第88話 苦手な生き物、そして蟲夢
子供のころは虫取りをしてよく遊んだものです
だから、高校生くらいになって女子が蝶々を怖がったりする意味がわかりませんでした
百歩譲って蛾は夜にあかりを目指して飛んでくるし、なんとなく模様が毒々しく見えるのは、まぁ、理解はできるんですけどね
カブトムシだって幼虫から育てたり、青虫やカイコを観察したり、子供にとって昆虫はごくごく身近なもので、どちらかといえば遊びの道具みたいなものでした
それがちょっと大人になったくらいで、急に虫を忌み嫌うようになってくる
勝手なものだなぁと思いつつも、実際、僕も毛虫や青虫にはどこか嫌悪感を覚えてしまうし、できれば近づきたくないと思ってしまう
まぁ、毛虫も蛾も毒を持っているものもいるし、都会で見かける蜂は苛立っているようで怖い
怖い
そう、実は子供のころから僕は毛虫が苦手だった
青虫はまぁ好きではなかったけれど、毛虫にはどうしようもない嫌悪を感じてしまう
果たしてその原因はなんだろうかと考える
そもそもなぜ毛虫は毛虫なのだろうか
青虫は葉の色に擬態するし、たいがい地中に潜るような幼虫、ちょっと気持ち悪いけれど蛆などは白なのに対して、なんで毛むくじゃらで、しかも葉の裏にひっそりと身を隠すというよりは、大胆に校舎裏の壁や地面を平然と這い回っているのか
人を丸で恐れていないことに憎悪すら感じてしまうのである
いや、実は昆虫全般にそれほど人を恐れてはいない、スズメや鳩、犬猫は人に対するあ警戒心があるが、昆虫は蟻でも蝶々だろがムカデや蜘蛛、そして家の中に住む黒光りするGも、こそこそとはすることはあっても、人間を恐れてはいない
そうだと分かった瞬間、昆虫に対する根拠なき優越感は恐怖に変わるのかもしれない
そんなわけで僕が初期に書いた作品には、その毛虫に対する恐怖を描いた『蟲~小学5年の悪夢』という中編がある
小学5年生の主人公とその仲間は、上級生が文房具店の倉庫に忍び込んで”お宝”を盗み出した噂を聞き、自分たちも倉庫に忍び込む
布製のガムテープを盗み出したものの、それを家に持って帰ることもできないので校舎裏に大量に発生した毛虫の退治にそれを使うのだが・・・
その夜から仲間たちに次々と異変が起き、ついに主人公も・・・
という物語なのですが、この作品を書き上げた後、僕はちょっとした恐怖体験をするのです
僕が住んでいるアパートの周りには椿が建物を囲むように植えてあるのですが、その年、チャドクガの幼虫が大量発生し、家のベランダや玄関に毛虫が押し寄せるということが起きました
これってもしかして、毛虫の大量虐殺なんて書いたからかしらと・・・
世の中には不思議なことがあるものです
そのおかげで僕は、初期に書いたその作品の前後談を書き足して『蟲夢』というタイトルに改訂し、コンテストに応募、見事賞を・・・となれば、よかったのですが、さすがにそこまでは行きませんでした
でも、今年また、その作品を改訂しようと思っているのですが、さて、なにかよからぬことでも、起きたらいいな・・・などと考えない方が身のためかしらね
では、また次回
虚実交えて問わず語り
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