第141話 エリス神殿祭③


俺たちはサル獣人区の猿回しを見たり、ハリネズミ区のダーツ大会で遊んだり、イタチ区の鎌鼬の見世物小屋に入ったりと、遊び回っていたらあっという間に時間が過ぎていた。


エルフのりんご飴とダークエルフのぶどうジュースとイヌ区のホットドッグをメイドール達の土産に買ってシロヒョウ区のかき氷を食べながら帰ってきた。



そしてクラーケン屋台へ戻ってきた。裏手の仕込みをするところで表の客には見えない。祭りは夜更けまで続くのだが各区の催し物は昼の間だけと決まっている。夕方から一般の屋台が出て書き入れ時になるそうだ。


「「「お帰りなさいませ、ソウシ様。」」」

「これはお土産だ、みんなで食べな。」

「「「有難うございます。ソウシ様。」」」



「さあクラーケンのいかたこ焼きを売り切ってしまおう、今から半額セールだ。」

「「「はい、ソウシ様。」」」


「おいしいタコ焼きふーわふわ。うーまいイカ焼きかーみかみ。はいはいみなさんきいとくれー。出血大サービスの半額セールだよー。そこの奥さん買わなきゃ損だよー。」



「ガーネット、クラーケンも無くなったしそろそろ時間だ、撤収せよ。」

「はっ、畏まりました。ソウシ様。みんな撤収にかかれ!」

「「「はい。」」」



「近衛が到着しました。ソウシ様。」

「じゃ帰ろうか。」


近衛をゾロゾロ引き連れた俺たちは祭りで練り歩く仮装行列ぐらいにしか見えないだろう。近衛の紙装甲なお色気たっぷりの衣装は大好評で祭りに来た人を大いに喜ばせた。


城に戻るとメイドール達を下がらせ休ませた。祭りは夕方から酒も振舞われ宴もたけなわになるだろう。


一休みして夜になってから俺とアリスは城のバルコニーから花火を見ていた。この世界には花火の技術は無かった。花火が上がるたびに遠くからおおーとどよめきが聞こえてくる。エリス神殿はライトアップされ黒山の人だかり。正月の初もうでみたいな混雑だ。俺はあそこにアリスを連れて飛び込む気はないがな。


「アリス、浴衣とてもにあってるよ。」

「嬉しいです、ソウシ様。」


アリスは帰ってきてお着替えしていた。桔梗の花の柄をあしらった薄紫色の浴衣だ。同じ柄の団扇も持っている。アリスの絹のような金髪は簪で纏め上げられていた。浴衣は女を美しく見せる、アリスだと超絶美しい!かわいすぎて死にそう。


俺はアリスのあご先をそっと上に持ち上げる。アリスはゆっくりと目を閉じた。


「チュッ。」

「チュッ。」



2人の祭りの夜は更けて行った。




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