第122話 ビッチーナの旅
その頃贖罪の旅をしているビッチーナは、諸国連合の国の一つエルマール王国に来ていた。
「皆様、私は愚かにもゴルドステ教と契約し、皆様の財産を巻き上げる片棒を担いでおりました。お許しいただける事ではございませんが、せめてもの罪滅ぼしに皆様からの寄付金を全額返金し、寄生虫の解毒剤をお渡しいたします。どうかお納めいただきたく思います。」
王宮前広場。ビッチーナは壇上から土下座して民衆に全力で謝っていた。
「何て悪い女だ!」
「寄生虫に蝙蝠の糞を混ぜただと!ふざけやがって!」
「うちの息子が引きこもりになったのもこの女のせいだったのか!」
「何て悪いやつだ、人の金を騙して巻き上げるとは!」
「私の夫が仕事も手につかなくなったはこの女のせいなのね!」
「うちの嫁が俺の居ない間フラフラ出歩いてるのはこの女のせいだったのか!」
「いや、それはお前の嫁が浮気の常習犯なだけだ。」
ビッチーナに石が飛んでくる。当たったらタダじゃ済まないのでそれを護衛の衛士が打ち払っている。民衆の代表の長老っぽい爺さんが出てきてビッチーナに尋ねた。
「お前さんはゴルドステ教とグルでやったと言ったね?教会に収めた寄付金がどうして全額返せるのかね?」
「それは、私の取り分が1割なので全額返済は無理ですと言ったら、9割を補てんし用立てて下さったお方が居るからです。」
「ではゴルでステ教が非を認めて返金をしている訳ではないのだね?儂らのお金はまだ9割教会にあると言う事かね?」
「はい、その通りです。」
「この寄生虫の解毒薬はどうしたんだね?」
「そのお方が皆様のお苦しみを取り除くためにと仰いまして、配下の方に命じてお創りになったのでございます。」
「なんと!見ず知らずの儂らのためにそこまでして下さる方がこの世に居るのか?信じられぬ。どこの何と言うお方だね?是非ともお礼を言わねばならない。」
「はい、大陸中央の大森林南にエリス神殿街と言うとても清潔で綺麗な街をお創りになったお方です。」
「エリス神殿とはなんだね?」
「エリス様とはこの世界の万物を創造して下さった創造主様でして、そのエリス様を祀る神殿です。そのエリス様が地上に使わした御方こそがエルフや獣人たちに御使い様と呼ばれ慕われているその御方なのです。」
「皆の衆、儂らにこれほどまでして下さったその御使い様に免じてこの女を許してやってはどうかの?」
「そうだな、その御使い様のお蔭で元に戻れたわけだしな、この女を許そう。」
「護衛を付けてまでこの女を守るのには何か理由があるんだろうしな。」
「私の巻き上げられた大事なお金が戻ってよかったー。」
「悪徳教会の代わりに補てんするとは偉大なお方だな。」
「この女を手先に寄生虫を植え付けたのはゴルドステ教だ。」
「元をただせば金の亡者のゴルドステ教のせいだ!」
「俺たちの金は教会にまだ眠ったままだぞ!」
「悪いのはゴルドステ教よ!」
「「「「「そうだそうだ!」」」」」
ビッチーナの行く先々で同様の事が起きていた。風向きが少しづつ変わって行く。
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