第104話 ビッチーナの贖罪①
そして、お待ちかねのオパールが飛行艇クレナイ1号で颯爽と戻ってきた。
「寄付金者名簿のー写しを取ってー、ただいまー、もどりましたー、ソウシ様。」
「オパールよくやってくれた、偉い、偉いぞ。他に何か変わった事とか、面白い事はなかったか?」
「教団本部に来ていたー、マッカウソー枢機卿からー、帝国が東の平原を攻めるとのー、情報がもたらされていましたー。」
「何処を攻める気だ、アリス。」
「ソウシ様、帝国と連合国家群の境界線は中央山脈より東に向かって流れる大河テーム川になります。地図をご覧ください、ここになります。テーム川の対岸にお互い砦を中心に陣地を築いてありますので、恐らくそこを攻める気なのではないでしょうか?」
「ほう、この対岸の渡河陣地か、中央山脈の迂回路は険しすぎる、渡河して攻めるならば地形的にここしかあるまい。パールにラピスラズリ、いるか?」
「「ソウシ様、ここに居りますの、なのです。」」
「2人はこの2つの砦周辺を観測せよ。何か動きがあれば随時報告するのだ。」
「「ソウシ様、動きと言うほどの事は無いのですが西の魔族砦で何か始める様なのです。ですの。」」
「そうか、じゃあ動きがあればそっちも観測してくれ。」
「「畏まりましたの、のです。ソウシ様。」」
「オパール、長旅で疲れたろう、お風呂に入ってゆるりと休め。」
「はいー、ありがとうございますー、ソウシ様。」
オパールはお辞儀をするとくるりとまわって浴場に向かっていった。
「アリス、平原の諸侯連合には旧アシヤ王国も参加していたな?」
「はい、前線の兵力を負担するか兵站を負担するか、帝国との距離で決められております。旧アシヤ王国は後方の兵站の負担の様でした。」
「そうか、旧アシヤ王国はエリス神殿街の一区になったとは言え、連合の盟約は生きているはずだ、要請されれば兵站を負担しなければなるまい。」
「そうですね、ソウシ様。所属が変わったからと盟約を反故に出来るものではありません。」
「アメシスト、アシヤ区長に連合の盟約の内容を詳しく聞いて確認し兵站の負担を許可せよ。ゲス男爵イモの財産を全て没収したから費用の捻出自体は余裕の筈だ。何かあれば俺に相談しろと伝えてくれ。」
「はい、畏まりました。ソウシ様。」
メガネクィッして一礼するとアメシストは通信室に入って行った。
「ガーネット、ビッチーナを呼んできてくれ。材料は揃った、贖罪の旅の始まりだ。」
「はっ、ソウシ様。ただちに連れてまいります。」
エリス神殿預かりとなっていたビッチーナが連れられてきた。白塗りおばけだった顔は少し白めの肌色に戻り、まるで人が変わったように従容としていた。顔の白壁を剥がすとなかなか悪くない顔立ちだった。要するにすっぴんの方が100倍マシなのだ。自分で美貌を保つためとか言うほどのことはある。三つ指揃えて平伏している。誰だこいつ?
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