第49話 情報伝達②

「エルリーナ、エルフは弓が得意だしオークくらい近づく前に討てるだろう?」

「はい、この大森林でもオークは割と出没するポピュラーな魔物で、私たちエルフは集団で襲われたり奇襲でも受けない限り1対1では負けることはありません。」

「そうだろうな、だが相手が豚獣人だったらどうだ?討てるか?」

「相手が獣人かもしれないと思ったならば・・おそらく討てないと思います。噂には聞いていても豚獣人は見た事がありませんでした、ここまでそっくりとは・・。」


エルリーナがそう言うと、ダクネとマリリンがごくりと生唾を飲み込んだ。


「先ほどこのアキンドから聞いた情報によると、大森林側の獣人の旗頭の虎獣人がこの豚獣人の裏切りに合い、西の荒れ地側の旗頭の獅子獣人に敗北したそうなんだ。エルフやマーメイド達はこの顛末を知っているのか?」

「いえ、初耳でございます。」

「初めて聞きましたっ。」

「全く知りませんでした。」

「そうか、獅子獣人や豚獣人の本拠地は荒れ地だそうだ。対立していた虎獣人ら大森林側の獣人が間に居たから、荒れ地の獣人を見る機会もあまりなかったろうしな。」

「「「はい。」」」


「オークと豚獣人を見分ける術は無く、違いは体内の魔石の有無だけ、そうだったなアリス?」

「はい、外見は全く同じです。」


「だんさん、ワテ疑問に思うたんでっけど、豚獣人は人なんでっしゃろか?それとも魔物なんでっしゃろか?」

「さあな、一つ言える事は俺はこいつらが大嫌いだ。見た目の醜悪さもさることながら裏切りをする行動も下衆で心も醜い。俺は呼び方が違うだけで同じ部類だと思っている。」

「私もきらいです、ソウシ様。」


アリスは俺を包むようなまなざしで寄り添ってくれている。慈愛のこもったこの感じ・・。アリスの肩を抱き寄せ、一呼吸した後俺は3人の巫女に告げた。


「虎獣人が敗北した今、勝利した獅子獣人側が大森林に大挙してなだれ込んでくる可能性は高い。そして豚獣人とオークは全く見分けがつかない。これはかなりヤバい状況だ。」

「「「は、はい。」」」


「エルリーナ、ダクネ、マリリン、お前たちは今直ぐ区長にこの事を{イエデンワ}で伝えるんだ。醜悪な豚顔のこいつらをオークか豚獣人かを見分ける術は無いと。見かけても話しかけられても完全に無視しろ、街や区に近づいたら警告してそれを無視してきたら即討伐するように伝えるんだ。エリス神殿街の中にこいつらを一歩たりとも入れるな!連絡を急げ!」

「「「はい!ただちに!」」」


3人の巫女たちは転げるように大慌てで出て行った。


◇◇◇


区長と言うのはここ、エリス神殿街が街であるため傘下の集落や村は区と呼ぶようにしたからだ。つまり各族長や村長は区長と呼称を変えた。例えばマーメイド漁村の族長マリアンヌはエリス神殿街マーメイド港湾区の区長さんと言うわけだ。


イエデンワというのは賢い諸君ならもうおわかりだろう。俺のドールクリエイトスキルのオプションで創造されるドールハウスについてくる固定電話のことだ。これをエリス神殿や各区長の家等の主要施設に配備している。


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