第56話 アンバランスゾーン
僕は別にお酒を飲んでカラオケ歌って愉しい仲間がいれば、それで幸せという人ではありません
もちろんそれだけで幸せだという時もありますが、どちらかと言えば3~4人でいろいろと語らいあうのが好き――そしてたぶんサシ飲みが一番好きなのかもしれません
ありがたいことに僕のまわりには、そういうことに付き合ってくれる人がたくさんいます
でも、どうせ飲むなら女性が良い・・・と思えるようになったのは極最近のことで、わりとそういうところは、奥手と言うか、気が引けるというか、使うというか、得意な分野ではなかったのです
しかし自らを”もういい年なんだから”と諦めたせいか、そういうことが”気にならなく”なってきました
ひとつには”下心”的なものが”消えた”或いは”消し去ることができるようになった”ということ、そして誰も僕にそういうことを期待も警戒もしてくれなくなったというのもあります
さて、ミューズにしろウィッチにしろ、出会ったころには下心的なことは僕にはなく、それでも無意識化で二人のことを特別な存在として認識していたというのが、これまでのお話で、ここからは、その無意識に自信が気づいてしまったときに、果たして無意識化でコントロールされていた状態に戻れるかと言うお話です
結論から言えば、無理でしょう――好きだという気持ちは簡単には騙せない
一度意識に上った無意識は、酒にでも酔って意識を飛ばさない限り無視できない存在となります
そして酒に酔って意識を飛ばしてしまうことのリスクの方が格段に上がり、意識をしてブレーキとアクセルとギアを操作し、自分の立ち位置をコントロールする必要がでてきます
無意識化ではきれいな二次元関数だったグラフも、意識に上った瞬間にただの落書きに成り下がってしまう
その曲線の上を歩く僕は、うっかりすると事故を起こしかねない――必然すべての行動は慎重にならざるを得なくなるでしょう
たとえばためしに新たな女神の転生を望んだり、あたたな魔女の召還をするという方法もあります
しかし、ライトノベルではあるまいし、ハーレムなど簡単に作れるはずもない
そしてそれすらも意識下で行われるわけですから、完全無意識でのコントロールに戻すことは、やはり不可能なのです
ウィッチは真夜中に囁きます
今から飲みに行かない?
一時間だけでいいから
過去、それで一時間で帰ったためしがないし、それはもう、間違いなく僕が引き止めているようなものなのです
一度巣穴から誘い出されたが最後です
解き放慣れた欲動を抑えるには、目から血が滲むような忍耐を必用とします
行くも地獄、留まるのも地獄――会いたい気持ちに身を焦がし、眠れない夜を過ごすのでございます
無意識のうちには、ホイホイと誘い出されていたのですがね
挙句、僕は”そういうプレイが好み”だとか言われてしまう始末です
そしてどういうわけか、いつものようにミューズから連絡が来ない
これは何かのサインにちがいないのです――どうやら僕はアンバランスゾーンに足を踏み入れてしまったようです
では、また次回
虚実交えて問わず語り
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