第157話 賢人たち③
庵の玄関前で子供が声をかける。
「先生ー!メーコー先生ー!お客さんだよー。大森林のみつかいさまが来てるよー。きれいなせいじょさまも一緒だよー。」
し~~~ん。
「あっれれーおっかしいぞー?」
「どうした童よ。」
「メーコー先生さっきまで外の厠でうんこしてたんですよ。なんで返事がないんだろう?畑かな?ちょっと見てきます。まってて下さいみつかいさま。」
「わかった、少し待たせて貰おう。パール、ラピスラズリ。あれを。」
「「はい、これに。ソウシ様。」」
ポータブルスクリーンにメーコーの庵の中の様子が映し出される。
「御使い様が来たっ!酔狂センセが言ってた通りきたきた!直ぐ来たってことはこの大天才の私が余程欲しいのだろうな。フフン!」
「兄上、喜ぶのは良いですが、今は出てはなりませんぞ。」
「ああわかっている、この千載一遇のチャンスに最大限高く売りつけないとな!」
「ええ、ええ。あと1回は無視して3度目辺りにもったいぶってお会いなさいませ。」
「御使い様の軍師として迎えられれば大森林の兵権を与えられ天下は私の思いのまま動かせるのだ。あと2回も待たねばならんのか、待ち遠しいな。」
「御馳走は待てば待つほどおいしいものですよ、兄上。」
「「ウシシシシッ!」」
◇
「さて、そろそろ帰るか。」
「みつかいさま帰っちゃうんですか?なんかすみません。ショボン。」
「出てこないのでは仕方なかろう。童は素直でいい子だな。大きくなってもしここを離れたくなったら俺の所を訪ねて来なさい。約束のしるしにこれをやろう。ではさらばだ。」
「かわいいー、ありがとうみつかいさま。きっと行きます。さようならー。」
いつまでも手を振る子供の胸にはきゅぴぃのガーディアンドールが大事そうに抱かれていた。
俺達はかぼちゃの馬車に乗ってメーコーの庵を後にして帰ってきた。その後俺は二度とメーコーの庵を訪ねることはなかった。メーコーはおかしいな?まだかなまだかな~♪しんりんのっみつかいまだかな~♪と歌までこさえて歌いながら弟と一緒に晴耕雨読の生活をずっとずーっと送っていたという。かくして伏せた竜は伏せたままこの世を去ったという。
その後童は美しく成長し庵を出て約束通り俺を訪ねてきた。が、それは後の話だ。
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