれいだ。スタジアムは超満員、熱狂してまるで国民的アイドルグループの様だ。街民的アイドルの誕生だな。


「ミコミコダンス!ミコミコダーンス!エリス様にィお仕えするゥ私たちィ~♪御使い様にィぞっこんなのォ~♪巫女のお胸がときめいてェ~♪キュンキュンいっちゃうゥ~♪ミコーミコーダアアンス!」


「「「「「ウオォォーーーーッ!」」」」」

「ダクネちゃーん!こっち向いてー。」

「ダクネちゃん!とおおぉっても可愛いぃ!」

「ダークーネッ!ダークーネッ!」

「ダクネー!かわいすぎるぅぅー!

「ダクネちゃん!お股広げて逆立ちしてー!」


「あいつらこっぱずかしい歌うたいよってからに。」

「クスクス、いいではありませんか。楽しければ。」

「それにしてもダクネ人気だな、最後のは〆とくか。」

「だめですよ、ソウシ様。お祭りなんですから。」


運営委員会をのぞいたらアキンドが忙しそうにしていた。商工ギルドの長だからそうなるわな。見なかったことにしよう。


「だんさん、素通りは無いでっしゃろ。」

「ちっ、見つかったか。何か不足はないか?」

「そうでんな。ハナビが好評でおましてな、ちと少ない気がしますわ。」

「わかった、倍増しておく。」


それから各区の催し物を一通り見て回っていった。




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