第105話 裏も表も 浦島太郎
子供の頃に、この物語を聞いて、みなさん、どう思いました?
亀を助けた浦島太郎
それに報いる竜宮城の乙姫様
しかし、お土産に渡された玉手箱は、太郎に残酷な現実を突きつける
ここから得られる教訓は
亀など、助けるものではない
いやいやいや、そんな話はないでしょう
いじめられている人がいたら手を差し伸べましょうというのが、道徳的ですよねえ
でもいくら良いことをしたからと言って、過剰な接待を受けてはいけませんという教訓なのかなぁと、無理やりに自分を納得させたものです
舌切り雀のおじいさんとおばあさん
瘤取りじいさんといじわるなじいさん
カチカチ山や猿蟹合戦や花咲爺さんといった物語のキャラクターは善人、悪人の設定がはっきりしている
これは童話である以上必須の項目だと僕は思います
つまりデフォルメ、強調、誇張によりストーリーをわかりやすくする
しかし、なんというか、掴みどころがないのよね――この物語というか浦島太郎を含め、亀や乙姫といった登場人物の設定が
もし太朗がまじめな青年なら、仕事があるからと、まぁ、せいぜい1日2日で村に還ろうとするでしょう
仕事を何日も休んだら、現代なら即、首ですよ
漁村という社会であれば、浦島太郎だけで漁をやっていたわけではないのだろうし、働き盛りの若者ですからね
面倒を見なきゃならん親兄弟はいたのかどうか
まぁ、語られていない部分を詮索してもしかたがない
一方太郎に助けられた亀はそのお礼として竜宮城に案内するわけだが、亀は竜宮での数日が、地上では何年にも値するということを、果たして知っていたのだろうか
これも語られない部分である
もし、過剰な接待を受けてはいけないという教訓話ならば、亀はここで太郎に忠告をしなければならない
それは鶴の恩返しで言うところの「中を覗いてはいけません」や、あかずきんの「寄り道してはいけません」に相当します
そして乙姫は、亀に頼まれたのか、それとも乙姫は亀を助けたという太朗というやさしい青年に会ってみたいと、ちょっとした恋心で亀に連れてくるよう頼んだのか
その際、年月の話は口止めをしたのかどうか
これも語られていない
そして竜宮の民は、果たしてそれを知っていて、見て見ぬふりをしていたのか、口止めをされていたのか
これも語られない
そう、この物語は忖度ですべてが動いたのではないかと思えるほどに、みんな裏で何を考えているのかわからないのである
浦島なのか 邪(よこしま)ならぬ”裏しま”なのか
実に興味深い物語である
次回は浦島疑惑の真相に迫りたいと思います(まだ続くんかい!)
では、また次回
虚実交えて問わず語り
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