第12話 集団に必要なのは共通の憎まれっ子
集団に必要なのは共通の敵などと申します
また憎まれっ子 世にはばかるとも申します
集団が一致団結するためには、崇高な理想を掲げてそれに賛同させるよりも、排除すべき共通の敵を明確にした方が、効率よく集団をまとめることができます
一方、集団から嫌われながらも、そのような存在が活躍する様を憎まれっ子が幅をきかせることを言うのだが、さて、一見両立しないようなこの二つ
先日このようなことがありました
ふらっと立ち寄ったカラオケ居酒屋……いや、嘘です
月がとっても丸々としていたので、こういう日には何かが起きる
確信めいた予感が僕を突き動かしました
この年齢の予感は当たるものなのです
特に悪い予感は
店の玄関を開けると……ああ、知った顔がいます
ちょっと苦手かな
まぁ、席が離れているからいいか
フィフティーの僕でもここではぺーぺーです
店の人に案内された席は玄関に一番近いところ
僕は常連ではありませんが、常連の知り合いが多いので扱いとしては準常連?
みんなとても良くしてくれます
自分が座った席の隣に”上機嫌なお兄さん”がいい感じで酔いながら時計を気にしています
なるほど、呑み放題の時間がそろそろ終わるのですね
ちょっと面倒くさそうなので、これであがってくれるのなら”案の定”が”思い過ごし”で済むのである
だか、何度も言うようにこの年齢での悪い予感は当たるのです
”めけめけさん! ガラケーなんですね”
そう、僕はついこの前スマフォからガラケーに鞍替えをしたばかり
”僕もほら、ずっとこれなんですよ”
バッテリーのカバーをどこかでなくしたらしく、養生テープでバッテリーを固定しているガラケーを見せられいきなり電話番号の交換が始まります
まぁ、多分、かけることもかかってくることもないでしょう
カラオケ居酒屋なので1曲100円を払いながら(クーポン券がお得w)歌うわけですが、なんでしょうね
100円でもお金を払って歌うとなると、いつもよりも気合が入ります
いえ、本当はいついかなるカラオケでも手を抜いたことはございません
さて、そんな僕なので歌うと目立ちます
うまいとかそういうことではなく、その場にあわせた選曲――場の空気を掴みに言ったときの”置きに行く選曲と歌唱法”には定評がある僕です
そういう僕を知っている店員さんも僕を引き立ててくれます
ありがたいことです
しかしありがたいことが、ありがたい方向にすべて向うかといえば、そうではないこともございます
僕が入ったことでそれまでのまったりした空気が動き出します
それぞれがそれまで”まぁ、いいか”と思っていたことを放置して置けなくなります
いまひとつ乗り気でなかった人がデンモクを手に取り歌を入れ始める
お酒の飲みが進み、会話が弾む
一見していい方向に向かっているようでいて、調子に乗ると楽しくなくなる……自分は楽しいのでしょうが、かまって欲しさに大声を出したり、暴言を吐いたり、やたらと近づいてきたりと素行が悪くなっていく人もいるのです
嗚呼、やってしまったかも
そこに別の店で顔なじみだった客や前に来たときに仲良くなった客がやってくる
動き出したダイナミクスは制御不能の暴君のように小さな居酒屋の中で暴れだす
”めけめけさーん”
典型的な”嫌がられる酔っ払い”に成り下がった”上機嫌なお兄さん”は嫌がるママにちょっかいを出しながら、僕に絡んできます
僕が僕でなかったら、きっとマスターも僕をこの席に座らせなかったでしょう
うん、まぁ、確かにそうなんだ
僕はといえば、大体がそういう役回りになる
これはもはや”悪い予感”などというものではなく、”自明の理”というものだ
しかし嗚呼、この空気、懐かしい
もう店を閉めてしまったあの店のことを思い出す
あそこでは、こんなことが日常茶飯事だった
ということは、これはまだ、まだこれで終わりじゃない
そしてやはり僕の”悪い予感”は当たるのでした
ではまた次回
虚実交えて問わず語り
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます