第57話 虎獣人の話

「おい、怪我人なんだから寝かせとけよ、クロサメ。」

「言うこと聞かねえんだから仕方ねえさ、まあ動き回らなければ平気だ。」


「やれやれ、それで俺に話があるとか?」

「ははっ。拙者虎獣人族を纏める者でティガ―と申します。戦争に負けて落ち延びる途中に立ち寄った村でエリス様の事を聞き及び、御使い様、聖女様におすがりしたき義がございまして恥を忍んで参りました。」


「自分勝手に戦争しておいて負けたから助けてくれとか、ちょっと虫が良すぎやしないか?虎獣人さんよ。」

「仰せごもっとも、面目次第も御座いませぬ。なれど・・。」

「で、俺に何をおすがりしたいんだ?」

「獅子獣人に囚われた森の獣人を救出して頂きたく存じまする。」

「戦争捕虜ならばどうにもならんね。大体勝っていたらお前らも捕虜をとるだろう?それが戦争と言うものだ、嫌なら最初から戦争なんかするなって話さ。」

「それはそうなのですが、囚われたのは戦闘員では無く一般住民の女子供でして、奴隷として酷い扱いを受けております。御使い様にどうにかお助けして頂きたく。伏してお願い奉りまするっ。」

「どうか助けて下さい御使い様。某が不甲斐ないばかりにティナお嬢様をおめおめと攫われてしまって。うぅぅ。」


虎獣人の大男が五体投地して縋り付いてくる。白豹の獣人も一緒だ。しっぽを丸め耳もしおしおだ。なんかふつふつと怒りがわいてきた。


「なにっ?一般市民を奴隷にしてるだと?それでティナと言うのは誰だ?」

「はい、ティナと申しますのは拙者の娘でございまして、攫われて奴隷に落とされてしまいまして・・。」

「だが獅子獣人の集落にはそんなのは居なかったぞ。何処に囚われている?」

「獅子獣人の懐刀の黒豹獣人の里にございまする。」

「ガーネット、パールに連絡して黒豹の里の確認を急げ。」

「はっ、ソウシ様。ただちに。」


「話を戻すが、そもそもどうして獅子獣人と戦争をしていたんだ?」

「はい、先ほども述べましたように獅子獣人は横暴で自分より弱い他の獣人を虫けらのように扱うのです。拙者それを見かねて弱い獣人たちを守り奴らと相争うようになった次第でございます。」


「それに長年膠着状態と聞いたが、何で急に負けたんだ?豚獣人が原因か?」

「はい、豚獣人が獅子獣人に苦しめられていると訴えてきたので仲間に入れたのですが。拙者が無能故、後方に配置した輜重隊のか弱い獣人達を豚獣人に急襲されまして、対応してる間に獅子獣人になだれ込まれまして、拙者が重傷を負っている間に総崩れとなり負けてしまった次第でございす。」

「やはり性根が腐ってやがるな豚の野郎は。」


「ソウシ様、パールより返信がありました。黒豹の里の地下牢に多数の女性と年少の獣人が囚われているとの事です。ですがティナさんらしき人は見当たらないと・・。」

「獅子獣人はクロで決まりだな。よし、問題解決に向けて力を貸そう。」

「「ははーっ、あり難き幸せにございまする。」」


「ティガ―と言ったな?お前の所の集落を借りるぞ。」

「はい、御使い様のお好きな様にお使いください。」

「後は俺に任せてここで大人しく養生してろ、クロサメ頼んだぞ。」

「患者の事はワシにまかしとけ、マスター。」


まずは準備だ、俺たちは屋敷に戻った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る