第29話 小さな魔獣対策③
俺の手のひらの上には、今朝アリスに作ってもらったきゅぴぃを型どった奇麗なオレンジ色のクッキーが紙に包まれて乗っている。
「御使い様、これは?」
「この形うさぴぃちゃんですかっ?奇麗な色ですねっ。」
「これはクッキーと言うお菓子でな、アリスの発案で今朝焼いて作ってもらった。何はともあれ、まずは食べてみろ。」
「「はい、いただきます。」
もぐもぐ。もぐもぐっ。
「こ、これは!サクサクと口の中でほろりと崩れる触感、鼻腔に抜けるすがすがしいフルーティな野菜の香り・・・これは甘ニンジンですか?とても甘くて美味しいです。」
「これとっても美味しいですっ、お紅茶が欲しくなりますね、エルリーナ姉さまっ。」
「姉さま?」
「あ、いえ、はい。ダクネちゃんに慕われたようでして、昨日からそう呼ばれております。私も妹のように可愛く思っておりますもので。」
「実の姉妹のようで仲睦まじくて微笑ましいですね、ソウシ様。」
「そうだな、昨日までいがみ合っていた部族が仲良くなる。良いことだ。これもエリス様のお導きだろう。」
「「はい、エリス様には感謝してもしきれません。」」
2人は天に向かって手を合わせ、エリス様にお祈りし始めた。
◇
◇
「話を戻すが、そのクッキーどうだ?」
「はい、これは子供達が群がりますね。きゅぴぃちゃん様から目を逸らすのに効果的かと。これを物品コーナーで販売なさるおつもりですか?」
「いや、これは参拝に来た子達に5枚くらい包んで無料で配るつもりだ。買えない子が居たら可哀そうだろう?聖女のお菓子ってことでささやかな贈り物さ。箱詰めした土産用のものは別途販売してもいい。大人は欲しけりゃ自分で買えばよろしい。」
「聖女様が考案されたお菓子、美味しさもさることながら、ご利益がありそうです。」
「この美味しさっ、これ絶対人気が出ますよっ。お紅茶も一緒に出しましょうか?エルリーナ姉さまっ。」
「そうだな、飲み物もあったほうがいいだろう。よく気が付いたぞダクネ。」
「ではお紅茶も一緒に出しましょう、ダクネちゃん。」
「いえいえそれほどでもっ。えへへっ。」
ダクネは照れ屋だな。明るいしエリス神殿の良い巫女になるだろう。我ながら良い買い物をした。買ってないけどな。
「これも全部アリスのおかげだよ。」
アリスを抱き寄せ、なでなでする。
「聖女のお菓子だなんて、アリス恥かしいですぅ、ソウシ様ぁ。」
アリスは恥かしさに身もだえ、俺の腕の中でくねくねして身体をこすりつけてくる。するとアリスの体温が上がって暖かくなってくる。俺の心も温まってくる。俺を見上げてくるアリスの香しいフローラルな吐息が俺の顔にかかる。とてもかわいい。
幸せだ、可愛いものに囲まれてとても幸せだ。エリス様、俺はこんなに幸せでいいのでしょうか?
幸せで良いのですよ、ソウシさん。
「ん?じゃまあそういう事でやってみてくれ、神殿の備品庫に補充されることにしといたから。」
「はい。畏まりました。」
「はいっ、畏まりーですっ。」
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