第163話 S級冒険者パーティ


俺達は太古の湖の東に創った洞窟型ダンジョンに冒険者ごっこをしに遊びに来ていた。エリス魔物討伐隊。隊長俺、賢者アリス、戦士ガーネット、魔法使いルビーという役回りの構成だ。洞窟の入り口行くと見覚えのある男女4人が居た。


「スペードとか言ったな、お前たちこんなところで何をしている?」

「おや、これは御使い様に聖女様じゃねえですか。そちらこそなんでこんなところに?」

「ああ、この洞窟はウチの魔物狩場なんでな、気晴らしに遊びに来たんだよ。」

「最近この洞窟を見つけたんですが結界が張ってあって入れねえんですよ、御使い様の遊技場でしたか。」

「まあな、ダンジョンが趣味なんだ。」

「ときに御使い様、このダンジョン俺達にも使わせてくれやしませんかね?」

「ん?どうしてでだ?」

「ウチのダイヤ=エースがエリス神殿武闘大会で優勝したはいいんですがね・・。」

「聖女様、手ずから頂いた防具を兄弟4人で分割して使いましたる非礼お詫びいたします。」

「いえいえ、有効につかって頂けて何よりです。問題ありませんよ。」


話しを聞くと彼らはS級冒険者パーティ“ダイヤのエースがとまらない”というグループで4兄弟なんだそうだ。スペード=エースは小手とすね当てにヒヒイロカネの防具を着けていて双剣を腰に差している。ダイヤ=エースはアダマンタイトの胸当てと腰当だけでローブを羽織り先がひし形の杖を持っている。ハート=エースと言う女はインナーにオリハルコンの鎖帷子と鎖おぱんつを付けているらしく聖職者の格好でハート型のステッキを持っていた。クラブ=エースとか言う大男は兜と胴巻きにヒヒイロカネの防具を付けて自前の大盾と金属製の棍棒を持っていた。兄弟仲良く分けて使っているようだ。


鎖おぱんつとは。男は股にある急所を切り上げられたら激痛で悶絶し即戦闘不能になるのだ。最悪ショック死するまであるので急所を守るための鎖で編んだおぱんつである。股を切り上げる攻撃はかなり有効で実践ではよく使われる。ぬるい竹刀打ちなんかやっている甘ちゃんには理解出来ない領域だ。別に女だって股を切られれば痛いので履いても問題はない。


「で、優勝したからどうだと言うのだ?」

「優勝賞金を借金返済に当てたらすっからかんになっちまいまして。さすがに聖女様から頂いた防具は売り払う訳にもいきませんしねえ。」

「金貨100枚くらいあっただろ。もう無いのか。」

「そうなんですがね、ウチはダイヤのせいで万年金欠なんですよ。」

「どいう事だ?S級ともなれば金なんかいくらでも稼げるだろう。」

「稼いでも追付かねえんですよ。御使い様もご存じ通りのこいつの爆裂ファイヤーは獲物を木っ端みじんにしちまうんで、素材も魔石もなーんも残りゃしねえ。いくら魔物を倒しても殆んど金にならねえんですよ。でも装備や生活レベルはS級にしなきゃ格好がつかねえんで火の車なんです。」

「なら他の者が倒せば良かろう。」

「それがダイヤのやつは戦闘が始まると見境が無くなって止まらねえんですよ。魔物の死体にまでぶちかますんでどうにもならねえんでさあ。」

「お恥ずかしい事ですが、私興奮しますと周りが見えませんの。オホホ。」

「だからパーティ名が“ダイヤのエースがとまらない”なのか。」

「そういう事でさあ、御使い様。」

「おかしな名前だと思っていたがそのまんまなんだな。だが護衛や傭兵とか指名依頼とか他の仕事も有るだろう?」

「商人たちは護衛は商工ギルドの護衛部門を使いましてね、冒険者ギルドの下っ端は山賊に早変わりするような奴らもいて信用が無くて回ってきやせん。傭兵は戦争屋でもうそれは冒険者じゃなくなりますぜ。指名依頼は裏のあるいわくつきが多くて簡単には受けられねえんですよ。」

「わかった、迷宮を使う事を許可する。迷宮の中には宝箱も有るしドロップ品も出る、ゴーレム系なら粉々になっても鉄やら銅やら鉱物資源は素材としての価値があるだろ。」

「「「「有難うございます!御使い様。」」」」


4人はでは早速と言って喜々として洞窟ダンジョンに入って行った。そして俺は太古の湖の西側に100階層のタワー型ダンジョンを創造した。今度はこっちで遊ぼう。



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