第106話 裏の裏は表の浦島太郎

 浦島太郎の物語を僕なりに読み解くとこうなります


 亀助けて、恩返しが乙姫様の接待

 これが等価交換ではなかったので、その差分として月日をとられた


 それはもう現代社会においては、困っている女性を助けて、そのお礼にと、毎晩のように接待をうけたり、いい思いをしたら、最後にはとんでもない請求書を突きつけられるか、家庭から愛想をつかされるか、まぁ、そんなところでしょう


 男性には耳の痛いお話ですね

 やさしくしてあげた見返りにスケベ心を出すと、だいたい痛い目に合うものですね


 しかし、もう一つの側面から見ることもできます


 それは”亀を助ける”という行為は、はたしてどうなのかということ――


 つまり、漁師という海から魚を捕ることを生業としている人間が、海の生き物である亀を助ける行為というのは、一般社会常識的な人道的道徳論で語るよりも、漁村という土着的な慣習に基づいた巷ルールで語るべきなのではないのでしょうか


 海の生き物の命を助けるという浦島の行為は漁村という社会では反社会的行為であり、その罰として村八分同然の状態――誰も太郎を知らないほどに月日が流れてしまったのではないでしょうか


 昔話というのは教訓めいたものが含まれている事が多いです

 浦島太郎もまた、自分の所属する社会から逸脱して相反する陣営の接待をうけると、どんな結末が待っているのか、そんなことを表しているのかもしれませんね


 さて、ここまでは実は他でもいろいろと語られている事だったりするので、僕らしくちょっと変わった視点で物語を紐解いてみましょう


 この物語の主人公は言うまでもなく浦島太郎であるが、乙姫側に視点を変えて物語を見ると、これはこれで味わい深いというか、面白い


 ~浦島太郎を乙姫側から見たストーリ~


 ある日竜宮の女たちは話し合う

 竜宮で誰が一番、魅力敵な女性であるか


 そこで一人が提案をする

「漁師村の若者をそそのかし、誰が一番その若者を竜宮にとどめられるか競いましょう」

 その使いにカメが選ばれる


 カメは見事に太郎という若者に接触し、竜宮に招き入れる

 さぁ、宴の始まりだ


 女たちは競って太郎を誘惑し、ありとあらゆる手段を使って自分の部屋に招き入れる

 ある者は舞い、ある者は歌い、ある者は添い寝をし、ある者は激しく・・・


 そんなことが幾日も幾日も繰り返された

 太郎は女たちに精気を奪い取られ、みるみるうちに老いさらばえていく


 女たちは太郎がその異状に気付かないように、術を施して太郎の若さを保った

 しかし、そのような行為に良い噂が立つわけもない


「もし、このまま太郎を村に返したら、竜宮でのあんなことや、こんなことが世間にしれて、竜宮の評判はがた落ちだ」


 いよいよ困った女たちは仕方がなく、太郎を村に返すことにした

 しかし、このまま返すわけにはいかない


 そこで、一計を案じ、「絶対にあけてはなりません」と言って太郎に玉手箱を渡し

 人間、そういわれれば、開けたくなるもの


 その玉手箱には仕掛けがしてあった

 そんなことにも気づかず、太郎はとうとう玉手箱を開けてしまう


 その玉手箱には、竜宮の女たちが施した若さを保つ術を解除する仕掛けがしてあったのだった


 太郎はあっという間に老人になってしまったとさ

 太郎がどんなに竜宮城の出来事を村人に話しても、見知らぬ年寄りのたわごとだと、誰も相手にしませんでした


 めでたし、めでたし


 では、また次回

 虚実交えて問わず語り

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