第19話 ウサギさんのお見舞い

「アリス、昨日のうさぎさんのお見舞いに行こう。」

「はい、ソウシ様。」


アリスとともに診療所に向かう。アリスはさっそくナース服(アリスバージョン)に着替えて俺を楽しませてくれている。お土産のおいしい甘人参も持ってきた。

後ろからガーネットとエメラルドが付いてきている。護衛のつもりなのだろう、残りは留守番で屋敷の事でもしているようだ。



診療所に入ると、受付にあのドジっ子ナースが居た。待合室にはエルフが数人ちらほら見える。早速治療を受けに来たものが居るようだ。


「ソウシ様、ようこそオカシくださいましたっ。」

「お菓子?」

「お越しでしたぁ。」

「あずさ、俺たちには構わないでいい。ウサギさんの見舞いに来ただけだ。患者を優先しなさい。」

「はい、かしこまりです。」


病室に入るとクロサメがちょうど巡回診察していて居合わせた。


「よぅマスター、このウサギはもう退院させてもいいぜ。厳密にはウサギじゃねえけどな。」

「きゅぴぃ!」


ウサギさんの声はもう元気そうだった。


「クロサメ、ウサギじゃないとはどういうことだ。」

「見ればわかるだろ、本物のウサギは二足歩行などしねえ。」

「きゅぴぃ?」

「確かにウサギっぽくはあるが、よく見るとデフォルメされたぬいぐるみに違い容姿だな。生物ではあるんだよな?」

「ああ、ちゃんと生きてるぜ、マスターの処置のおかげで治りも早い。」

「ソウシ様、きゅぴぃちゃんをお家に連れて帰っても良いでしょうか?」

「名前はきゅぴぃでいいのか?気に入ったようだなアリス。」

「はい。とてもかわいいです。」


「ところでマスター診療報酬の件なんだが。何か方針はあるかい?」

「ああ、そうだな。全くの無償と言うのは問題がある。ただし無い者からはあまり取ってやるな。逆に持つものからはありったけむしり取ってやれ。どうせこの世界ではもぐりの医者だ、点数制など無い。腕のいいところに自然と患者は集まる。」

「イヒヒッ、そう言うと思ったぜマスター。ワシにまかしとけ。」

「一部の者がため込んでいると経済が停滞するからな、吐き出させて世の中に循環させてやれば少しはマシになるだろ。」


アリスが両手を広げるときゅぴぃは胸に飛び込んだ。アリスは両手で抱えるように前向き抱っこしている。絵になるなあ。じっとしているとモフモフぬいぐるみにしか見えない。アリスときゅぴぃの相乗効果でとてつもなくかわいい。


「じゃあこの子は連れて帰るぞクロサメ。」

「あいよ、ショウコ退院の手続きだ。」

「こちらへどうぞ、ソウシ様。」


診療所を出ると何やら神殿の方が騒がしい。行ってみるか。






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