第32話 チョベリバ的懐疑主義と盲信的ヤバさ

 ”人は言葉によって生かされている”

 これは僕の詞(ことば)です


 哲学的帰結点として僕がこの詞にたどり着くには、欲や葛藤、愛や正義、真実と虚構、内宇宙と外宇宙、あらゆる考え方感じ方に触れてきて、覗いてきて、見聞きして直観と推敲の狭間にある自問自答への解を一般化する過程を経て発露されたものなのです


 ヤベー、何言ってんか、さっぱりピーマンじゃねぇー、わけワカメ


 思考は言葉を介して行われる――故に言葉を超えて思考することはできない


 さて、1+1が2になる人と、1+1が3になる人の間で相互理解をすることは可能であろうか?

 答えはYes――まったく問題ない

 二つの異なる現象を関連付ける方程式を導き、共有すれば相互理解は可能である


 お前の言うカッケーは、俺の言うところのヤッベーと一緒じゃん

 でもって、俺のヤッベーとカノジョのエモいが似てるってことは、やっぱグレイトってことだよな!


 やれやれだぜ


 時代ともに言葉も変わっていきます

 僕の持論からすると、人は言葉によって生かされているのですから、異なる言葉を使う者は、異なる生き方をしていることになるのだけれど、言葉の方程式を解けば、相互理解が可能と言うことになります


 さぁ、ここまでは着いてきてよね


 物事には本質というものがあり、”言葉の本質”とは意思疎通を図るための道具であります

”言葉をよく使う者は、言葉をよく用いる者に敵わず、言葉をよく用いる者は、目で物をいう者に適わず、目で物をいう者は、言葉をよく使う者に適わない”

 これは僕の仮説です


 理解には論理的理解と直観的理解があり、言葉を尽くして得られる理解と、感覚に訴えて得られる理解のどちらを求めるのかによって求められる”言葉のありよう”が違ってくる


 先ほどの僕の仮説を感覚的に訴えれば

 ”何言ってっか全然わかんねぇーっ奴ってヤバくない? でもさ、なんかカッケーと思う時もあるのよ。なんかさ、言葉がビビッってくるときあるじゃん。あれってさぁ、エモいってやつなのかな。でもなんかめんどくさー。やっぱ俺には無理って感じでよくない?”


 さて、僕は改めて警鐘を鳴らす


”人は言葉によって生かされている”


 言葉によって生き方を変えることもできれば、誰かを変えさせることもできる


 人はもっと言葉について慎重であるべきだし、良く見て、よく聞き、よく感じて、よく考えるべきなのだ

 時間をどれだけ費やしても得られる答えは少ないかもしれない

 しかし、それでも、自分が発した言葉と、相手が受け取った言葉が決してイコールではないことを自覚できるようになる

 それだけでも、理解しあえる人の数は、格段に増えるだろう


 ”人は解りあえる”


 逆に言えば世代間にレッテルを張り、若者は、年寄りは、ゆとり世代は、団塊の世代はと決めつけて片付けてしまうことは、選択肢を狭め、摩擦の多い人間関係を築くことになりかねない――しかしうまく用いれば記号化と公式化が可能となり処理速度が格段と上がる


 ”しかし形骸化は必ず起きる”

 常識や社会的原理原則を常に疑い、本質を見極めることを諦めないでいることは難しい


 ”言葉は武器である”

 故に人を活かすことも殺すこともできる

 

 ”普遍なる言葉ほど簡素であり、それ故に誤解を生じ易く、誤った使用法によって新たな言語感覚が生まれては廃れていく”

 流行(はやり)言葉とは地層に埋まった化石のようなものであり、その時代の空気をもっとも色濃く現し、その空気がその時代の”思考方法”に大きく影響していたことを証明するのにもっとも適した標本である


 時代を貫く普遍を疑いながらも、真なる解を求める

 超ベリーバッドな懐疑主義とは、真なる解を求めず疑うことだけに終始すること

 そして目の前の”真なる解”を信じて疑わないというのは悪い意味でヤバいってこと

 ナウなヤングには、わっかるかなぁ~ わかんねぇだろーな~

 ややウケ


 ではまた次回

 虚実交えて問わず語り

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