第36話 1人飲みジェネレーション

『チャーハンと手羽先』カウンターの隣で、若いお兄さんが注文をします

 お酒は飲まないんだ


 僕は今、名古屋に来ています

 世界の山ちゃんで一人飲み

 手羽先とどて煮をつまみに角ハイボールをダブルで頂いております


 ホテルでピーナツをつまみに缶ビールを飲むのもいいんですけどね

 僕はやっぱり、地元の居酒屋で人間観察をしながらカウンターでお酒の飲むのが好きです


 一人前の男になるには一人で美味しく酒を飲めなければいけない


 どこでそんなことを覚えたのか、吹き込まれたのか、二十歳を過ぎる前から、僕はふらっと一人飲みをしてました


 僕が十代、二十代を過ごした品川。品川、大井町、大森、蒲田という京浜東北線沿線は、今でも昭和臭が漂う町です

 なかでも大井町は僕にとって一番身近な繁華街で、新宿のゴールデン街を彷彿させる”東小路飲食街”には、僕が二十歳そこそこの頃まで、3曲1000円で演奏してくれる”流し”が往来していました


 なぜそうなのかはわかりませんが、僕はお酒が好きで、一人で飲んで、そこで誰かと仲良くなって、わいわいやって、お互いに名前も覚えずにさよならするのが、好きなんですね


 もちろん気の合う仲間と集まってわいわいやりながら飲むのも楽しいのです

 ”一人で酒を飲んで何が楽しいの?”と聞かれることもありますが、うん、ぜんぜん楽しいのよね

 たとえば僕はわいわい大勢で飲むときには、その集団の中でどういう役割をするべきかを考えて行動する癖があります。

 僕の場合リーダー的、或いは幹事的役割を担うことが比較的多いのですが、時には太鼓もち、時には道化、時にはつまらなそうにしている誰かをフォローするとか、その時々によって飲み方を変えます

 そういうことは嫌いではないのですが、やはり疲れますね


 だからと言って、一人で飲むときは自由に振舞えるかといえばそうではありません


 そのとき、その場所で求められるキャラクターを演じます


 それが楽しいのです


 誰も僕を知らない、誰も僕に期待をしないし、誰も僕を信じてない、頼らない、任せない――それが心地いい


 ひとつに僕は聞き上手なのかもしれない

 小さい頃から大人に混じってじっと話を聞くのが好きだった

 そして飲みの場をコントロールするのが好き

 話の目先を変えたり、わざと脱線させたり、深く掘ったり、広げたり、そういうことを意識してするのが好き


 おかしいですかね


 そうかもしれませんが、これが僕なのです


 今宵も一人、酒を飲み、かの人を想う


 なんちゃってね


 ではまた次回

 虚実交えて問わず語り

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