第3話 見える胸元
我が生涯にオッパイなし
世紀末覇者が天高く突き上げたその手は、ちょうどおわんサイズに開かれていて
乳に何を思うか
何を求めるのか
人生は乳に始まり、乳から離れ、そしてまた乳にあう
自分がオッパイ星人であったことは一度もなく
『なぜ山を登るのか』と問われ、
”そこに乳があるからさ”と答えんばかりの猛者にある一定の理解を示しながらも、別に「あってもなくてもいい。いや、そう思えばこそ、あるといい」という境地くらいには辿り着くのでございます。
しかしながら、見える胸元とはこれ、等しく魅惑的でございます。
オッパイ星人であろうがなかろうが関係なしにチラリズムと言われるフェチズムが存在する。
また男性は女性の姿を見るときに、かなり高い順位で胸元を確認するわけですが、さて、長々とここまで乳なりオッパイについて語ってきたことについては、それはそれで意味があるわけです。
ここまで見える景色やオトナや大人のお話をしてきました。
そして他者への関心。
男性誰しもがそうであるのかどうかは、あずかり知るところではございませんが、まったく女性に関心を持てないような時期があり、そのようなときに見える僕の景色は色あせていて、たとえば女性がどんなに可愛らしい服を着ていようが、胸元がセクシーに開いていようが、髪の毛が長かろうが短かろうが、スカートの丈や絶対領域や首筋や、足首や口元のほくろに至るまで・・・もうないかな?
どうでもいいのです
”あなたは私に関心がないだろう、だから私もあなたには関心をもちません”
そのような方程式が成立する精神状態とそれを許す生活環境
性欲は衰えずとも、そこに恋愛などというものを持ち込まなければ成立する
”一度痛い目に会うと二度とそれを経験しないように工夫をする”
恋愛で痛い経験をしたあとの対処法は人それぞれです
トライ&エラーで精度をあげるも良し、逃げるも良し、自暴自棄になるも良し
僕はといえば、恋することをやめてしまいました。というか新しい恋ができなかった時期を経て、しなくてもいい
もう恋なんてしないなんて言わないけど、しなくなっちゃいました
そんなはずもないのに、どんな風景にも別れた……フラれた彼女のことを重ねて見てしまう――つまりどんな女の子にもどこかで彼女の姿を探してしまい、失ったことへの代替行為としての恋しかできなくなってしまったということなのですが、まぁそれもどうでもいいです。
”もしも僕が彼女のオッパイだけが好きであれば、こんなに苦しくはなかったろうに”
或いは
”もし僕が彼女の細い足だけが好きであれば、こんなに切なくはなかったろうに”
でもいいのです
何物にも変えがたいその人の”スペシャル”にほれ込んでしまうと替えがきかない
つまり ”惚れたが負け” なのであります
認めたくない自分の負けに背を向けて、強がって、一人よがって、僕の見る風景は”彼女がいなくなったどうでもいい世界”になってしまったわけです。
もしも、僕がオッパイが好きだったら、君をいつまでも追いかけはしなかったのに
もう、何もかもが台無しですね
でも僕の目の前には、僕が焼いたお好み焼きが乗った鉄板を挟んで、それは立派なオッパイがある。
今の僕にはそれを愛でることもできれば、拝むことも、崇めることも、奉ることもできる。
触れてみたいと思うと、それは遠ざかる
見ていたいと思えば、陰に隠れる
触れられなくてもいいと思い至れば、不意に腕に当たり
見えなくとも仕方がないと諦めると、隙間が見えてしまう
求めて得られず
されど、それはそこにある
そこにあることが素敵なことだとわかったとき
君の瞳に恋をする人もいれば、君の胸元に焦がれる僕もいるのだと、閉じた殻を破ることもできるのです
高々お好み焼きを仲間4人で食べに行くだけで、僕にはこれだけの脳内フェスティバルが開催され、モヤモヤもすれば、ムラムラもし、うかうかしているとこの楽しい時間は、明日にはないのかもしれないと、出来る限り、思う存分、酸いも甘いも、世知辛かろうが、他人のなんとかは密の味がしようが、目の前の風景を愉しみ、誰かにとって自分が特別な何かであろうとし、そうでなくとも臆せず、妬まず、省みず、何時でも誰にでも何にでも関心を持ち、恋焦がれることができる自分でありたいと思うわけでございます
まだ口もきけない子供が、夜空に輝く満点の星を見て、手を伸ばして星を掴もうとするごとく、僕は、いつまでも、手を伸ばしていたい
そう思う出のであります
ではまた次回
虚実交えて問わず語り
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