第95話 フラットスリーと人気の陰りと

 シドニーオリンピックで決勝トーナメント進出、アジアカップでは東アジアで初の優勝カップを手にし、日韓ワールドカップでもベスト16に導いたトルシエ監督の代名詞といえば”フラットスリー”です


 サッカーにおけるフォーメーション論や戦術論が日本中で話題になりました

 猫も杓子もおたまじゃくしですらカエルになることを忘れてサッカーについて語り合った時代・・・というかマスコミが煽ったといったほうがいいのでしょうかね


 まぁ、なんにしても盛り上がらないよりははるかにいい


 ここでフラットスリーの技術的なことを述べるのはやめておきましょう

 ぶっちゃけもう世界でこの戦術を使っているチームはありませんから


 問題となるのはシステムよりも選手です

 この時期の中心選手といえばドーハ世代からの脱却であり、ゴールデンエイジと呼ばれた小野伸二、稲本潤一、高原直泰といった十代から世界を経験している世代とその上の世代、中田英寿、川口能活、秋田豊といったフランスワールドカップ経験らが融合し、そこに中田浩二、松田直樹、宮本恒靖、森岡隆三と言った戦術理解力に飛んだDF陣と戸田和幸、明神智和と言った中盤の底


 うん、これは強い

 だがしかし、ここにもう一人、重要な選手がいる

 のちにセルティックで活躍することになる中村俊輔である


 シドニーオリンピックとアジアカップで活躍した彼がなぜ、2002年ワールドカップの舞台に立っていないのか?


 フランスワールドカップの時にはカズと北澤がそうであったように、最終メンバーに中村と高原の名前はなかった

 高原は直前に病気が発見されて外され、中村も怪我の影響でコンディションが上がっていなかったのは確かであるが、大会本番に間に合わないほどではなかったと記憶している

 トルシエ監督の戦術にあっていなかったとされているが、フォンの目にはそうは映らなかった


 ”トルシエに嫌われた”


 僕の目にはそう映ったし、中村本人もそのことを口にしていました


 まぁ、この際、そのあたりも話の軸ではないのでこれ以上触れるのはやめておきましょう

 付け加えるのなら当時人気のサッカーゲームウイニングイレブンのイメージキャラクターは中村俊輔でしたが、彼が代表落ちしたことで中山雅史に差し替えられることになります

 中山雅史はドーハ組で唯一日韓大会に出場した選手です――まぁ、中山は絵になる


 中田英寿を始め、日本人選手が世界の舞台で活躍しはじめ、多くのサッカーファンの目がJリーグにとどまらず、世界のクラブチームや代表に目が行ったことなのです


 ”週末はワールドカップ”


 セリエA、プレミア、リーガ、ブンデス・・・ヨーロッパのクラブチームの試合を見ているとワールドカップで活躍している選手たちが毎週見ることができるんです


 さて、この2002年はSCデジタル放送が始まり、2005年には衛星を介せずにネットワークでの配信が始まり、サッカー好きは専門チャンネルで毎晩のように世界のサッカーに触れられるようになります


 実はワールドカップの前、1999年に横浜フリューゲルスが消滅し、横浜マリノスに吸収されるという事態が起きており、フランスワールドカップの惨敗を機に国内のサッカーブームの収束はすでに始まっていました


 熱量の高いファンとそうでない人の二極化は進んでいきますが、それをつなぎとめるのが4年に1度のワールドカップということになるでしょうか


 カズやラモスといったカリスマ性は中田英寿や中村俊輔に受け継がれましたが、その選手は国内で見ることはできなくなります

 他にも能力のある若い選手はヨーロッパの二部リーグにチャレンジし、結果を残してよりよい条件のチームへと移籍するのが当たり前になってきます

 そしていざ日本代表を集めてみると海外組が招集され、一般の人にはこの人誰だ? という選手が増えてきます


 さて、そんな状況に危機感を覚えた日本サッカー協会は起死回生の一手を打ちます


 フラットスリーのような戦術論からの脱却――ジーコJAPANの誕生です


 では、また次回

 虚実交えて問わず語り

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