第44話 コンビニのお姉さん

 マンガのような本当の話、ミドルエイジの恋の始まりは何処にでもあるような光景からでした

 ご近所のコンビニ、僕はまぁ、だいたい、どこのコンビニだろうが拘らない人なのですが、このお店だけは他と雰囲気が違いました


 アットホームというか、地域に根差しているというか、店員さんがすごく明るく元気で、気が利くんですよ


 だから僕はどうせどこも同じなら気持ちの良いところに足を運んだ方がいいということになり、天気がどうの、新製品がどうのとちょっとした会話をお店の人とすることを、とても自然な行いとして過ごしていました


 あるとき、1人の女性店員さんがお釣りを渡すときにだいぶがっつり僕の手に触れてくれて、それでドキッとしてしまったのです


 それはずっと繰り返されていた動作だったのですが、小さなコミュニケーションを繰り返し、相手を”店員”ではなく”知り合い”くらいの感覚になり、女性であることを再認識し、ああ、実は彼女は僕の”好みのタイプ”だなぁと気づいた瞬間、ちょっと手が触れただけで、ドキドキしてしまうという・・・思春期か!


 ある日その人と道端でばったり会うのですが、お子様連れでした・・・いかん、人妻ではないか


 恋心というのは、焦がれている間は楽しくて仕方がないのです

 まぁ、イメージとしてはコンビニに向かう足がスキップしているようなものです


 それを途中で止められると気持の行きどころを失い、それをどうにかして宥めようとします

 つまり別の恋を探そうとするわけですな


 そうすると今までと世界がガラッと変わって見えてくるのです


 僕は大人です・・・というかミドルエイジなわけですから、そういう自分の状態を俯瞰で眺めながら、たとえばどこでギアを入れて、どこでアクセルをかけて、どこでブレーキをかけるのかは、なんとなくわかっています


 わかっているつもりかな?


 少し自分の気持を泳がすことで、適当にガスを抜いて、事故を起こしてレースからリタイアしないようにコントロールすることができます


 でもね


 ままならないことはあるし、予想外はつきもの


 一番怖いのは、誰か1人を好きになり過ぎること

 僕の場合はのめり込む癖があるし、嫉妬も激しい


 でもそれを悪とは思わず、肯定もせず、ある程度心の赴くままに任せることを良しとします


 人間だから、しかたがない


 今見える景色を楽しむことをしたいと思うわけです


 では、また次回

 虚実交えて問わず語り

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