完全制御下の無意識の戯れ

第51話 無意識に気づく不幸

 無意識に気づいてしまうことは、とても不幸なことなのかもしれない


 好みのタイプだとか、親密になりやすいシチュエーションだとか経験から自分の置かれている立場や精神状態から”ああ、恋してる”といつもならわかる


 ここまで散々書いてきましたが、チャンネルがすべて閉じていると、そういうこともわからなくなる――見える景色が変わってしまい、見える物も見えなくなってしまうということはあるのです


 今、僕のチャンネルはわりと全方向に開いています


 だから知らず知らずに恋をするなんていうことは、想定していないというか、警戒していないというか


 バンドにドロンジョ様が加わり、妙にテンションあがっている自分は、彼女のスキルの高さや可愛らしさや面白さ――そういうことで盛り上がっていると、そう思っておりました


 知り合ったのは随分と昔でしたが、よく話をするようになったのはごく最近というか、僕らがバンドを結成したタイミングとリンクしています


 2年前、彼女が別のバンドに加入し、いわゆる対バンというところから、まぁ、いろいろあってのご近所のご縁ということで、食事をしながら酒を煽りながら、あれこれお話をするようになりました


 そのときまるで気づきかなかったのです

 中学生の時に同じようなシチュエーションがあったことに・・・


 初めて付き合った彼女には親友の女の子がいて、僕と彼女、その親友と僕の悪友の四人でよく遊びにいったりしていました

 グループ交際っぽい時期もありましたが、親友と悪友はそういう関係にはならなくて、僕は彼女とのいろんなことの相談をその親友に持ちかけるようになりました


 具体的にどんな内容の相談をしていたのか、まるで覚えていないですが、下手をすれば彼女よりも彼女の親友と電話や会って話をしていました


 僕と彼女の親友の間には絶対の信頼関係があったというか、距離感が同じというか、つまりこれ以上近づかないという間合いができていました


 それは当事者間の話で、彼女からしてみれば、どんな気持ちだったか、今考えると恐ろしいというか、僕がわかってなかったというか、酷い話です


 中学を卒業して彼女と関係がギスギスしたのは、それが原因ではなく、僕の素行のあれこれが問題でして、これまた酷い話なのですが、別れることとなります


 でも親友とはずっと付き合いがあって・・・大学を卒業するくらいまでは連絡をとりあっていたんですよね


 お互いに成長する中で、この友達以上恋人未満みたいな関係は、外側から見ればそうだったけれど、内側から見るとお互いを異性として意識するタイミングがずれていただけで、意図して距離を保っていたかどうかも分からないということが、わかりました


 そういう会話ができるくらいの間柄になると、男と女としての関係はそれ以上は進まないものです


 少なくとも僕と彼女は、そうだったのだと思います


 そして・・・人は同じことを繰り返すものだと、僕は知るのでした


 では、また次回

 虚実交えて問わず語り

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る